私の心配事 / 膨らむ海外、しぼむ日本
こんにちは、そーすけです。
今回は製薬業界に勤める私が心配に感じていることを書きたいと思います。
私が心配していること、それは世界の医薬品が日本で発売されないのではないかということです。
一般に海外に比べて日本で新薬の承認が遅くなることを「ドラッグ・ラグ」と呼びますが、私が危惧しているのはそれではなく、「ドラッグ・ロス」という状況です。
というのも日本と世界で医薬品市場に格差が起きているからです。
ベースとなるデータはIQVIA社が発行しているレポートから引用させていただいています。
医薬品低成長市場の国 日本
実は日本は、アメリカ・中国に次ぐ世界第3位の医薬品市場です。
ただし、今後の年成長率は鈍化していくことが予想されています。
下の図は医薬品市場の過去の実績から2024〜2028年にかけて未来の成長を予測したものです。
(数値)
DDD= Defined Daily Doses(一日投与量)、ドル換算
CAGR(%)=Compound Annual Growth Rate 年平均成長率
こちらをみると処方量が3%以上成長する国は、中国、インド、アジア諸国ということがわかります。一方で日本の処方量の年平均成長率は0.8%に留まります。
普通に考えれば売れそうな国に投資しますよね。このままでは企業の新薬発売の意欲が低下しそうです。
医薬品市場の停滞が招く日本の未来
別のデータもご紹介します。
こちらは各国の医薬品の2024年から2028年までの国別の医薬品の予想成長率をまとめたものです。
簡単にいうと、縦軸が医薬品の単価(金額)、横軸が医薬品の処方量になります。
これを見るとインドやアジア諸国(右上)は単価も上がって処方量も増えそうです。左上のアメリカやヨーロッパ諸国は単価が上がっていく予想です。
中国は単価は上がりませんが処方量は増えそうです(経済停滞と高齢化の影響でしょうか)。
一方日本はほとんど成長が見れません(左下)。医薬品の単価も上がらないし数量も増えません。さらに円安となれば、海外企業は日本で医薬品を売っても儲からないから売るのやめようっと、と判断されかねません。
これが日本の医薬品市場の現実です。
まとめ
今の仕事云々よりも、将来自分が歳をとって薬が必要になった時に本当に手に入るのかという不安があります。
自動車産業なども構造は一緒で、例えば外国では最新モデルと幅広いラインナップが販売され、一方日本はできるだけコストを抑えた安い車種が流通するような状況でしょうか。
抗がん剤、アルツハイマー病の中枢神経系、肥満治療薬をはじめ未来にはまだまだ画期的な薬がたくさん登場すると思われます。
そういった薬を手に入れることができなくなる時代が到来するかもしれません。
漠然と不安になっている今日この頃でした。
では。