小説『人間きょうふ症』①

 笑顔が零れきった日々を送るようになった。
 私の今の目的はコンビニに行くことだ。そのため、桜のトンネルで咲き乱れたあの道を久しぶりに歩かなければならない。そこにはランドセルを大変そうに背負う子供たちが花弁を集めながら登校していた。そういえば、今日は始業式か。すっかり忘れていた。私も高校へ行くべきなのだろうが、そんな気力はない。
 コンビニに入って、自分の好きなレモンティーを買った。んじゃ、家帰ってティータイムにしようか。今時蓄音機なんて古いと思うが、音楽をかけ、読書する。なんて清々しいものだろうか。学校という牢屋に縛られないで、リラックスタイムを過ごす。
 このような日常の中で、電話の着信音が部屋の中で響き渡る。かけてきたのは、今年から私のクラスを受け持つ担任の先生だった。
 「もしもし、電話失礼します。そちら、佐藤さんでしょうか?」
 「はい、そうですが。ご用件は何でしょうか。」
 「佐藤さんが今日学校に来なかったので連絡したのですが、大丈夫なのかなって。」
 「えぇ、大丈夫ですが。」
 「ちなみに、来なかった理由とかってありますか?」
 「特にありませんが、お知らせや緊急時以外に電話かけてくるのはやめていただけませんか?やることあるので。」
 「あ、ごめんなさい。でも・・・」
 「すみません。んじゃ切ります。」
 ぷーぷーぷー。担任の先生の話を遮り、電話を切ってしまった。先生はおそらく心配していたのだけれども、私にとってはお節介なことだ。

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夕渚
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