小説『人間きょうふ症』21
「…何でですか…」
「出席日数が足りないと留年するからよ。大体60日を超えるとほぼ確定でまた2年生をやらないといけない。でも、佐藤さんは地頭良いし、1年やり直すのはもったいないよ。だから授業には出てほしい。」
「…無理です。」
「理由はクラスメイト?」
少し頭を傾げる私に先生は再び言い始める。
「大丈夫。私がいるんだから。もし何かあれば言って。その時は方法を探すから。これは約束する。」
「先生は本当に助けてくれるんですか…?」
「助けます。私が一回でも助けられなかったことはありますか?」
「…ないですね。勉強に追いつくように課題を出してくれたり、苦手な現代文を教えてくれたり…。」
「でしょ。だから大丈夫。実際に、佐藤さんは自覚していないのかもしれないけれど、思っている以上に強いし、思いやりのある人でもある。あなたが身につけたかった例のスキルも、今はあるから。」
確かに。確かに先生は、学校が始まってから今までずっと救ってくれた。見捨てられることは一切なかった。だから、以前言っていたように、一度は信じても良いのかな…。一度だけでも良いから。
「…先生、明日から授業受けてみます」
「その返事が良かったです。では、明日待っていますからね。」
先生はそう言って、いつもの安心するような笑みで手を振ってくれた。
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