第20話 他人が自分の外見を気にしていないことに気付く
前述したとおり、当時の私は他人からの視線をとても恐れていました。
表面的には何もないように接してくれますが、心の裏側では私の見た目を憐れんでいる。だからこそ、そのように冷遇される状況に自分の身を置くことが、非常に辛かったのです。
でも、それは真実ではありませんでした。
みんな、他人の顔に注目し続けるほど暇ではないのです。
もちろん、脱毛していて可哀そうだなということには気づきますが、それだけなのです。それ以上に、憐れんだり、さげすんだり、自分と区別するなんてことはしていないのです。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。こういう言葉があります。
私は、障子の外で揺れ動く大きな影を見つけて、恐ろしい幽霊が迫っていると錯覚していたのです。そして、自縄自縛になって、存在しない幽霊に対してどう戦うかを悩み続け、不安で落ち着かない気持ちになっていたのです。
ぱっと障子を空けてみれば、障子の向こうにあったのは幽霊ではなく、ただの枯れたススキの穂であったことに気付けたはずなのです。
でも、その障子は開かずの扉でした。
他人と接するときに、他人の本当の心の動きを知ることなどできないからです。だからこそ、私は自分勝手に他人の心の奥を想像し、自分のことを憐れんでいるに違いないと決めつけたのです。
幽霊なんていないことにやっと気付けたのは、新しい居場所を見つけてからでした。
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