フランク・ホーヴァット写真展 / Un moment d'une femme
CHANEL NEXUS HALLで開催されたフランク・ホーヴァット写真展。彼ははイタリアはオパティヤ出身(現クロアチア)の写真家。写真を撮り始めた当初は報道系の写真を撮り、次第に VOGUE や HARPER'S BAZAAR 等、メジャーなファッション誌のカメラマンとして活動されていました。その為かファッション誌のモデルを撮っているはずなのにどこかドキュメント性を感じさせるものがあります。(オパティヤに3日程滞在したことがあるので少し親近感が湧きました)
ホーヴァット氏とシャネルの共通点として両者とも女性の魅力を引き出す才能に長けていること。またシャネルが生涯で接してきた男性からインスピレーションを得ていたように、ホーヴァット氏も数多くの女性に魅了され作品をつくり上げていたということ。そしてつくり出すものは Black & White を基調としており、シンプルで無駄がなく芯をついた作品をつくりあげる点も似通ったものがあると思います。
CHANELの名言に「黒にはすべてがある。白も同じ。その美しさは絶対的なもの。それが完璧なハーモニー」とありますが、ホーヴァット氏ももしかすると同じ概念を持っていたのではないでしょうか。現にホーヴァット氏のパリにあるスタジオは壁から天井、ソファに至るまで全てが黒一色だそう。
この写真展には、ファッション誌の写真や、世界中を旅した時に撮られた写真、また静物画のような自然の写真が公開されていました。特に好きだった作品が『バラの死』
敢えて美しく咲き誇るバラを撮るのではなく、枯れかけて茶色くしおれる状態を撮り、抗うことの出来ない何かへの瞬間を捉えているように感じます。
ホーヴァット氏はファッション誌の撮影にて飾り立てるモデル達に「ウィッグは外して!リップを落として!お願いだから笑わないで!」などファッション誌では考えられないような指示を出していたそうです。既製服にはリアリティから離れた姿よりも、素の姿の必要性を知っていたからです。
そんな真の姿が映し出された空間に、いつも自然体でいられずに装ってばかりいた私は、只々その場に立ちすくむばかりでした。