嬉しい「十倍返しだ!」
先日北アルプスの爺ケ岳に一緒に登り、一晩美麻に泊めて下さった塚口さんから月餅が届きました。
私が山に持参した月餅のお返し、とのことですが、下山後は美味しい料理をご馳走になり、快適な空間に泊めていただいたお礼をすべきなのはこちらの方で、私が山でお裾分けしたのは元町の中華街で買った月餅を二人で分けっこして召し上がっていただいた丸い月餅の半分だけ。
それに対して届いたのは立派な箱に入った台湾の高級月餅4つ!
もうこれは「倍返しだ!」どころではなく「十倍返しだ!」
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大学の先輩・古賀さんとのご縁で先日初めて塚口さんと長野大町市の扇沢駅でお会いした際、まず驚かされたのが標高2500mを越える北アルプスの山を登る格好とは思えない軽装(ペットボトル1本とアウター1枚を風呂敷に包んで腰に巻いただけ)と地下足袋というスタイル。
急登やガレ場・ザレ場(大小様々な形の石に覆われた山道)も軽快に歩く塚口さん。すれ違うハイカーのほとんどが二度見し、驚きを隠せぬ表情で過ぎ去って行く竹笠を被った塚口さんの後ろ姿を眺めていました。
尖った石は足裏がさぞ痛かったと思いますが、声高に悲鳴を発することもなく、足袋の縫製個所が徐々に破けていっても黙々と登る姿はジェントルマンであり、木イチゴがあればバクバク食べる姿はワイルドそのもの。
そんなジェントル&ワイルドな塚口さんから届いたのは高級月餅の他に、ご自身の著書が二冊。
75日間を野宿主体で日本列島縦断や百名山を原付移動で100日一筆書き等、様々なアドベンチャー経験を積んだ数年後、ヨーロッパも野宿主体のスタイルで90日掛けてポルトガル、スペイン、フランス、スイスを歩かれた旅日記をまとめられた『90日間ヨーロッパ 歩き旅』。
そしてもう一冊は、地元兵庫の魅力的な喫茶店・カフェ50店を神戸・阪神・丹波・但馬・播磨淡路のエリアごとに紹介した『兵庫カフェ散歩』。
こちらの一冊には、なんと古賀先輩のお父様が開かれ、現在はお母様が店主をされている甲子園の喫茶店・ガーデンカフェブラジルも掲載されていました(青い付箋が古賀先輩)。
趣向の異なる二冊は、どちらも美しい写真がふんだんに掲載されていて、その場の空気感が伝わってくる文章が面白く、歩き旅に出掛けてこんなカフェにふらっと立ち寄ってコーヒーが飲みたい、そんな気にさせてくれる逸冊。
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高級月餅と二冊の著書への驚きと感謝の思いと同量、またはそれ以上に驚きや感心させられたのは、大いに自慢したくなるような経験をされたにもかかわらず、それらの偉業や自分の輝かしい経歴などは一切語らず、ただ黙々と山を登り、休憩時は気さくに話してくださり、水が減ってしまったペットボトルに雨水を入れて飲もうとしていたお茶目な姿。偉いことを成し遂げた人ほど寡黙で、どんな環境下でも柔軟に対応し、泰然とされているのだなぁと感じました。
そして、そんな塚口さんを紹介してくださった古賀先輩はというと・・・、塚口さんに負けず劣らず多くを語らずダンディ、なのは後輩間では周知のことですが、今回の旅でも、さり気無い心遣いや控え目に振る舞われる美徳を随所で見ることができました。
北アルプス行きを計画をしていると、古賀先輩から「8月末に信州の美麻に行くけど曽君も行かない?」とお誘いをいただきました。
その後はお互いの信州滞在日程を大まかに理解しただけ。
「信州行きの夜行バス、予約しました。
さわやか信州号で信濃大町5:38着⇒扇沢駅6:18着です。
扇沢駅に6時30分集合、でもよろしいですか?」
と私が出立数日前にメッセージを送ると、
「わかりました、では当日よろしくお願いします。
また何かあればご連絡ください。」
とシンプルな返事だけ。
一緒に登るスゴい方(塚口さん)や泊めていただく美麻珈琲について、詳細はなにも聞かされぬまま、当日は知らぬが仏とばかり能天気にあれよあれよと爺ケ岳に登り、下山後は秘境の葛温泉♨へ連れて行ってもらい、到着した美麻地区(以前は美麻村、2018年に大町市に合併)の美麻珈琲は絵本に出てくるようなかわいい建物で、ゲストハウスからは広大な蕎麦畑が見渡せ・・・・、と驚きの世界や風景がこれまた淡々と、自然に流れて行くことにふとした瞬間「いや待て待て、これはなんとも贅沢で非日常なことなんだぞ!」と幾度となく驚き直しては感動を味わった貴重な時間。
古賀先輩は「ここ、いいでしょ」と言っただけで、広いリビングに掃除機を掛けたり、お友達の荷物を運んだり、後輩の汗臭い服の洗濯(現役時なら丸坊主にされるような粗相の数々)まで、本来後輩の私がすべきことを黙々と。
う~ん、なんと器の大きい方々なんだぁをシミジミ(と同時に、なんとダメな後輩なんだぁも改めて)感じ、一緒に登らせてもらえた爺ケ岳が特別な山となり、古賀先輩、塚口さんのご家族ご友人と過ごした時間が掛け替えのないものになりました。
この場をお借りして厚くお礼申し上げます。
頂いた月餅は早速ひとついただき、残りは今日午後にショートステイの施設から帰宅する母と一緒有難くいただきたいと思います。
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最後までお読みいただきありがとうございました。