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この世に無駄な告知なんてない
靴磨き世界一周アジア編 4日目
オーストラリアでは66足磨くまでは出国しない
という自分ルールを作ったので、観光は後にして
今夜から路上靴磨きをすることにした。
私が路上靴磨きする時に求める物件の条件は、
1.人が混雑しすぎない場所
2.他にバスキングしてる人がいる場所〔警察に注意されにくい〕
3.映える所
特に3つ目の「映える所」は私にとって重要で、
いくらたくさん靴磨きできる場所を見つけても、
「映えなきゃ意味ないじゃん」という謎のこだわり
を持っている。
シドニー で3つの希望条件を満たした物件
を私は見つけてしまった。
「Sydney Town Hall」という場所の前。
歩道も広く、ベンチもある、そしてSydney Town Hall
の映え方がえぐい。
私はオーストラリアに入国後初の路上靴磨きを試みた。
やっぱり初めて路上靴磨きする場所は緊張する。
オーストラリアで靴磨きは通用するのか。
変な人に絡まれないか。
警察に怒られないか。
やらない理由はいくらでも思いつくが、
この時代にオーストラリアまできて、
やらないわけにはいかない。
「今日はSydney town hallの前で路上靴磨き
しています。
時間あれば来てください」とインスタのストーリー
で告知をした。
この告知だれにしてんねん!
日本にいる人がシドニー に来れるはずないん
だから、世界で最も無意味な告知だ。
罠を仕掛けて獲物を待つスタイル。
日本で作った看板を広げて、自分の靴を磨き
ながら通りがかる人に餌を撒く。
何人かは興味を持ってチラチラ見てくる。
そして開始から1時間ほど経った頃、
「この靴磨ける?」と聞いてきたのは
見た目は中国系のビジネスマン。
「はい、もちろん磨けまっせ」と私は英語で答える。
中国系ビジネスマン
「何分くらいかかんねん?」
総将
「5〜10分あればいけるで」
中国系ビジネスマン
「ほな頼むは。あ、なんぼくらいでいける?」
総将
「ウチお気持ち代システムでやってまんねん」
中国系ビジネスマン
「オッケー、あっやべ!俺現金持ってへんは。
すまん、また来るは」
と言って立ち去っていった。
別に無料でもええんやけどなぁと思いながら、
興味を持ってくへる人はいると確認できた。
その後やり続けるが、靴磨きをお願いして
来る人は現れない。
"一足磨くまでは絶対に帰らない"
そう強く誓っていた。
開始から2時間以上経っても一足も磨くこと
ができず、今日はずっとここにいるのかと思った。
「どんな感じっすか?」と後ろから日本語
で声をかけられた。
そこにいたのはインスタで繋がっていたシュウさん。
大学の後輩の友達がオーストラリアに行くならと
繋げてくれており、実は次の日ランチ行く約束して
いたが、私が路上靴磨きするのをインスタの告知を
見てわざわざ来てくれたのだ。
こ、この世に無駄な告知なんてない!!
オーストラリア記念すべき一足目の靴は
シュウさんだった。
シュウさんは現在オーストラリアにワーホリで
来ており、お金を貯めている。
貯めたお金ばシュウさんの長年の夢だった
世界一周の費用に充てるそうだ。
写真が撮るのが好きで、世界中の建物を撮りたい。
そんなシュウさんが私の靴を磨いてる所を
撮ってくれた。
その写真を見て分かった。
私は今日シュウさんに写真を撮ってもらう
ためにこの「Sydney town hall」の前で靴磨きを
したんだと。
写真は日常の、いや、"人生の一瞬"を切り取る。
撮る人によってどの角度から撮るのか、
物体と人をどのバランスで撮るのか、同じ
場所で撮影しても全く違う写真になる。
シュウさんが撮ってくれた写真を見ると、
私は今日のことを思い出すだろう。
Sydney town hallを見て心が動いたこと。
通りがかる人が私に視線を送ったこと。
路上ミュージシャンの奏でるギターの音。
心地良い風の肌触り。
2年間時計の針が止まっていた世界一周靴磨きの旅
がようやく動き出した日の一瞬をシュウさんは切り
取ってプレゼントしてくれた。
写真家って改めて素敵な仕事だと思った。
これから世界中の物語の一瞬を、シュウさんの
目から見たレンズで切り取られた写真を見ること
が楽しみだ。
素敵な物語を切り取ってもらえるよう
魂込めて磨かせていただきました。
止まっていた時計の針はようやく動き出した。
オーストラリアで一足目。
世界一周靴磨きの旅 35足目
〔過去34足は台湾にて〕
オーストラリアの靴磨き目標まで残り65足。
しばらくSydney town hallの前で
路上靴磨きに励みます。
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