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ヘドロの創作 2024/9/8

 【猫の喫茶店】

 きょうはマタタビ中央通りにある「十二支入らなくてよかった神社」の秋祭りの日である。
 この神社は、猫が十二支に所属せずに済み、12年に1回の当番をやらないで済んだことを記念する神社である。猫的にはそれはすごくすごくめでたいことだ。
 まあそのかわり猫族は招き猫なるキャラクターにされ、金運だ千客万来だときわめて世俗的なご利益を求められているのだが。

 お祭りでは大きな山車が何台もマタタビ中央通りを進む。笛、鐘、太鼓、三味線(猫世界の三味線は猫の皮をつかっていない)などを賑やかに演奏し、かすりの着物に鈴のついた袴をつけた踊り手たちが扇子をもってひらひら踊る。
 そして町内会の子供みこしも通りを練り歩く。揃いのはっぴの子供たちは楽しそうだ。

 喫茶「灰猫」のマスターは、お祭りで賑わう街を見ながら、きょうはテキ屋さんの屋台が繁盛するのだろうし、ヒマだろうな、と考える。
 オーディオにドビュッシーのピアノ曲のレコードをセットしながら、外から聞こえるお囃子に、どこか懐かしい気分になり、なかなかオーディオを動かす気にならない。

 さて、お祭りも一休みの昼になった。マタタビ中央通りは猫だらけだ。
 山車はそれぞれいったん所属する町内にもどり、みんなでお昼ご飯を食べる時間だ。
 オーディオから「月の光」が流れる喫茶「灰猫」に、はっぴにはちまきの若者が2人入ってきた。どうやら山車の引き手らしい。
 片方は白猫、もう片方はハチワレだ。

「マスター! ナポリタンふたつ!」

「それからミルクセーキもふたつ!」

 マスターは手早くナポリタンとミルクセーキを出す。若い猫2人はうまいうまい、と出てきたものを口に押し込んでいく。

「いやあ祭りはいいね。なんだかんだ今年も帰ってきちまったよ」
 白猫の若者が笑う。

「大学を終わったら帰ってこいよ。マタタビ市、いいとこだぞ?」
 ハチワレの若者がミルクセーキをすする。

「いやあ……あっちの農業試験場に就職するからそれは無理だろうなあ……」
 白猫の若者は、寂しげにそう呟いた。どうやら、マタタビ市から遠く離れたオサカナ市の農業大学に通っているようだった。

 マスターは立ち上がると、オーディオを止めて、窓を開け放った。
 にぎやかな街からの声がたくさん聞こえてくる。少しするとエノコロ小路に留められていた、山車のなかでも歴史のある「エノコロ講」のお囃子が聞こえてきた。

「いっけねもうこんな時間だ。出発しちまう」

「おーやべえやべえ。いそがないと祭りに置いていかれる」

 若者ふたりは大急ぎで会計し、飛び出すように出て行った。
 マスターは、窓から聞こえるお囃子を聴きながら、郷土愛というものを深く深く感じるのだった。(つづく)

「すふぃんくすです」


 ◇◇◇◇
  おまけ

 聡太くんが今年もまた絶叫案件をやらかした。いや絶叫というほど絶叫はしていないのだが、毛虫にタタカイを挑むのはやめてほしい。
 きのう、聡太くんがなにやらしゃかしゃか飛び跳ねる音がして、なんだなんだ、と見にいくと壁の高いところに張り付いたアメリカシロヒトリの毛虫をとろうと飛び跳ねていたのである。
 カミキリムシならまだ捕まえて逃すことができるのだが、どうしても毛虫は捕殺することになってしまう。
 というかどこから家のなかに入ってくるのだろう。謎は深まる。

 それからさっき聡太くんはぷりぷりとUNKOを出したのだが、若干柔らかめだった。暑かっただろうか。
 早く健康なブツをお出ししていただきたい所存である。

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