「コロナ危機」下にある、ベルリン暮らし(6)
2020年5月1〜30日までの、新型コロナウイルス感染拡大防止の規制(緩和・変化)、ドイツ、ベルリンでのコロナ関連のメディア報道や、私が見聞きし、考えたことなどをまとめています。(書いてるのは2021年1月)
コロナ対策も世相も目まぐるしく変化していった2020年。日々のメモが案外貴重だなと思い、当時のTwitterなどを見返しつつまとめています。
…「コロナ禍第二フェーズ」についての考察の記事。4月20日から、新型コロナウイルス感染拡大防止の接触制限の緩和が始まり、コロナ禍は次の段階に入った。賛否両論あるが合理的な論理から感情論に移行し、第三フェーズでは、怒りと逆恨みが、集団での締め出しにつながっていく。311以降に彼が観察した状況と比較しながらの、人々の感情の動きについての考察、興味深く読む。
●5月1日
ドイツの感染者数は合計163397名。これまでの死者は合計6669名。新規感染は1585名。
メーデー。
ドイツ労働組合総連合 DGBは、ブランデンブルク門の前で1.5mの距離を開けてプラカードを持つデモを開催。メインはネット配信。
ベルリンのデモでは、ZDFの風刺番組「Heute-show」の撮影チームが、殴られて4人が病院送りになるという事件が。詳細は2021年1月現時点で未だ不明。
●5月4日
月曜日、学校での授業も再開(といっても学校によっては1週間に1回、グループを分けて交代制などで「通常通り」に戻ったとはとても言い難い)校庭では1,5mの距離を取ること、と。美容室やネイルスタジオなどは再開しているが、顔が近くなるまつ毛のカラーリングや顔剃りなどはまだ不可とのお達し。ベルリンではミュージアムやギャラリーなどが人数制限や除菌、マスク着用義務などをしつつ、様子見しつつ再開。この時点での禁止・許可事項はリンクに:
クラブやオープンエアーのパーティーは暫定8月末までは再開できない。
先週行われたPCR検査の数は、約47万件(陽性は5,4%)。シュパーン保健相はよりテスト数を増やしたいといい、この週は86万以上との報道。
●5月5日
ドイツの感染者数は166167名。死者は7048名。1日の新規感染は738名。
ウイルス学者クリスティアン ・ドロステン教授は、陰謀論支持者などから目の敵にされ、殺人予告まで送られているとのニュースも。
多くのドイツ人にとっては、私は「経済を壊す悪者」なのです。とクリスティアン ・ドロステン教授。Gardianのインタビュー記事。
科学者の情報をベースとした政府の外出制限・接触制限政策があってこそ、亡くなった方も感染者数に対して少なく抑えられた、と思うか、ある程度収束した時点から見て「なんだ大したことなかったじゃないか。外出制限・接触制限なんてやる必要なかった。大げさ言いやがって」と思うか。
2020・21年の冬の状況を見て改めて思い返す。この頃のドロステン教授の話予見は大袈裟ではなく、むしろオプティミスティックだった。(日本の対応に学べってしょっちゅう言ってた…)
●5月8日
ドイツ終戦から75年。「解放の日」でもある。
この日から始まった、ヴァーチャル展覧会のポスター「Willst du, was du wählst?」私たちが選挙で選んだものが、この惨状の理由だー。
おうち時間が増えたからか、イーストが品薄。
ビール飲みつつ酵母を使って発酵させたブレーツェルを焼いてみました。
●5月9日
シュトゥットガルトで「Querdenken」の大規模デモ。参加者5万人登録したが、1万人に減らすようにとお達し。距離とりつつ平和的に終了と。
メルケル政権(新型コロナウイルス感染拡大防止の規制措置)がドイツ基本法に抵触すると反対するデモは、IT企業家のMichael Ballwegが発起人。スポークスマンであるStephan Bergmannは「インドの知恵の会」の創設者であり、コロナ軽視と人種差別的発言(白人至上主義発言)で知られる人物。当初からQuerdenkenは極右、右派ポピュリストとの繋がりが、極右に詳しいジャーナリストや研究者から指摘されている。陰謀論・ホロコースト否定派のKen Jebsenがメインの演説を担当。AfDのStefan Räpple(暴力で政府を倒せと煽ったため現在捜査が行われている)ハノーファー大学の財政研究所所長(学生たちから陰謀論説を広めているとボイコットを受けた)Stefan Homburg教授など。ワクチン反対派なども。話された内容などはStuttgart新聞が詳しかった
労働組合や左派グループは、Querdenkenデモに反対するカウンターデモを企画。このコロナ危機の中で人を煽るのではなく、団結して明確に極右から距離を取るように呼びかけ。
ベルリンでは、アレクサンダープラッツで約1200名で同様のデモ。
先にも書いた、ローザ・ルクセンブルク広場前で3月から行われていた「衛生デモ」や極右系はアレクサンダープラッツ方面に移動し、この場所はどちらかというと反ナチの人たちが多くなってきた印象。
シュトゥットガルト 、ベルリンともに極右(帝国市民Reichsbürgeアイデンティタリアン運動Identitäre Bewegung)また、反コロナ措置を率いる中心人物の一人でもある医師、Bodo Schiffmannが創立したWiderstand 2020 (レジスタンス2020・その後創立メンバーが数名抜けて解散)などの姿が。ベルリンは警察の呼びかけに答えないデモ隊が警察に瓶を投げるなど、逮捕者86名。
この日の状況はハッシュタグ、#b0905 で追える。
集会やデモに関しては徐々に緩和が始まっているが、
ベルリンは5月18日以降が50人未満、
5月25日以降は参加者100人未満で野外の場合は許可。
