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ワークショップデザインをする時に意識するトップダウン思考とボトムアップ思考
何らかのアイデアや意見を出す時に、ポストイットを使ったワークショップをやります。
多くの場合は、参加者が思い思いの意見やアイデアをポストイットやカードに記入してテーブルの上の模造紙に貼りつけたり置いていくスタイルで進めます。
ポストイットに意見やアイデアを記入した場合はそれで終了という事はなく、それらをもとに意見やアイデアをグルーピングします。
ところでポストイットを集約させる時に、あなたはどういう思考をしていますか?
トップダウン思考
ポストイットを全体的に眺めて、「だいたいこんな感じの内容に整理できそうだな…」と考えて、例えば「地域おこしに関するアイデアを出そう」というテーマだとすれば「住んでいる人の取り組み」「観光客について」「交通アクセス」「イベント」…などのエリアをつくり、そこにポストイットを移動させながら集めていく。
そんな進め方をする人は「トップダウン思考」をしているといえます。
先の例では、テーマに対してとりあえずは「自由に意見やアイデアを出す」というプロセスがあるので完全なトップダウン思考ではありませんが、大きなテーマに関連する要素項目をあげ、それと関連する意見を整理集約していくという点でトップダウン思考だと思います。
「地域おこし」へ向けて考えるのであれば、それを構成するために必要な項目をあげて、それに関する意見やアイデアを出していくので、参加する人達はガイドが明確で進めやすく感じるようです。
リーダーシップを持った人が、ある程度の方針を決めて進んでいくイメージですね。
もちろん、途中で見直すこともありうるので、柔軟性を持って進めていく事が大切です。
アイデアや意見だけではなく、問題の発生原因を考える時にもトップダウン思考をすることが多いです。いわゆるMECE(もれなくダブりなく)ですね。
「会社の利益が下がっている」原因は何か?→利益は売り上げと経費の差額
売り上げ全体が落ちている→市場規模は? 競合他社の売上げは?…
固定費などの経費が上がっている→社員の残業は? 設備投資の状況は?…
テーマを構成している要素から因数分解してアプローチしていく感じでとらえても良いと思います。
技術者の様に論理的で合理的に考える人は、このトップダウン思考を好む場合が多いようです。
ボトムアップ思考
ポストイットを全体的に眺めて、「このポストイットとあのポストイットは似たような事を言っているのでは?」というふうに、一つ一つの意見やアイデアを丹念に追いつつアメーバの様に集約させていくというのがボトムアップ思考です。
上と同じく例えば「地域おこしに関するアイデアを出そう」というテーマだとすれば「住んでいるお年寄りが楽しそう」と「グランドゴルフ場を○○公園につくる」が似ていると感じで近づけておく。「飛行場から直通でこの街に来れるようにバスを運行する」と「駅の周りに循環バスを通す」は似ていると思ったら近づけておく…というように進めていきます。最終的に、全体を見ながらもっと多くの島を作ることもありますし、どこにも入らないポストイットがあっても良いという、「アイデアに語らしめる」というスタンスです。
アイデアや意見の多様性を尊重し、それらをある方針で集めるのではなく、ポストイット同士が集まるように進めるという点で、すこしまどろっこしいやり方に感じるかもしれません。
川喜田二郎先生が開発した「KJ法」は、このボトムアップ思考でポストイットを集めていきます。時間はかかりますが、多様な意見の中から新しい発見を得るためには大切な姿勢ですね。
実は、問題分析でもボトムアップ思考的に進める場合があります。
最初からMECEで考えるのではなく、「会社の売上げが下がっている原因」として考えられる事を自由に思いつくままに出していく。出したら、それらを眺めながら似ているものを近づけたり、因果関係がありそうなものをつなげたりしていくのです。
自由に考える事は意外と難しいので、ボトムアップ思考での問題分析がやり易いわけではありませんが。
トップダウン思考とボトムアップ思考のどちらが良いのか?
さて、このトップダウン思考とボトムアップ思考、どちらが良いという話ではなく使い分けられるようにしたいものです。
つまり、ある場面ではトップダウイン思考で進めていきますが、途中でボトムアップ思考でのアプローチで視点を変えることができます。
地域おこしへ向けたアイデアワークショップで出されたアイデアがとても多ければ、それを全体的に俯瞰して大きな項目に荒く分類した後、その中でグルーピングしていく方法もあるでしょう。
問題分析であれば、思いつくままに原因を上げて行くのは意外と行き詰るものです。ある程度MECEで考えていきながら、問題発生のメカニズムを明確にした後は、新たな視点での原因を自由に考えてみることも必要だと思います。
ワークショップへの参加者の満足度を高めるために、そのワークショップをトップダウン思考(ホストがコントロールする)でデザインするのか、ボトムアップ思考(参加者の触発を期待して)でデザインするのかという使い方もできそうです。
ご自分の思考はどちらのクセがあるのか知っておくと良いですね。