オリジナリティという呪縛からの開放
先日、あるイベントに参加した際のこと。
スピーカーがしきりに
「日本の起業家はオリジナリティがないけど
海外の起業家は0→1発想でビジネスを創る人が多い。
日本には、”オリジナリティ”がたらーん!」
という話をしておりました。
まあ、これ自体は、よく耳にするフレーズなんですが
この“オリジナリティ”ってなんなのでしょうね。
個人的には、本当の無から生まれたものって
今の世の中あるのかどうか疑問です。
基本、私たちは何かを貸し借りしながら
アイデアを生み出しているわけで
厳密に言えば、それは“オリジン”ではないわけです。
清水良典さんの著書に「あらゆる小説は模倣である。」
というものがあるのですが
言いきちゃってて良いタイトルだなと思っていました。
小説どころか、人生そのものが、
模倣が混ざり合ってできている気がします。
仕事でもそう。
どんなにぶっ飛んだ企画でも
誰も思いつかないようなコピーでも
必ず元ネタはあります。そうHIPHOPなんです。
僕らもよく、
企業のブランドストーリーをつくる際に
物語や神話の母型・元型(アーキタイプ)を借りて
ストーリーをつくることが多いです。
というか、まったく借りていないことは、ほぼないぐらいです。
有名なもので言えば、
「ヒーロージャーニー」と呼ばれる物語の元型があります。
バリエーションとしては、様々なものがありますが、
大まかには、こんな感じで進んでいく物語のフレームですね。
1. Calling「天命を知る」
2. Commitment「旅出ち」
3. Threshold「葛藤」
4. Guardians「メンターとの出会い」
5. Demon「悪魔との戦い」
6. Transformation「成長」
7. Complete the task「勝利」
8. Return home「故郷への帰還」
このステップでストーリーをつくれば
ある程度のものが作れるというわけなんです。
有名な映画でいえば、スターウォーズシリーズも
このステップで進んでいくと言われています。
桃太郎も、金太郎も、鬼滅の刃もそう!
世界各地の800を超える民族神話の構造分析を行なった
フランス人文化人類学者のレヴィ=ストロースも「神話論理」の中で、
神話の中に共通の構造を発見しています。
私たちは、
人類の叡智を意識的、無意識的に積み重ねて
今を生きているわけで、日常的に模倣しているはずなのです。
「学びは、真似ぶ」ともいいますしね。
もっともらしい言葉だけが一人歩きして
「オリジナリティがなければ、真の創造性とは言えない!」
「オンリーワンを目指そう!」
みたいな雰囲気が蔓延している気がします。
声高にそう叫ぶ人も、
結局は誰かに聞いたことを話してるだけですしねw。
しかも、一番表層的で、ファッション的なパクリと言えるかもw。
なので、
もし「独自のオリジナリィティ」で悩んでいる方がいれば
オンリーワンとかオリジナリティとかに拘らず
どんどん真似て、どんどんパクっていけばいいと思います。
それを積み重ねる中で、模倣の仕方が変わってくるはずです。
そのうち表面的なパクリじゃなく、
元ネタの意味に潜り、元型(アーキタイプ)を借りてこれるようになる。
そして、そしてそこにいろんな血肉や内臓、コンテンツを継ぎ足していく。
すると、いつの間にか、
考え方は一緒だけど、全く違うアウトプットができる。
それに対して、周りの人は
「オリジナリティがあっていい!」
「新しいね!」
「天才!0→1だ!」
とか、賞賛するかもしれませんが、
つくった本人にしか分からない元ネタがあるから、
自分はちょっと照れ臭い。
それで、いいじゃないですかw
そうやって先人から貸し借りしながら
敷居を低く。間口を広く。
創造をしていくのが、あたり前になって欲しいです。