この規模のデモや集会は許可されておらず、密、マスク着用義務も無視、のデモなのだが「反コロナ措置デモ」は、そもそもマスク着用義務や距離を取るなどの制限自体が基本法違反だとしているので、意に介さず。
●5月14日
ドイツの感染者数は173932名。死者は7863名。1日の新規感染は921名。
メルケル首相の議会での質疑応答。1時間みっちり。ものすごい予習と準備してくるんでしょうけれど、スラスラ答えるので驚く…
9日のデモなどを受け、SNSに蔓延する「インフォデミック」(パンデミックに関する誤情報や誤解を招く情報)に対抗するためベルリンのウイルス学研究所長のドロステン氏ら科学者と医師は世界中の科学者と協力を仰ぐ公開書簡に署名
SNSに広がる「政治的言説」を、ドイツのジャーナリストたちが分析する番組。「Infokrieger:新しい、右派メディアの作り手たち」を見る。非常に興味深い。5Gの電波でコロナが広められている説を広める「ニュース」サイトなども。最後にはウルグアイで100近い「オルタナティブ・メディア」をドイツに流す人物が登場。
●5月16日
このところ毎週土曜日はどこかでデモが行われている。
政府のコロナ措置に反対する人、反ワクチン、陰謀論(「コロナにかかった人なんか周りにいない!」からコロナは存在しないと主張する人たち。反ビル・ゲイツ、アルミ帽子など)人種差別や人々の分断を煽る人たちに反対するデモも、何故か同じ場所でやっているカオス。
基本法の侵害と叫ぶ人たちに「市民の権利に尽力するというなら陰謀説を唱える人や反ユダヤ主義、ネオナチと一緒に何かをするべきでない。そしてパンデミックが大したことないように思わせて、他人を危険に晒すべきではない」というフォルクスビューネ劇場の声明を返したい。マスクは他人への思いやり
●5月19日
ドイツの感染者数は177239名。死者は8130名。1日の新規感染は506名。
許可されていない人数が集まっていると通報があり、22時少し前、高級レストランに警察が踏み込むと、300人近いお客がマスクなしでワイワイ。ここにいたのがドイツ自由民主党FDP党首のリンドナー。マスクなしで白ロシア領事とハグしているところをキャッチされる……
●5月21日
2020年、大きくなった「ベーシックインカム」を求める声。
政府の芸術重視の支援も話題になったドイツ。しかしこの国のアーティストたちが、いま「ベーシックインカム」を求めて立ち上がった理由とは?ドイツでいまアーティストを筆頭に「ベーシックインカム」を求める声が高まっている理由について書く。
知人の、Jobcenter(ドイツのハローワーク)で働く人にも、オフレコで色々話を聞いた。
https://wired.jp/2020/05/21/germany-basic-income/
●5月23日
●5月24日
ドイツの感染者数は179772名。死者は8294名。1日の新規感染は457名。
蚤の市、再開!アルコナ広場をのぞいてきました。
ベルリンでは、5月25日からホテルで観光客受け入れもOKに。
まだ禁止されてることは、2世帯以上で会うこと。
大規模イベント。
スポーツは8名、デモは100人まではOK
公園のBBQも禁止。性的サービスもまだ禁止。
●5月26日
Young Germanyのブログにて、「ベルリンへの道」スタート。なんでベルリンが好きなんだろう?と聞かれた時、漠然と思いだす空気感や街のひとかけらを写真や動画で紹介していきます。第一弾は、長らく暮らした思い出の通り、ミッテ地区のゾフィーエンシュトラーセを歩いて、走って、撮影。
●5月27日
●5月29日
今日から6月7日まで、21の国際映画祭がYoutubeで映画祭のハイライトを上映するWe Are One 開催。
今週末はクロイツベルク・フリードリヒスハイン地区では、飲食店がテラス席を増やせるよう、週末の12〜18時、通りを車両通行止めに。(希望があった場所のみ)ベルリン市内中心部が自動車フリーになる日が近づいてきたかな……?
●5月31日
ドイツの感染者数は182847名。死者は8551名。1日の新規感染は268名。
創業1924年のベルリン、プレンツラウアーベルクにある映画館Coloseumが倒産。
3月からのコロナ感染拡大防止措置を受けての休館で、経営が立ち行かなくなったと。1957〜63年、東独時代はプレミア上映館に。ポップコーン柄の絨毯と美しいネオン看板が魅力的な映画館だった。
コロナ禍にあって仕事ができない音楽家たち。ベルリン・ドイツ交響楽団が「ベルリンは音楽を欲している!」というアクションをスタート。高齢者の施設や福祉施設を中心に楽しんでもらい、音楽の必要性を実感してもらおうというプロジェクトだ。
2021年1月から、2020年の5月を振り返って。初夏のようなベルリンでロックダウンの緩和もあって、毎日のように自転車で街に出た。この頃から、陰謀論者Querdenkenや極右、帝国市民らが中心に食い込むデモがシュトゥットガルトやベルリン でもどんどん勢力を増していた。2020年11月に連邦憲法擁護庁が発表した分析では、Querdenkenという動きの中には、一般市民(ふつうの人々)や昔ながらの(?)極右もいるが、一部にはニュータイプ過激派がいると。
緩和が始まり、感染者数は5月末の時点で18万人以上だが死者は8500名。「なんだ大騒ぎしたわりに大したことなかったじゃないか。外出制限・接触制限なんてやる必要なかったんだ、大げさ言いやがって」と思った人が、この時点で結構いたんだろう。「大したことなくこの波を越えられた」ことこそに心から感謝すべきだったのに。
緩和の夏。巨大な陰謀論デモに出会ってクラクラした話に続きます……
感染者数は、ベルリンのMorgenpost紙のインタラクティブデータを参照しています:Corona-Zahlen
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