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マーケティングの仮説があたる人、外れる人の決定的な違い

「なぜあの人のマーケティング施策は、いつも成果が出るんだろう?」

こんなこと、考えたことはないだろうか?同じようにマーケティングのフレームワークを駆使し、過去データを分析し、同じように施策を実行しているのに、ある人は成果を出し、ある人は成果を出せない。

マーケティング支援の現場で多くのケースを見てきて、この疑問についてある気づきを得た。成果を出せる人に共通するのは、特別なスキルでも、独創的な発想でもない。実は、とてもシンプルな「考え方」の違いだったのだ。

1. 市場と顧客を深く理解し、精度の高い仮説を立てる

成果を出す人は、例外なく市場と顧客を深く理解している。そして、その理解があるからこそ、精度の高い仮説を立てることができる。対照的に、そうでない人は表面的な情報だけで仮説を立ててしまう。結果、仮説の精度が悪く、施策を外す。

野球の試合でよくあるケースを考えてみよう。「バントをすれば1点取れるだろう」という仮説を立てたとする。一見、よくある、間違っていなさそうな仮説だ。しかしお察しの通り、この仮説では成果を出せないだろう。

私が考える精度の高い仮説とは、「市場・顧客理解に基づいた具体的な予測」のことだ。

たとえば「今、1塁にランナーがいる。このピッチャーは牽制が苦手で、あのファーストは前進守備が得意ではない。だから、このバッターのこのタイミングでバントをすれば、確実に1点が取れるはずだ」という具体的な仮説を立てられるかどうかが、成果の分かれ目となるだろう。

2. 仮説は必ず検証可能な形で設計する

よくある失敗は、「認知度を上げたら売上が伸びる」「ブランドイメージを向上させたらお問い合わせが増える」といった、検証方法が曖昧なまま仮説を立ててしまうことだ。

成果を出す人の仮説は、必ず以下の要素を含んでいる。そして大概、聞けば即答できる。

  • なぜそうなると考えるのか(因果関係)

  • どのような施策で実現するのか(実現施策)

  • いつまでに検証するのか(検証期間)

  • 成功/失敗の判断基準(判断基準)

たとえばこんな具合で仮説を立てるといいのではないか?

「営業担当者の商品知識が深いほど、既存顧客からの追加発注率が高くなる傾向がある(因果関係)。そのため、月1回の商品勉強会を実施し、営業資料も刷新する(実現施策)。これにより2ヶ月以内に(検証期間)、既存顧客の追加発注率を現状の25%から40%に引き上げられるはずだ(判断基準)」

このように、具体的な理由と検証方法を持った仮説でなければ、そもそも検証のしようがない。仮説を裏付けるには計測できるようにしなければならないし、計測できない仮説なら、それはまだ「仮説」ではないということだ。

実験の結果には2つの可能性がある。もし結果が仮説を裏付けたなら、あなたは何かを計測したことになる。もし結果が仮説の反対であったなら、あなたは何かを発見したことになる。

エンリコ・フェルミ

補足

実際のマーケティングの現場では、測れないものも多い。認知度やブランドイメージは、正確には測れない。けれど認知度と連動して変化する指標は何か?を考えると、測れる指標が見つかるかもしれない。

私は、ある条件でテレビ画面にYouTube広告を出せば、お問い合わせが増えるはずだと思い、クライアントに提案したことがある。

実際にYouTube広告を出してみると、配信開始から程なくして指名検索数が増加し始め、お問い合わせも増えた。反対にYouTube広告を停止してみたら、指名検索数が以前の数値に戻り、お問い合わせ数も減った。

テレビ画面にYouTube広告を出してもCVは取れないため、一見誤った仮説に見えるものの、連動する指標(今回は指名検索数)を見つけることができれば、立派な仮説になる。

3. 仮説が外れても、次の手を打てる

最後に、成果を出す人は精度の高い仮説を立てる。しかし、それでも外れることがある。その時、成果をあげる人には、既に次の手が用意されている。

製造業でよくありそうなケースを考えてみよう。

「この業界は、従来の製品では解決できない課題を抱えており、当社の新製品ならその課題を解決できる(因果関係)。そのため、まず業界上位10社へのアプローチを集中的に行い(実現施策)、2ヶ月以内に(検証期間)、そのうち3社との商談を開始できるはずだ(判断基準)」

しかし、2ヶ月間活動してみると、商談に至ったのは1社のみ。

こんな時あなたは、「では早速、次のプランを考えてみましょうか」と提案していないだろうか?成果を出せる人は違う。彼らは最初の仮説を立てる時点で、既に次の「プランB」、「プランC」を用意している。

たとえば「商社との協業」や「既存顧客からの紹介」など、別の角度からのアプローチを準備しておく。そうすることで、最初の仮説が外れても、素早く方向転換できる。

この違いは、どこから生まれるのか?

良質な仮説を立てられる人は、必ず複数の選択肢を持っている。そして、それぞれの選択肢に対して「なぜそう考えたのか」を明確に説明できる。

成果を出す人が持つのは、データや経験・調査から導き出された明確な根拠だ。そして、「プランA」が外れた時の「プランB」「プランC」まで、常に準備している。

まとめ

  1. 市場と顧客への深い理解に基づく、精度の高い仮説を立てているか?

  2. 仮説は検証可能な形で設計されているか?

  3. 仮説が外れた時の次の手は用意されているか?

非常にシンプルだが、これらを実践している人は思いのほか少ない。マーケティングで成果を出す人とそうでない人の決定的な違いとは、これらたった3つの要素を確実に押さえているかどうかだと、私は思う。

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