第25話 居場所を増やしていく
以前にカラオケ屋の面接に落ちて以来、アルバイトをすること自体に消極的になっていました。
ありがたいことに親からもある程度の仕送りはもらっていたのですが、大学生として色々な活動をするにはそれ以上にお金が必要です。
お金が足りなくなる度に、引っ越しのアルバイト、工場のアルバイト、物流センターでのアルバイト、そういう単発バイトを入れていたのですが、肉体的にも精神的にも辛いものが多く、あまり自分に合っているとは思えませんでした。
意を決して、もう一度、恒常的に入るようなアルバイト先を探しました。
そして、原付バイクで食事の宅配をするというアルバイトを見つけることができました。週2~3日くらいで仕事をするという条件でしたが、私は暇な大学生だったので、急なシフト要請にも応えることができました。そういうところも、採用につながったのかもしれません。
そのアルバイト先でも、よい先輩や友人に恵まれました。
宅配が終われば近くのお好み焼き屋でビールを飲みながら歓談したので、その日3時間くらい入ったアルバイト代が吹っ飛ぶような有様でした。
金銭的には何のためにやっているか分からないような状態でしたが、サークル以外にも第2の居場所ができたということで、私自身の精神的にはとても良かったと思います。
居場所をつくるということは、当時の私にとって本当に大事なことでした。
一人でいると、とかく悩んでしまいます。
「逆説的自信」を持つという自分なりの目標を持ち、ひどい外見という逆境をものともせずに明るく振る舞う強い自分を演じているのですが、周りの人がいなくなり緊張の糸が途切れると、すぐに悲しみにつつまれ自分の不運を嘆いてしまいます。
脱毛が始まってから1年経っても、2年経っても、その悲しみが消えることはありませんでした。だからこそ、その悲しみにひたる時間をできるだけ少なくし、安心して過ごせる居場所をつくることが大事だったのです。
お金がないという止むにやまれぬ事情で始めたアルバイトではありましたが、新しい居場所を手に入れるという意図せぬ大きなプレゼントにもなったのです。