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アウシュビッツ=ビルケナウ絶滅収容所を訪問したい方向けの手引き
2024年11月にアウシュビッツ=ビルケナウ絶滅収容所を訪問しました。似たようなことを考えている方のために、簡単な手引きを残しておこうと思います。つまづきやすいところをポイントで解説していきます。
1. 旅程の組み方
大前提としてアウシュビッツはポーランドにあります。なので基本的にはポーランドに拠点を構える前提とします。まず、アウシュビッツを訪問する場合は前日にクラクフで宿を取っておくことが重要です。アウシュビッツに入場するためには、ツアーや直接入場といった手段を問わず、朝8:00頃にはクラクフに到着する必要があります。
旅行者の多くはワルシャワを拠点にすると思われますが、ワルシャワとクラクフは200キロくらい離れており、最も早い交通手段であるインターシティ鉄道を使っても最低2時間半は移動時間に要します。私はワルシャワで全日ホテルを取ってしまったので、朝5:30の始発に乗ってクラクフに移動しましたが、正直めっちゃキツイのでやめた方が良いと思います。
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個人的な感想としては、ワルシャワの観光は2日もあれば足ります(美術館や博物館、歴史が好きな方はもっと楽しめる)が、クラクフは郊外の観光施設も含めれば3日~4日くらいは余裕で楽しめると思います。
よくツアーサイトに書いてありますが、まさにワルシャワは東京、クラクフは京都、といった雰囲気です。ワルシャワはナチスドイツに侵略された際に市街地を徹底的に破壊されている(戦後市民の手で復旧したらしい…スゴイ…)ので、歴史的建造物もクラクフに比べると少ないです。拠点はぜひクラクフに。
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2. アウシュビッツへの訪問の仕方
アウシュビッツは1日に訪問できる人数を制限しています。そのため、訪問するには必ず事前の予約が必要です。これが中々落とし穴なので気をつけましょう。訪問する予定があるあなたは、今この場で予約した方が良いです。
なお、訪問の仕方には大きく以下の4つの方法があります。
① ツアー会社等を通じて予約して参加する
② 博物館の公式サイトの個人枠で予約して参加する visit for individual
③ 博物館の公式サイトの団体枠で予約して参加する visit for groups
④ 当日博物館の受付を訪ねて当日券枠で参加する
ブログなどを見ていると、主に④の手段でアウシュビッツに個人訪問した方のログが出てきますが、個人的にはお薦めしません。確かに、受付で毎日当日券を少し発行してくれるのは事実ですが、アウシュビッツにも繁忙期があるようで、イスラエルとポーランドの修学旅行シーズンと被ると一切入場できないようです(受付の人に聞きました)。シーズン真っ盛りの京都みたいなもんですね。
そうなると、個人の訪問の場合、手段は①か②になります。しかし、②は非常に狭き門になっています。個人訪問者は、アウシュビッツのスタッフと共に施設を回ることが推奨されており、②の個人枠には入場の時間枠と共にツアーガイドとしてスタッフが割り振られます。ごく少数のみスタッフなしの個人入場枠も発券されるらしいですが、私は確認できませんでした。しかし、ツアーガイドが英語で対応してくれる時間枠が非常に少なく、ほとんどの場合ポーランド語の枠しか余っていません。
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結局、私はクラクフからの送迎とアウシュビッツでのチケットの発行だけやってくれて、後は放っておいてくれる観光会社のツアーに参加しました。観光会社が事前にアウシュビッツの空き枠を抑えていて、余っている分が公式サイトに出ているのでしょう。クラクフからの送迎も快適でした。とにかく、面倒臭い方は現地ツアーを予約することをお薦めします。Get Your Guideでも使っておけば良いでしょう。
以下の、公式サイトから②の個人枠の空き具合が確認できます。
3. アウシュビッツを見切るためのコツ
アウシュビッツは第一収容所と第二収容所(ビルケナウ)に分かれていますが、どちらもとにかく広いです。スニーカーを履いていきましょう。サクサク回らないと、あっという間に日が暮れてしまいます。
