小説『人間きょうふ症』⑦

 一本の電話がうっすらと聞こえた。その音に気がつき、私は布団から起き上がった。いつの間にか寝ていたみたいだ。応答しようとした時、留守電が流れ始めた。
 「佐藤さん。さっきも言った通り、私はあなたの味方です。私の言葉を信じるのは難しいかもしれません。でも、少しは試しに信じてみても良いんじゃないですか?まずは以前、課題を出しにきたような感覚で学校に来てみてませんか。本は当分貸しませんので、ご安心ください。なので、少しだけ話しましょう。私のことが嫌でなければですが。メールでも電話でも良いのでお返事ください。」
 この瞬間、私は電話をでた。
 「もしもし、K先生。」
 「出たのね。」
 「先程は本当にごめんなさい。ついカッとなってしまって。」
 「それくらいのことは想定していたわ。だから続けて話した。学校から出ることは予想外だったけど」
 「先生、私、、変わりたい。皆に嫌われたままは嫌。…好かれたいです。また人の心を元気づけたい…。でも、、周りの視線が怖いです…。学校で授業受けたい。でも、怖い。ここずっと人と関わることがなかったし、多分先生も知ってると思いますが、1年だった頃、空気読めなかったから皆に避けられるようになった。私はその後も学校には行こうと頑張ったんです。一人でいることは嫌いではないんですが、あの空間が耐えられなくて…。」
 泣きながらだったからか、声が掠れた。少しだけ気が晴れたような気がした。
 「よく言えました。えらい。佐藤さんは、優しく努力家だから好かれるようになります。私にはわかります。あなたが頑張っている姿を見ましたから。前に渡したあの課題であなたはほとんどの課題が完璧にできていた。そして現代文だけど、多分苦手なのかな?」
 「あ、はい。でもなんでわかるんですか。」
 「先生っていう職業をやっている人ってね、実際に教室にいなくてその子を見ていなくても、課題やテストの字などをみるとわかるんです。その人がどのような人なのか。あなたの回答用紙には何回も書き消しした跡が残っていた。人は普段、苦手なことをしたがらないのが多い。でもあなたは、苦手な科目に対しても熱心。そこは自信をもっと持つべきよね。」
 「自信…。」
 「まあ、このことは今度学校来るときに話しましょう。来るのいつ頃が良い?」
 「、、んじゃ、明日の朝で。」

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夕渚
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