【RIZIN】那須川天心vs皇治 感想【ネタバレ注意】
なぜ体重・階級が設定されてるかがわかる試合
※敬称略
1.結果だけ見れば天心の圧勝
3R全ての場面で手数、有効打、前に出る姿勢で天心が圧倒した。皇治が蹴れば蹴り終わりにパンチ 膝で手数をイーブンに。それ以外でも前に出て攻撃を当てる。単純なヒット数で天心は2・3倍上回り、内容は圧倒的であった。
逆を言えば3倍以上攻撃を当てていたのにKOどころかダウンさえとれなかった。
正直この試合バックボーンや事情を知らないと1・2Rは天心が圧倒したけどダウンさえ奪えず 3Rはちょっと天心がバテて皇治がやっと動いたけど天心が踏み込みすぎず逃げ切った。わかりにくいつまんなに試合だったと思う。
ただ、この試合にいたるまでのこととか 裏事情とか知ってると 個人的にとても面白いと思った。 この試合をそういう裏事情とか抜きで考えたら糞試合というのは否定できないけど。
2.皇治はKO負けもダウンも少ないが0ではない
まず前戦の川原戦ではダウンを奪われあわばKO負けというところまで追い込まれた。そして武尊戦では1Rと3Rにダウンを奪われている。また小宮山にもダウンを奪われ、10年近く前に北薗翔大にKO負けも喫している。
これらを考えると天心としてはKOないしダウンをとってほしかった。
というか筆者の予想は30-26or30-25で天心の判定勝利だった
要するに、天心が1回以上はダウンをとって勝つと思ったのだ。皇治が元々階級が上で当日65kgあったらしい(これも予想してた)。
3.皇治サイドの戦略
単純明瞭。1・2Rで削って3Rでダウン以上をとって勝つ。まぁこれはあくまで見ていた側の感じなので、実際は違う可能性も高い。
これはこの戦いに限らないのだが、ある種キックボクシングでのセオリーとなっている。ジャブ ボディ ミドル 前蹴り ローなどで削り、散らし、フックやストレートを当てる。
言葉にするのは簡単だが、相手が攻撃をしてくるわけで、その攻撃を防ぎながら攻撃を散らす・相手を削るというのはなかなか難しい。それこそ顔面やボディに一発強烈なのを当てたい 心の奥底では楽したいというのが人間だ。
那須川天心の真髄はサウスポー 距離感 スピード 攻撃の多彩さ などにある。よってローキックで削ること自体は理に適っている。
問題があるとすれば3Rマッチかつスピードで圧倒的に負けていた点、そして皇治は久々の60kg以外での試合のためコンディション調整が難しかったと思われる。
そして皇治はそもそもフィジカルで戦うタイプではないが、天心のフィジカルが思ったよりあったのも原因かもしれない。
ちなみに同じようなやり方で天心にあと一歩 見方によっては勝っていたというのがロッタンだ。ロッタンはもっと単純にガードをかためてプレッシャーをかけて攻撃を当てていく あわよくばKOをというやり方だったが
事実3Rでの天心は明らかにパフォーマンスが落ちていたが、皇治はそこまで変わってなかった(ペースは落ちてもボッコボコだったけど)。もしこれが4R5Rとなったら天心がKOするのか皇治が盛り返すのか・・・
4.対天心のセオリーとなるか
ロッタンや皇治がやったようにガードを固めたり、天心の攻撃パターンを把握し完全に防ぐのではなくある程度はもらう覚悟で挑むというのはダウンやKO負けを防ぐには有効だと思われる。
あとはテンプレにはない間合いを使いつつスピードで勝るという選択肢もあるが、これは堀口くらいにしかできないだろう。
それこそサウスポー対策は必須。ただのサウスポーではなくサウスポーを得意とするくらいのレベルで。
それでいてスピードと攻撃の多彩さを把握しておく必要がある。
というか、天心側が相手の試合のビデオや実際の試合の序盤で相手の動き方や間合いをすぐに理解しているように見える。
ロッタンはフィジカルと攻撃力でそれを凌駕し 堀口は自分が勝っている部分で先に仕掛け 村越は徹底して削りにいった 皇治は削りつつ3Rに賭けた。
正直な話、天心側がすでにやっているが、勝負ではなく競技としての質を高めないと天心に勝つ トップレベルで勝ち続けるのは難しくなっているのではないだろうか
5.階級
天心には階級を越えたパワーがあるという話を聞くが、たしかに55kgや57kgで試合をしている選手ではKO ダウンは多い。ただ57.5kg以上となるとさすがに厳しい。
