第5話 効果が全く見えない試行錯誤
病院に通うという手段はあきらめたものの、なんとかして回復させたいという思いは募る一方でした。
薬局に行くと、育毛や発毛をうたった製品が並んでいます。
トニック入りのシャンプーというのは、いかにも効果がありそうでした。
それまでは使ったことがなかったのですが、トニック入りのシャンプーで洗髪すると、頭全体がスーと清涼な感覚に満たされ、その後でジンジンと発熱するような効果を感じます。筋肉痛の時に湿布を貼ったときのような感覚ですね。
感覚的には、いかにも発毛に効果がありそうです。トニック入りのシャンプーに切り替えて、しっかり洗髪するようにしました。
でも、ある日の風呂での風景を、今でも覚えています。
洗えば洗うほど、髪の毛が抜けるのです。洗面器や風呂の床に、抜けた髪の毛が散らばっています。それらをきれいに流して、また髪の毛をすすぐと、さらに髪の毛が抜けてきます。
きりがないのです。その日に抜けた髪の毛だけが落ちてくるのであれば、何度かすすげばもう落ちてこないはずです。でも、洗うという行為自体がきっかけになって、どんどんと髪の毛が抜けていくようでした。
試しに鏡を見ながら一本の髪の毛を引っ張ってみると、あまり痛みも感じずにスッと抜けてしまいました。毛根自体が相当弱っていて、頭髪を頭皮に保つ力がなくなっていました。
いったいどうすればよいのかと、途方に暮れます。
頭皮を清潔に保ち、トニック入りのシャンプーで刺激を与えるのが良いのか。
それとも、洗髪は最小限に抑えて、髪の毛が抜けるということ自体を防いだほうが良いのか。
何の解決策も思い浮かばない中、ただただ不安と悲しみに耐えるしかなかったのです。
シャンプーの他にも、高価な育毛剤等も含めて色々と試してみました。
ワカメを食べればいいと言われるので、毎日たくさんのワカメを食べていました。
でも、何をやっても全く効果なし。日に日に広がっていく虫食い状の脱毛に対して、なす術もなく立ち尽くすしかなかったのです。