The Songlines を読んでいる
竹沢うるま という写真家が記した旅行記「The Songlines」を読んでいる。
感想文というわけではないが、読んでいる最中に感じたことや心に浮かんできたことをそれとなく書いてみようかと思う。
旅っていいなぁ
率直にそう思えた。
そして竹沢うるまさんの文章のなんとも言えない旅人感、情緒の起伏を緩やかに感じる程度の落ち着いた、読み心地の良い、しっとりさを備えた文才もとても魅力的だ。
彼を知ったのはつい最近のことだ。
TBSのクレイジージャーニーという番組で彼がジャーニーとして登場していた。
僕はこの番組がとても好きで毎週録画して観ている。
彼が登場した回では彼が北極に赴き、その地で採れた食材を使ってカレーを作る旅を取材したものだった。
最近のクレイジージャーニーには少し珍しく、旅の目的自体には大きなインパクトはないものの、星野道夫さんなどを想像させる印象があり、「バックパッカー」という呼び名がとてもふさわしく思えるような人だった。
僕は番組を見ながら「竹沢うるま」とGoogleで検索をした。
すると写真集の他に2冊の旅行記があることを知り、すぐさまAmazonで注文した。
1000日以上もの期間を旅した旅行記ということで色々な国を訪れた際のことが書かれているのだと思っていた。
今現在2/3ほどを読み進めているが、そのほとんどが旅の序盤、南米大陸での出来事についてだ。
特にペルーで経験した出来事について丁寧に書き記されている。
ペルーで彼が経験されたことは個人的にとても興味を唆られる内容だった。
「アヤワスカ」という植物をご存じだろうか?
現代的に言ってしまえば幻覚作用のある少しアブナイ植物である。
実際に日本においても違法である。
DMT(ジメチルトリプタミン)という成分が、麻薬及び向精神薬取締法において規制されているためだ。
ことペルーにおいては神聖で伝統的なシャーマンによる儀式の際に用いられる植物として知られている。
儀式と共にアヤワスカから煮出した液体を飲み、シャーマンの歌声を聴くことで自身の精神世界へトリップすることができるらしい。
その世界では一面が極彩色に彩られていたり、シャーマンの守護霊である生物が見えたり、自分自身の過去のトラウマや後悔、心に引っかかっている何かと対面し、人生を改めるきっかけになったりと様々なことが起きるらしい。
その経験は大変な苦痛を伴うもののようで、彼も同様であった。
ただ彼はそこで目にした世界と対面し、最終的には拒否せず受け入れることでそれまでの人生やこれからの旅をより有意義なものにしている。
この本にはその過程が細かに描写されている。
余談だがハリウッド俳優のウィル・スミスも同様の体験をしたことがあるようだ。
自身の回顧録「WILL」内にてこの体験について書かれている。
誰しも人生における後悔や反省、現在進行形で引っかかっていることはあるのではないだろうか?
頭ではそれらと向き合わないといけないと分かっていながらも最初の一歩を踏み出せない。
僕自身もそうである。
アヤワスカの儀式はそんな背中を押してくれる存在として位置しているのではないかと感じる。
当然、それは手段の一つに過ぎないのでそれ以外の方法もたくさんある。
ただ、現代社会、特に日本とは物理的にも真反対に位置し、生活様式、文化、思想、自然環境などすべてが異なる異国の地で経験することによりさらに意味のあるものになるのではないか、とも感じる。
彼が旅の中で偶然出会ったある詩があるようだ。
彼の文書の魅力のひとつに「感受性」があると思う。
彼は一つの物事を多面的に捉え、なるべく否定せず、受け入れようとしている心持ちがあるように思う。
その成り行きとして文書にもその雰囲気が表れている。
そのため読んでいて気持ちがいいし、旅の奥行きを捉えることができる。
他の人がアヤワスカについて書いた記事を読んだことがある。
ただその内容は 作用のある / なしや幻覚の強さ / 弱さを断片的に捉えていて読んでいて気持ちの良いものではなかった。
この植物の持つある種の危険性を揶揄するような文書だった。
おそらくこの記事をアヤワスカに対する最初の知識として知っていたら、興味は持てていなかっただろう。
文化的背景を無視したドラッグと同じ立ち位置にフォルダリングしていたと思う。
この本の公式HPには以下の一文が記されている。
「みずみずしい感性」まさしくその通りだと思う。
その後彼はアフリカ大陸、ヨーロッパを経てアジアに入り、最後は沖縄に向かい旅を締め括っている。
これらすべての土地で人との出会いがあり、当然だが物語が存在している。
この記事でそれらを語ることはないが、ぜひ少しでも興味を持った方は読んでみて欲しい。
僕が最近出会った本の中では間違いなくベスト1だ。
最後にこの本の要約としてぴったりだと思った一文を紹介して締めとします。