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iPS細胞治療のミライ/現状と課題
こんにちは、そーすけです。
今回はiPS細胞技術は未来の治療薬にどのような影響を与えるかを考えたいと思います。
先日、京都大学の山中伸弥先生のご講演を聴く機会があり、iPS細胞技術が描く未来に大変感銘を受けました。本編はその講演内容の一部をまとめたものです。
私自身、iPS細胞の最新研究について詳しくないので、私の意見は素人の妄想程度に流していただければと思います。
またできるだけ簡単な言葉で説明したいと考えています。正確でない表現があると思いますが何卒ご了承ください。
iPS細胞とは?
iPS細胞は人工的に作られた幹細胞
私が説明するよりも中外製薬さんが作成した下記のページが方が明らかにわかりやすいのでリンクを載せておきます。
2006年に京都大学の山中伸弥先生が世界初のiPS細胞の作製に成功し、2012年にノーベル医薬・生理学賞を受賞しています。
ちなみに研究開発においては、多能性幹細胞(Pluripotent Stem Cells, PSCs)という用語を使用します。iPS細胞の ” i ” はInduced(誘導された)多能性幹細胞という意味です。
当時はiPhoneになぞらえて小文字の " i " にしたそうです。科学の硬質な世界に柔軟な発想がおしゃれですね。
iPS細胞を活用した治療とは
同じく中外製薬さんが作ったページがわかりやすいのでリンクを貼っておきます(中外さんいつもありがとうございます笑)
iPS細胞を活用した治療の代表的なものとして、再生治療(傷ついた組織や臓器を作り変える)が挙げられます。
かの有名な投資家・ウォーレンバフェットは『体は一生取り換えられない車だ』と話したと言われていますが、人の体の器官・組織を車の部品のように気軽に取り換える未来が来るのでしょうか。
次にiPS細胞を活用した病気の原因究明です。現在においても原因が未知の疾患は多くあります。こういった疾患の原因を研究する上でiPS細胞は役に立ちます。様々な条件下で実験を行い疾患の発症原因などの探索的実験を効率よく行えます。
最後に新薬の開発です。前述の研究とセットになると思いますが、疾患の原因究明と同時に、新薬候補物質の有効性まで調べることができます。
今まで別々に行われていた研究が同時に行えるようになり、効率よく研究開発ができるようになるでしょう。
iPS細胞を活用した新薬開発を行う製薬メーカー
国内の製薬企業
このようにiPS細胞技術は将来性のある分野であるため、製薬企業は盛んに研究開発を進めています。現在、PSCsを利用した新薬開発に取り組んでいる主な国内メーカーは下記の通りです。
武田薬品
アステラス製薬(眼科領域・神経領域)
住友ファーマ(神経領域)
第一三共(がん・心血管領域)
協和キリン(神経領域・血液領域)
海外の製薬企業
PSCs技術を利用した新薬開発を行っている海外の製薬企業は以下の通りです。
ノバルティス(遺伝性疾患)
ロシュ(がん領域)
ファイザー(神経領域・心血管領域)
メルク(神経領域)
アストラゼネカ(呼吸器疾患・心血管領域)
グラクソ・スミスクライン(神経疾患・免疫領域)
サノフィ(血液疾患・代謝疾患)
イーライリリー(神経疾患・代謝疾患)
並べてみると猛者揃いですね。日本企業は勝てるのか・・・。
iPS細胞の臨床応用(日本)
日本では下記の疾患に対する臨床応用が進められているようです。
iPSは臨床応用の幅はとても広いです。
海外ではここに挙げた疾患以外でも多くの研究がなされていると思います。あくまでもご参考までに。
・アルツハイマー型認知症
・Pendred症候群
・筋萎縮性側索硬化症
・進行性骨化繊維異形成症(FOP)
・常染色体顕性多発性嚢胞腎
など
iPS細胞の課題
倫理的観点
iPS細胞は画期的な研究である反面、課題もあります。
最たるものとして倫理的問題が挙げられます。
臨床応用する場合にどの程度リスクがあるのか、それを許容できるのか。
また生殖に関する優生思想の危険性、従来Sci-Fi小説のような異なる生物種の誕生といった話も現実的な問題として議論する必要があります。
官民連携力の差による開発力の国際格差
これは特に我が国の問題ですが、現在iPSの研究を行っている企業は上記の通り数えるほどしかありません。それはなぜか?
日本では、大学の画期的なアイデアを企業の実用化に結びつけることが苦手です。リスク(技術的・倫理的)のハードルが高すぎるのです。現在のチャレンジよりもリスク回避先行の日本のマインド・風土によりイノベーションが阻害されていると指摘されています。
山中先生はそれを「死の谷」と講演でお話しされていました。
また、iPSを用いた臨床試験の数(患者数)においても国による格差が開きつつあります。
下記はiPSを用いた①臨床試験の件数②対象患者数 です。
(2024年6月現在)
①臨床試験件数
アメリカ:23件
日本:19件
中国:18件
オーストラリア:5件
ドイツ:1件
イラン:1件
インド:1件
②対象患者数
アメリカ:1792名
オーストラリア:441名
中国:290名
日本:192名
インド:54名
ドイツ:53名
イラン:32名
アメリカは臨床試験件数も対象患者数も圧倒的に多いです。
やはり資本力がものをいう世界なのでしょう。
見逃せないのは、中国とオーストラリアです。アメリカを猛追しています。
これらのことから、日本初のiPS細胞の技術発展は、海外に追い抜かれてしまい、アメリカなどの先行国で開発・製品化される可能性が高いと思います。
この辺り日本は危機感を持った方が良いです(某youtuberミーム)。
まとめ
iPS細胞作製は、今までになかった画期的なアプローチで医療の未来を劇的に変える可能性の高い技術です。
様々な課題はあるものの、私個人としてはぜひ前に進めていただきたいテクノロジーだと考えています。
今まで治療法がなく絶望していた患者さんに、新たな治療選択肢が得られることを期待しています。
また一個人投資家として、このiPS細胞技術を製品化するのはどのメーカーになるのか、国内メーカーは勝てるのか、今後の動きが楽しみです。
では。