プーシキン美術館展 / 旅するフランス風景画
水谷豊さんが音声ガイドを務められるなんて聞かない以外の選択肢はありませんよね。ということで行って参りましたプーシキン美術館展旅するフランス風景画。フランスはひとりでも家族とも友人とも訪れて、残るは未知なる旦那枠のみという(なんたる野心)何度訪れても永遠に憧れの地で、多くの芸術家達が虜になった理由もわかるなんて言ったら上から目線になっちゃうけれど。フランス絵画にフランス音楽、フランスの地で生まれた芸術は洗練されていて美しい。プーシキン美術館はロシアはモスクワに位置し、2018年は「ロシアにおける日本年」及び「日本におけるロシア年」ということで、沢山ロシアに触れたいです。
今回の美術館展、お気に入りの作品が多すぎて忘備録がてらに一つ一つ残していこうと思います。沢山フランス愛を語りましたがフランスの街を題材とした絵画は割愛します。
まずはクロード・ロランの【エウロペの掠奪】中学生の頃から24歳現在に至るまでギリシャ神話が大好きで、特に中高生の時はギリシャ神話を読み漁ったのですが、中でも好きなエピソードがエウロペに一目惚れをしたゼウスは白い雄牛に姿を変え、エウロペに近づき彼女を自分に跨らせ一緒に旅し、その旅した地域が ヨーロッパ - Europe (エウロペ - Eurōpē)と呼ばれているという神話。エウロペと白い雄牛のゼウスを描いた絵画は多くありますが、ロランの描く2人の美しさに惚れてしまいました。絵のタッチと風景がより現実味を感じさせるからでしょうか。本当はこの絵を投稿したかったのですが、本物に近い色味を画像検索することが出来なかったので次に素敵だと思った絵を投稿しました。
その作品がユベール・ロベールの【水に囲まれた神殿】海か湖かに囲まれた廃墟の神殿、なんて美しいのでしょうか.... 南イタリアのパエストゥムにあったポセイドン神殿だそうです。とはいえ実際は地上に建っているそうで、ユベールの美の哲学の奥深さに魅力を感じます。きっと彼は廃れゆく中にある美や不完全の美を理解していたのではないでしょうか。“廃墟のロベール” と呼ばれていただけに様々な廃墟を描いていますが、とりわけこの作品にはロベールの理想の世界観と尊重が感じられました。
続いて、ジャン・バティスト・カミーユ・コロー の【夕暮れ】これは生涯で3度訪れたイタリアと祖国フランスの風景が融合した現実には存在しない記憶の中の原風景。彼は自然を観察しながらもあえて細部を描かず、最初の筆のひとさばきが生み出す美しさをキャンバスに残したそう。その表現が感じた空気や感情をそのまま物語っていて、豊かな感性と生命が彼の絵には宿っているのです。
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あとは、ピエール・オーギュスト・ルノワールの【庭にてムーランドラギャレットの木陰】にモネが登場していたり、クロード・モネ が20代半ばで描いた【草上の昼食】があったり。あ!あとナポレオンの最初の妻ジョゼフィーヌが最初の所有者という、ジャン・バティスト・マルタン の【ナミュール包囲戦】なんて不思議な気分になりましたね、ジョゼフィーヌが見ていた作品を何百年という時を越えて今私が見ているのかと思うと。
最後に水谷豊さんが『新鮮な眼差しで世界を見つめ、心に感動がある限り、あなたの旅が終わることはないのです』というメッセージで幕を閉じてくれています。私が見ている風景が、画家達にはどのように見えていたのだろうかと考えると、到底同じ感性の眼差しでは見えていないことは明らかですが、私は私の思いと感情と考えを持って沢山の風景に出会いたい。そしてその中に、私が戻りたいと思える風景と出会えたら幸いです。もしかしたらもう出会ってるのかもしれないけれど。