小説『人間きょうふ症』34
先生と離れ離れになって、数ヶ月経った。この期間中、私はアルバイトと勉強を両立して日々を過ごしていた。忙しさに飲み込まれそうになることも少なくはなかった。それでも、勉強は不断にしてきた。全ては高校卒業認定試験のためだった。高校を離れた以上、私にはこれが精一杯であった。
私が使っている分厚いルーズリーフのバインダーの最後のページにこの詩を見つけた。中学生の頃に書いていたものだった。懐かしいと感じながら、何度も繰り返し読んだ。そういえば、小学生だった頃、音楽家を目指していたんだった。愛がなんなのか、何が正義なのか、善い・悪いの区別はどうやって行うのか。それらの疑問を抱えながら私は作曲していた。
「自分自身とか他人の気持ちなんてわからないのによく作詞したいと思うよね」
これが作曲するときの私の口癖だった。音楽はもちろん好きだ。でも、時には歌の気持ちに素直になれなかったことで地獄を感じることもあった。好きだけど嫌い。友達だけど敵。こんな時は他のことをするのが良いのだと自覚し、哲学への道へ歩み始め、今の私に至る、と。
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