それぞれの3.12 福島を抱きしめに来た
それぞれの3.12 福島を抱きしめに来た
(※再掲載 作成日ー2022年 3月 11日)
一年前と違い関係性が構築できている。
そのためこの日のインタビューは、より核心に近づく。
木田さん一家の故郷、福島県双葉郡への取材から一年の時間が経過した。
それは僕もインタビューを引き受けてくれた木田家の一人娘
こはるちゃんも事前に心の準備をしていたが
ただ、彼女の緊張は十二分に伝わっていた。電話のコール音
直前にチャットでメッセージを交換したのにも関わらず
長い着信音の後、懐かしい声が聞こえた。
近況を交換したのち、”始めさせて下さい”と確認を添える。
++
一年前、2021年 3月11日
「14時46分には海に居たい、そして花束を買って海に届けたい」
と言っていましたが今日はどんなふうに過ごしてたか?その入り口から話を聞く事とした。
『今日は免許更新をしたくて 311 にしたくて 平成23年 震災の年に初めて免許を取ったので今日に合わせて免許更新して。
そうすれば免許に311の数字が入るので。行ってきました。
お昼過ぎ震災特番が始まって。。ふ〜と思いながら見ていました。
11年かぁ。。あの時、このくらいの時間何してたっけ?これしたなぁとか。(夜勤に行く前でお風呂入ろうとしてた)』
東北の言葉。方言が柔らかい。
『11年経ってこんなに環境が変わってるな。
11年前には知らなかった人と住んでいる。(現在こはるちゃんはパートナーと暮らして2年半になる)
回想していた。。お互いに今ぐらいの時間何していた?と。
今年の14時46分は
TVに映る光景をただ見つめていることしか出来なかった。
震災の翌年は311の一週間前から特番が組まれて
けれども五年経ったら数日で、今では当日と翌日程度。みんなすぐに忘れてしまうのかもしれない』
一度言葉を紡ぎ出すと、止まらない。軌道をお互い確認し合う。
感嘆詞も電話ならやり過ごすが、文章にして一人でも多くの人に届けることを目的としていた。だからこそ、その言葉ってどんな感情や意味?と
感嘆詞を言語化する作業をお互いに繰り返した。
少し話せばプロット(事前に準備していた質問のリスト)を確認する。
何度も流れと方向を確認する。
今年(2022年の3月11日)は何かしたかったのか?質問を続けさせてもらう。
『地元に行きたかったんです。
行きたかったんだけど、じゃじゃが(ワンちゃんが)手術して置いていけない。
11年前はじゃじゃが一人だった。そこを考えたんです』
どんな気持ちでしたか?聞いても大丈夫とエクスキューズを送ると意外な言葉を与えてくれた。
『TVを見ていて思ったんです。違和感というか。。
14時46分に黙祷してるけど、津波がきたの今じゃないよな。。
発生時刻が1446 で
津波が来たのは今じゃないよな。なんで黙祷してるんだろう。
その瞬間は生きていたじゃないですか。
津波が来たのが、15時20位だった(県や場所によって違う)が多くの被害者は地震そのものではなく津波によって命を奪われた。
この時間に生きている人に黙祷してどうするんだろう。。。
そんな事に思いを巡らせていました』
もう少し聞かせて下さい。感情について聞かせて下さい。
ここは勇気を持って質問を重ねることにした。
一年前と違い僕たちは友情に似た関係性ができている。
私たちは水戸市から共に二台の車で福島に北上した。
言葉にするには感情が追いつかない三日間を共に過ごした。
立ち返る。質問力=インタビューはジャーナリストに許される行為。
パーソナルに触れる、心のひだに触れる行為。
悲しかったですか?質問を続ける。
『悲しかったっていうか、勝手に涙が出てきた。
何を思ってかはわからないけど。
この瞬間から変わったんだな。と。
茨城にいるなんて。わからなかった。
気持ちがそわそわした。あ、くるくる、TVに時間が映る。14時46分が来る。
落ちつかなかった。悲しかったのかな。。
本当、11年分の涙が出てきた。号泣じゃなくて。
不意に、サイレンがなるシーン。何で海を見て黙祷している人たちを見て
ふわーっと涙が出てきた。
生まれ育った街と違う。去年のように地元にいれば違う。ここ茨城だし。
震災の1ヶ月後に移住したから、11年の時間が経過している』
『今日はすごく夕陽が綺麗だった。夕方じゃじゃと散歩した。
4時半とか5時位だった。
11年前の今日、津波の時は、雪が降っていて。
寂しかった。切ない。夕陽が綺麗だけど、全てを11年前のその日に当てはめた考えていた。じゃじゃに11年前はあんた一人だったね。
今、3人だけど、
じゃじゃは兄が仙台で購入した。仙台は宮城
宮城とか岩手の人に購入されたり飼われていたらどうなってたんだろうね。
今も一緒に入れるのはいいんだけど福島じゃなくて
福島県双葉郡富岡町
なんで茨城の水戸にいるんだろうね。。。
水戸は嫌じゃないよ。
3.11から11年
あの日の感情を思い出せなくなってる』
充電が切れ、11日のインタビューは途切れた。
また13日に話を聞くことを約束して。
それぞれの311 大切にしたいのはあの日からつながる未来だ。
311の翌日から312の人生を皆精一杯いきている。
それぞれの312 書き落とし。