何歳になっても転職したっていいじゃない?職業選択の自由と多様性
(以下の記事は2021年9月19日に公開したものを、追記・編集したものです) こんにちは。La diversité編集部の榊原すずみです。 当初のプランでは、第2回として創刊のきっかけについて書かせていただく予定でいました。 ところがこの4月で以前勤めていた、ハフポスト(現バズフィード)をやめる決意をして転職活動をするなかで、年齢や今の自分の置かれている労働環境、そして老後なんかについて思いを馳せていたら、職業選択の自由と多様性について考えてみたいと思ったわけです。
というのもここ数ヶ月、転職活動をしていて、書類選考は通っても、面接でことごとく落とされて凹む日々を送っていたのです。 もちろん私自身が面接で与える印象や投げかけられた質問への答えがうまくいっていないというのも落ちてしまう理由の一つなのでしょう。でも、面接に落ちる理由をいろいろと分析してみると、企業側が「働きたい」と思っている人たちが抱えているさまざまな事情を鑑みず、自分たちにとって都合がいい人を採用しているんだなと感じるのです。
日本国憲法22条1項で、職業選択の自由について
と定めています。 自分が従事したい職業を選択する自由のことをいい、職業を決定する自由にとどまらず、その職業を行う自由、つまり「営業の自由」も含まれます。 にもかかわらず。職業を選択する自由はあるけれど、働きたい人が抱えている事情や思いの多様性は認められていない、そんな社会になっているのでは?と感じる機会が増えている気がします。
ということで私が分析した、私自身が面接に落ちる理由3つを実例に挙げて考えてみます。
①年齢
私は40代半ばです。かつて「女性アナウンサー30歳定年説」なんて言葉がありましたが(今は変わってきていますが)、職業に就くことと年齢は大きな関係があります。転職活動も年齢を重ねるほど難しくなるというのはよく言われることです。 でも、年齢を重ねさまざまな経験をしたからこそ、自分の本当にしたいことが見えてきたり、より自分の経験を生かせる場所に移りたいと考えたりする労働者もいるでしょう。いくつになっても新しいチャレンジがしたいんだ!という人も…。これこそ職業選択の自由です。 ところが企業はそういった転職応募者の多様性とは関係なく、若い人材の方を選ぶケースが多いようで。だからこそ、転職活動は年齢を重ねるほど難しくなると言われてしまうのですから。年齢を重ねているからこそ持っている経験や知識は企業にとって役に立つはずなのに。
②転職回数の多さ
私は「超就職氷河期」と言われていた頃に就職活動をしました。どうしてもどうしても就きたい仕事があったのですが、新卒採用を中止する企業も多く、結局、その仕事に就くことができませんでした。でも諦めて、他の仕事をするという選択肢をどうしても選ぶことができませんでしたし、他のどの業界も氷河期で採用が少なかったため、正社員での就職がとても難しい時代でした。同じゼミの中には総合職を諦めて一般職で就職したり、派遣社員として働く道を選ぶ人もいました。
そんな中、私は「就きたい仕事に少しでも関われる会社でアルバイト」というキャリアのスタートを選びました。アルバイトからはじめて、少しずつ、やりたいことにもっと近づける場所、正社員で雇ってくれる場所を求めて、派遣社員、業務委託、契約社員、さまざまな雇用形態で必死に頑張ってキャリアを積み重ねてきました。
でもそれは、見る人によっては「飽きっぽい」「イヤなことがあるとすぐやめる」と思われてしまうこともあります。「超就職氷河期」という自分ではどうにもできなかった時代の流れの中で、努力の証と言ってもいい転職の回数もマイナスになってしまう。それで本当に職業選択の自由が保障されているのいえるのでしょうか。
③お給料
私は面接の最後に大抵、お給料について質問をされます。「今、年棒(もしくは月給)いくらもらっていますか?」と。正直に金額を答えると「同額を払うことはできないし、●万円くらいに下がっても大丈夫ですか?」と言われます。時にはその金額が半額以下なんてこともあって、驚いてしまいます。 誤解しないでください、今、私がもらっているお給料が高額だと自慢しているのではありません。同年代で新卒から正社員で就職した人のもらえるお給料の平均より低いです。企業側は、「この金額で仕事をするのなら採用しますけど」「うちで働きたいならこれくらいのお給料でもいいだろう」と採用活動において企業が強い状態が今の日本にはあります。
高額なお給料を要求しているわけではありません。20年ちょっと積み重ねてきたキャリアを少しでも評価してくれてもいいんじゃないですか?と思うのです。安く働く人材だけを求めていては、日本の経済は停滞するばかり。そして就職氷河期世代の人たちは(安い賃金で働かざるを得ないのは就職氷河期の人だけではないけれど)、正社員になることもままならず、生活するのもやっとな苦境を強いられているのです。
お給料は多様性と関係ないのでは?と思われるかもしれません。でも、安い賃金で働かざるを得ない事情があるのであって、転職活動をしているその人を採用して、同じく安い金額で働かせていいというのとは別問題だと私は考えます。
というのが、私が自分自身が現在進行形でしている転職活動の中で感じてきたことですが、他にもさまざまな状況下で転職活動をしていたり、今勤めている会社に不満を抱えながら働いていると思います。 例えば妊娠、出産で一度退職して社会復帰したいけれどうまくいかない人、もしくは産休、育休明けで会社に戻ったけれど会社や同僚に理解がない人、病気になって一度会社を休む、退職した人、そして派遣やアルバイトの経験しかなく正社員になることができない就職氷河期世代……。
憲法で定められている職業選択の自由が本当に実現されている社会になっているとは私には思えません。職業選択の自由と多様性を関連づけて考えることはあまりないかもしれませんが、もしかしたらこの2つの要素の関係を改めて考えてみることこそ必要なのかもしれません。