小説『人間きょうふ症』14
改めて学校に行き、あのプリントを読破した。以前と同様に先生を呼びに行った。
「きちんと読みましたか?」
「はい。」
「質問してもいい?」
「はい。」
「逆説はどういう時に判断できますか?」
「…例えば…命題がある時、一見あっているように見せかけて、実は、そこには矛盾が起きている時に逆説があるって考えられます。一般的にはこれが正しいとされていますが、実際の意味は違うんじゃないかとか…。≪しかし≫とか≪だが≫といった接続詞が使われるときに判断できます。」
「んじゃ、小論文とかで逆説の接続詞を使うときの注意点は?」
「二重否定になって主張したいことがおかしくならないように気をつけること。使いすぎに注意すべき…とかですかね。」
「ちゃんと理解してるね。他にも質問したいところだけど、ここで終わりにします。それらのプリントは返していただけますか?」
私はスッと手渡した。すると先生は再び話し始める。
「んじゃ、今度は演習問題を渡します。正解率が80%以上だったら、次のステップに進みます。でなければ、改めて精読してもらいます。」
「え…そんなの無理ですって」
「自分に自信ない?」
「それは当たり前です。苦手な科目なんですから」
「さっき、質問に答えたときの自信はどこに消えた?」
私は黙り込んでしまった。
「あなたの今の実力はそんなもんなんだね。ハードルが変わる時だけ気持ちがすぐに変わる。演習問題をきちんと解ける自信がないのなら、また読む?」
「…やります」
「なんて?」
「問題やります。」
「そうでなくっちゃ。んじゃ、今渡します。もし解けなかったら…」
「また読む。」
「ちゃんとわかっていますね。期待していますね。」
強気に見せながら実践問題集を受け取った。家帰って、やり始めよう。先生にはできるって証明しないといけない。じゃないと、前には進めないんだ。