
旅人が全財産使ってリッツカールトンに泊まってみた。
靴磨き日本一周70日目in京都
1泊85,000円。
前室スイートルームと言われているリッツカールトン京都。
私はその世界一のホテルの真前にいた。
京都の歴史ある街並みに隠れ家のように聳え立つホテル。
「隠れ家のように聳え立つ」
矛盾した表現に見えるが、私が振り返ってあの建物を思い出す時、存在感はあるものの、「ここがリッツカールトン京都」だと知らなければ何も感じずに素通りするだろう。
私は緊張しながら「リッツカールトン京都」の門をくぐった。
門の先は駐車場があり、高級車が既に3台止められていた。
その奥にコンシェルジュが3人立っている。
彼らは私の姿を確認してから急にソワソワし出した。
1人はインカムで慌てるように何かを伝え、
1人は何かメモ帳のような物を確認し、
1人はオドオドしてる2人を手で制し「俺が対応する」という意思を現してるように見えた。
彼らがなぜ急にソワソワし出したのか。
言うまでもなく、私が"ママチャリ"で世界一のホテルに入ってきたからであろう。
コンシェルジュ達は直ちに"イレギュラー対応"の体制を取ったのである。
リーダー顔のコンシェルジュが私に向かって歩いてきた。
なんて言葉掛けをされるのだろうか。
時間は午後15時。
この時間に門をくぐる人はだいたいがチェックイン客だろうから、「お名前お聞きしてもよろしいですか?」などの身分確認から始まると予想した。
そのコンシェルジュは開口一番に言った。
「何ようでございますか?」
鋭い言い回しだ。
この言葉を私なりに丁寧に解読しよう。
「おんどれここがどこか分かっとんか?
トイレやったらコンビニで借りぃ!!」
という表現だろう。
私はその質問に対して一言で返した。
「さはらです」
その名前を聞いた瞬間、コンシェルジュの顔が変わった。
『たしか、今日の名簿に「さはら」という予約が入ってたぞ。』という表情だ。
少し間が空いて、こう言った。
「お待ちしておりました!」
待ってないやろ!!
というツッコミは心の中に治め、なんとかホテルの中に入ることができた。
ホテルに入った瞬間、内観の美しさに視界がぼやける。
薄暗い空間に金色の光やカーテンが差し込む。
森の中で1人瞑想をしてるようなBGM。
これが世界一のホテルの内観か。

部屋に案内された。
中に入ると時空が変わったかのような光景が見える。
ラグジュアリーなベッドとソファー。
奥には鴨川が綺麗に見える部屋。
さすがは85,000円。
部屋の説明やチェックアウトの確認などを終えた後、案内をしてくれた女将さんが言った。
「ではデポジットをお願いします。」
で、で、デポジット!!
高級ホテルでは事前にデポジットを払わないといけないようだ。
「どのようにすればいいですか?」
『だいたいのお客様はクレジットカードをお預けになられます。』
「すみません、私今は現金しか持ってないです。」
『では現金でしたら10万円ほど』
じゅ、じゅ、10万円!
そんな大金あるかな。
私は鞄の中身のあらゆる所を探した。
ヤバいぞ、ないかもしらん。
「とにかく探せ!!鞄の底にあるはずだ!」
心の中のダサいロジャーが語りかけてくる。
そして私はリッツカールトン史上初の言葉を発する。
「すみません、デポジット、細かくなってもいいですか?」
女将さんは私の真剣な眼差しに察し、笑顔で「大丈夫です」と答えた。
お札と鞄の底に眠っていた小銭をかき集めて、なんとか10万円のデポジットを払うことができた。
まだようやくチェックインしただけ。
まだまだドラマは待っていた。
リッツカールトン編、続く。

↑最新情報はこちらから