今回の試合、普段60kgで戦っている皇治と 普段57.15kg付近で戦っている天心とを比較した場合58.5kgという数字は天心のほうが近い。そして計量の難易度で言えば上から落とす皇治のほうが負担がデカイのは感覚的にわかると思う。
1.5kgがそんなに違うのかというとポカリの1.5Lペットボトルの分違うということになるが、あの分だけ余計に落とすというのがきついのか余裕なのか。筆者の個人的な意見で言えば凄まじくきついと思う。
そして逆に、計量後は当日までに物を食べたり水を飲んだりして、ボロボロの身体を回復させる。そうした場合通常体重にそれなりに近づいていく。皇治の65kgというのは普段60kgの選手としては比較的軽い(ほとんどが70こえるらしい)・・・映像とかで使われているような遊んでるようなのとは真逆に思える。
天心選手も60kg前後が当日体重とのことなので、やはりかなり節制しているようである。
パフォーマンスでいえば天心選手のほうが100%に近いものを発揮していたが、それはそれとしてやはり58.5kgとしてはパワー不足は否めなかった。体質もあるが、日本人の骨格で162-165cmで考えると55kgや53kgのほうが適正なのだろう。
6.今後
天心はボクシング転向を仄めかしてUFC王者とキックボクシングルールで戦うのが理想とのことだがどうなのだろうか
11月に武尊vsレオナ・ペタスが決まっている。仮に武尊がここを突破したとして相手はどうなるのか
大晦日の天心の相手は 江幡睦(昨年天心に負けた江幡塁の双子の兄)が候補にあるが、55kgでのトップ選手なので55kg契約や56kg契約とかならともかく、57kg以上の契約体重でいきなり天心とやってもなぁというのが正直なところ
とはいえ武尊が勝つのが決まってるわけでもないし、勝ったとしてRIZIN参戦は難しいだろう。これは天心サイドにも言える。天心のK-1参戦は正直現実的じゃない。
また、天心vs皇治は半沢の裏でありながら8%台の視聴率があったそうだ。正直3%いかないと思っていたので意外だった。
筆者は現代のMMAはおろかボクシングもあまり興味はなく(MMAはある程度知識を仕入れてはいるけど)、MMA転向ボクシング転向も気が進まない。
RIZINが完全にMMAに舵を切れるかというと、結局のところ数字をもってるのは天心 RENAといった立ち技の選手。
そういったところを考える一手としては大晦日は天心vs皇治を5Rでやるのはどうだろうか。そして5R制で天心がKO勝利すれば何かが動く気がする。または色々あって皇治が勝つならそれはそれで何かある気がする。同じ条件でならロッタンとの再試合も見たいけど タイ人って今日本に来られるんだっけ・・・
7.余談
かつて天心vs武尊が組まれないことと、団体も階級も違うのにこの対戦が浮かび上がった経緯を書いたが
この試合を組まれるメリットがこの試合でおこりうるデメリットを越せないことこの1点にある。
そして普段身を削っている選手やジムにそのことをいくら非難したところで正直なところ邪魔でしかない。サービス残業してる人間に、サービス残業辞めろよ他にも迷惑がかかるだろと言ったところで本人がどうこうするなんてまず難しいようなものだ。
筆者がこうなってほしいという展開はあるが、その展開はどこかしらが犠牲になることになる。
8.余談2 運営さん スポンサーさん お金持ちさんへ
K-1は5月にSウェルター(70kg)級かウェルター(67.5kg)級トーナメント 夏に55 57.5 60 62.5 65の何れか空位になったところのトーナメント(空位がないなら一番古いやつ)。 11月にクルーザー(90kg)級トーナメント 3月に2つ以上のタイトルマッチと夏やったところ以外のトーナメントを毎年開催してほしい。
第何代王者のほかに何年王者 何年トーナメント優勝者 というわかりやすくかつ過酷な称号という対価を用意してほしい。
それがスポンサーや金を集めるために有効なのではないかと思う。今のようによくわからない基準と不特定なタイミングでのトーナメント開催はちょっと勿体無い気がする。
あとはトーナメントだけ参戦というのがこの形式だとしやすいと思う。あれ?今年は参戦しないの?逃げるの?っていう風にアリバイ作れるから勝ち逃げによる価値の低下のリスクも減るし。
今年は誰が勝つんだろう 今年もやってんねぇっていう 文化の定着にどうだろうか。