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「多分俺、テロリストやと思われてる」

靴磨き世界一周ヨーロッパ編205日目

朝、窓から入ってきた日差しで目が覚める。


目を開けると、私はフカフカのキングベッド
で眠っていた。


そうか、昨日からとんでもないホテルに
泊まらせてもらってるんだった。


シャワーを浴びて、身支度をして、
耳がキーンてなるほど高い位置にある部屋から
エレベーターで一階に降りる。


ホテルの出入り口の前にはドアマンがいて、
私の存在に気づいて扉を開けてくれた。


そして扉の前にはベンツが待機しており、
運転手さんが迎えに来てくれた。


「あの外国人は何の仕事で来てるんだ!?」


とドアマンは思っているかもしれない。


まさか靴磨き職人だとは100回答えるチャンス
を与えても出てこないだろう。


そう、これからインドの大物政治家の
家に靴磨きをしに行くのだ。


屋敷に到着すると、前日に下見で来た時同様
身分確認、荷物検査、身体検査をしてから
家の中に通される。


絶対に写真はNGだと釘を刺されていた。


今日はこれまで靴磨きをしてきた中で
1番緊張した。


過去にテレビカメラが回ってる時に靴磨き
した時も緊張したし、ロンドンで師匠のジョンさん
の靴磨きをした時も緊張した。


過去に靴磨きがうまくいかず、ブチ切れられた
方の靴を2年ぶりにお会いして磨いた時もかなり
緊張した。


ただ、今回は桁違いに緊張したよ。


私が靴磨きしていた間、ずっと拳銃を持った
警察官が2人体制で私を監視していたのだ!


多分俺、テロリストの可能性ありと思われてる!!


相手はインドの大臣の家族が部屋の中にいたので、
万が一のことがあってはならないからだろう。


インドもテロの多い国ではあるから。
〔ホテルムンバイという映画で衝撃を得た〕


大臣の息子さんはかなりの靴好きで、
高級な靴を見知らぬ外国人に手入れされる
ので前日に下見に行った時からかなり私の
技術を疑っていた。


「この革はどうやって磨くんだ?」

とか

「どのクリームを使うんだ?」

とか

手入れの方法までかなり質問をされた。


靴磨きが始まった時は彼も警察官同様
見張るように私の靴磨きを見ていたが、
最初の3足ほど磨いた後に満足して、
そこからはいろいろ話してくれた。


どうやら息子さんも政治家だそうで、
親の七光りとしては大変な立場にあるらしい。


息子さんは途中から仕事に出かけ、
部屋の中に政治家家族がいなくなった
ので警察の監視も少し緩くなった。


本当に、最初はどうなることかと思ったよ。笑


なんとか20足磨き終わり、遅めのランチを
ご馳走になった。


今日も高級のホテルに泊まらせてもらうので、
戻ったらプールとサウナに入ってリラックスしよう。



今日はいろんな意味で疲れたよ。



お手伝いさんにお別れの挨拶をして屋敷を
出ようとしたら、大臣の息子がお手伝いさんに
仕事先から電話をかけてきた。


「実はもう一つの靴箱に、15足ほど古い靴が
あるんだ。

明日の夕方の便でムンバイに帰るって言ってたよな?

また明日の朝靴磨きに来てくれないか?


明日は俺も朝少し時間に余裕があるから、
靴磨きをもっと見たいんだ。」


ありがたいオファーだ。


最初は私の技術を疑っていたが、
どうやら喜んでいただけたようだ。


ただ、あんたがいたら監視の目がキツいから
どっか行っててくれ!!


と心の中では思っているが、
そんなこと言えるはずもない。


「はい、喜んで!!」


と承ることにした。


明日もあの緊張感の中で靴磨きすんのかよ〜


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