ビルケナウは、広大なキャンプがそのまま残っている感じになっています。鉄道が終着するランプと、女性収容キャンプがかなり昔に近い形で残っているので、そこをメインで見て回ると良いと思います。悪名高いガス室は、ナチスドイツが証拠隠滅のために破壊してしまったため残骸だけが残っています。大体3時間もあれば全て回れると思います。
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第一収容所は、全体が博物館として整理されています。亡くなった収容者の遺品を集めた展示棟と、死刑判決を下された収容者が最後に過ごす展示棟が非常にインパクトが強かったです。精神的なダメージが大きいので、かなり気合を入れて向き合った方が良いでしょう。こちらは全ての展示をきちんと見るなら、4時間は必要です。
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私はビルケナウ -> アウシュビッツの順でツアー会社が案内してくれたのでその順番で巡りました。どこもかしこも、子供と学生で溢れかえっていました。戦争犯罪の現場がこんなに身近にあって、歴史教育に組み込まれているのは非常に良いことだと思いました。
あとがき:「ジェノサイド」をめぐって
2024年11月現在、イスラエルによるガザ地区に居住するパレスチナ人への、極めて非人道的な大規模殺戮行為が継続しています。これはもはや、当初攻撃を開始したイスラム主義団体「ハマース」に対する正当な報復行動の領域を大きく逸脱しており、パレスチナ人に対するジェノサイドと呼称して問題ないレベルに達していると私は考えます。イスラエルのネタニヤフ政権は、国内の極右勢力を支持基盤としているため、この戦いをドメスティックな圧力によって止めることは期待できず、趨勢は国際社会による倫理的裁定に大きく依存している状況です。
アメリカをはじめとする西欧諸国の政治経済は、ユダヤ系住民によって支えられています。特にアメリカは、ユダヤ系ロビーの力が絶大であり、親イスラエルの姿勢を絶対に崩すことができません。パレスチナ問題に関して批判的なインテリ層を支持基盤とするアメリカ民主党の大統領候補であったカマラ・ハリスでさえ、ユダヤ系支持団体の圧力に屈し、イスラエルの問題にはお茶を濁して戦い切りました。トランプが大統領選に勝利しましたが、共和党の強固な支持基盤である福音派(エヴァンジェリカル)の多くは、ユダヤ人国家によるパレスチナ国家の設立、すなわちイスラエルによるパレスチナ人の駆逐を聖書の記載と同一視しており、今回の軍事行動に関しても圧倒的にイスラエルを支持しています。ここから先も、アメリカ国内では同様の状況が続くことが予想されます。いうまでもなく、国際連合はこれまでも、そしてこれからもイスラエルによるジェノサイドに対処する機能を全く失っています。
ユダヤ人は、歴史上最悪のジェノサイドの被害を被った民族です。ナチスドイツは、ユダヤ人のヨーロッパからの殲滅を党是に掲げ、実際に百万人を超えるユダヤ人を絶滅収容所に連行し、そのほとんどを殺戮しました。このホロコーストの艱難辛苦を乗り越えて建国されたのがイスラエルです。未曾有のジェノサイドを経験したユダヤ人が建国したイスラエルが、現在パレスチナ人に対して明らかな殺戮行為を働いていることは、私たち人類が信仰や民族といった差異を抱えながら「平和」を維持し生きることの困難さを考えさせられます。
あまり知られていないことですが、ヒトラーはポーランド人という民族も殲滅の対象として考えていました。そのため、ポーランド人の歴史や文化を奪い、歴史ある市街地は徹底的に蹂躙し、容赦なく市民も殺しました。ソ連もまた、三万人のポーランド将校を虐殺するという戦争犯罪を犯していますし、冷戦時代はナチスドイツと同様に文化的略奪を徹底して行い、ポーランド語の国語としての地位を剥奪しています。かの有名な「カティンの森事件」は、国家的悲劇として今もポーランド国民に語り継がれています。国家や民族といった抽象的な共同幻想が、実体的な暴力となって突然無辜の人々の身に襲いかかってくることの恐怖と絶望を、骨の髄まで実感させられます。
ワルシャワには、ナチスドイツやソ連がポーランド人やユダヤ人に対して振るってきた暴力を知るための博物館がたくさんあります。ぜひ、こちらも時間をとって、訪れてみることをお薦めします。