
泊まってくかい?←知らない人
所持金7,000円で未開の地、佐賀長崎に行くことになった。
人に会う予定もなかったので、とりあえず伊万里市を目指してオールジャクソン号を走らせていた。
本当に知り合いが一人もいない。
佐賀と長崎に何があるってんだよ!と思いながらただ綺麗な海を横目に走っていた。
途中「櫻井神社」という縁結びで有名な神社があることを知ったので、今後良いご縁に結ばれるよう参拝することにした。
見るからに歴史ある建物で、いくつもの時を超えた
"磨き"がかかっていることは見た瞬間に感じ取れた。
私が神社の中に入った時は、誰もおらず、風で木々が揺れてる音、鳥の鳴き声、自分の足音だけか境内を響かせていた。
参拝をすませ、再び伊万里市を目指しオールジャクソン号を走らせた。
伊万里市までまだ40キロ近くある。
今日は到着するまでに日が落ちるだろうなと思っていた。
Googleナビ先生は、伊万里市への最短ルートを山道の中を指している。
「くそ、山越えか。でも仕方がない。これから何度も山を越えていくんだ。行くしかねぇ」
いきなり坂道が出迎えていたので、汗を垂らしながら自転車を押していた。
すると前から軽トラックが下ってきた。
「車がすぎるまで止まるか。」
私は道の端っこに自転車を避け、車が通れるようにした。
その軽トラが私の横を通りすぎるのかと思いきや、急に止まった。
窓を開けて、話しかけてきた。
「お兄さん、何してるの?」
『伊万里市へ向かってます』
「え、そのチャリで!?」
『はい、今靴磨きしながら日本一周してます』
「え、そのチャリで!?」
『はい』
「この靴も磨ける?」
『クロックスはちょっと厳しいです。』
水で拭くくらいはできるが、正直日が暮れる前に少しでも伊万里の方へ向かいたかったので、やんわり断った。
「そうか。でも伊万里市へいくならこの山やりも海沿いを進んだ方がいいよ。本当にこれずっと山道だから」
『そうっすか。』
正直、何度も山を越えてきたし、この先も山はあるので別にいいんだけどなぁと思っていた。
でもせっかく親切に地元の人が教えてくれてるんだし、このおじさんの言う通り、一度降って海沿いを走ることにした。
しばらく海沿いを走っていると、目の前からさっきの車が来て、私の横でストップした。
「あのさ、良かったら家に泊まらない?」
いやぁ、どうだ、これは。
さっきたまたま出会った人を家に泊めるか?
ストーリー的には面白いけど、ちょっと怖いなぁ。
でも、ヤバかったら逃げればいいか。
俺、足速いし。
「ぜひよろしくお願いします。」
おじさんの軽トラにオールジャクソン号を積んで、助手席に乗った。
「さっき泊まる?て聞こうと思ったんだけど、一応奥さんに連絡しておこうと思って。確認したら了承もらえたから、こっちの道から来たら会えるだろうなと思って来たんだ」
と言っていた。
妻子持ちだということをしり、少し安心した。笑
どんどん車や山の中に入っていく。
だいぶ登った先にポツんと家が建っている。
「あれが僕の家だよ。自分で建てたんだ」
3年かけて、一人で作ったらしい。
土地を買って、森を切り開いて、設計をして、土台を作り、材料を準備して、家を建てた。
奥さんと子ども2人の4人家族。
横にはバレーボールコートもあって、お風呂は毎回薪で沸かす。
少し離れた場所にミツバチの巣を行為的に作り、ハチミツを自分で採取したり、その辺に生えてる野苺を食べたりしている。
「人里離れた所に家を建てて暮らすこと」が夢だったらしい。
夕食は山で採れた山菜の天ぷらがメイン。
他にもサツマイモや穀物など、自然のものばかり。
味はシンプルに塩だけだが、素材が新鮮で美味しい。
「生かされてる〜」と心から感じた。
夜はレトロなBGMを聴きながら、旅の話をした。
笑ったり、驚いたり、感動したり、豊かな時間とはこういうものだと感じていた。
外は真っ暗だが窓の外から星が見える。
電波もほとんど通らない。
テレビもない。
でも、外を見てるだけでこんなに楽しいなんて。
なんて贅沢な時間だ。
あのタイミングであの山道を進んでなければ出会わなかった人達。
これが旅の醍醐味だなぁと感じながら眠りについた。
既に佐賀長崎に来て良かったぁと思った。
これを1人で作ったなんて、すごい。
靴も磨かせてもらいました。
↑最新情報はこちら