【R5上下水道部門:上水道及び工業用水道】Ⅲ-1「再現論文」/技術士第二次試験
【1】 問題文
水道事業は我が国の生活基盤を支えるインフラとして重要な役割を果たしており、水道管路の総延長は72万kmに達し、膨大な資産を有している。水道事業の年間電力消費量は74億kWh/年、CO2排出量は422万tCO2/年となっている。
2015年の国連サミットにおいて、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のために、持続可能な開発目標 (SDGs) が2030年を年限とした17項目の国際目標が設定された。SDGsの達成に向けて、政府においてはアクションプランを公表しており、水道事業においても計画的な取組が求められている。
(1)水道事業においてSDGsの達成に向けて、「6. 安全な水とトイレを世界中に」、「7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」の目標に対して、技術者としての立場で多面的な観点で、2つ以上の目標から3つの重要な課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
【2】 再現論文(from 受講生)
※ 受講生さんの了解を得て、ここに掲載します。
標題の再現論文を以下に示しますので、みなさんもご一読いただき、改善点があればご指摘いただけませんか?
(noteの表示上、項目名を下線で表示できないので、太字で表示させます)
(1)水道事業のSDGs達成に向けた課題と観点を述べる。
課題としては、①水質管理体制の強化、②再生可能エネルギーの導入、③人材育成が挙げられる。各課題の内容を以下に示す。
①は水道水の安全性を確保するために、水質管理体制を充実させる必要がある。この課題の観点はSDGsの目標「6. 安全な水とトイレを世界中に」にあたる。
②はエネルギーの使用による環境負荷を低減するために、再生可能エネルギーの導入を検討する必要がある。この課題の観点はSDGsの目標「7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに」にあたる。
③は水道事業を担う人材の育成に取り組むことで、将来の水道事業を担う人材を確保する必要がある。この課題の観点はSDGsの目標「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」にあたる。
(2)水道事業のSDGs達成に向けて最も重要と考える課題は、水質管理体制の強化である。なぜなら、水道事業において水質管理は非常に重要な課題であり、水道水の安全性を確保するために必要不可欠なものだからである。水質管理体制の強化への解決策は、①水質検査の強化、②水質管理システムの導入、③水道施設の更新が考えられる。各解決策の内容を以下に示す。
①は水質検査の頻度を増やし、より厳格な基準に基づいた検査を行うことで、水道水の品質を確保する。
②は水質管理システムを導入することで、水道水の品質をリアルタイムで監視し、異常があった場合には早期に対応することができる。
③は古い水道施設を更新することで、水道水の品質を確保する。
(3)前問で示した解決策を実行しても、新たに生じうるリスクがある。それは、水質検査の強化によって検査の頻度が増え、検査コストが増大する可能性があることである。また、水質管理システムの導入によって、情報漏洩のリスクが高まる可能性がある。これらのリスクの対策として、①水質検査の自動化、②情報セキュリティの強化、③施設の耐震化が挙げられる。これらのリスク対策の内容を以下に示す。
①は水質検査を自動化することで、検査コストを削減することができる。
②は情報漏洩のリスクを低減するために、情報セキュリティの強化を図ることが必要です。
③は水道施設の耐震化を行うことで、地震などの災害に対するリスクを低減することができる。
以上
【3】 評価事項(by 小泉)
この再現論文の受講生さんの試験結果はC評価でした。
私もC評価と考えます。その根拠を以下に示します。
▼ 設問(1)
・観点をSDGsの目標としているが、これでは当目標を引用したに過ぎない。したがって、観点を再考し、さらに深堀りして抽出すべきである。
・課題を①~③と3項目挙げ、後述の設問(2)の最重要課題を課題①としているが、これを3番目に書くと設問(2)が読みやすくなる。
・答案用紙に本再現論文をあてはめると、本設問の解答が1枚目の約6割程度であり、解答量の不足を感じる。
▼ 設問(2)
・解答内容はおおむね良いと考えるが、本設問の解答字数が2枚目の6行目にとどまっており、設問(1)の解答と同様に、もっと解答量を増やすようにしたほうがよい。
▼ 設問(3)
・設問(2)の解決策で挙げた「③水道施設の更新」に付随するリスクがあるとよい。
▼ 全体的なこと
・各設問の解答を文章で書き出しているが、ここは見出しタイトルを表示したほうが見栄えが良くなり、読み手にとって何を解答しようとしているのか理解しやすくなる。(見出しタイトルは目次のような効果がある)
・設問(1)の課題、設問(2)の解決策、設問(3)のリスクおよびリスク対策を、見出しタイトルのように表示したほうが読みやすくなる。
各設問の解答で、「①は・・・」などと表現しているが、この①は何かと探さないといけないため読みにくい。
・再現論文を答案用紙に当てはめたところ、2枚目までに留まった。各解答に説明不足があるが、前述したように見出しタイトルをつける内容を理解しやすくなる上に、文章ばかりの答案用紙に空白部が生まれ読みやすくなり、さらに行数が増え答案用紙が3枚目まで埋められるようになる。(注意:行数稼ぎが主目的ではない。)
以上