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「幸せのキャンディ物語」
靴磨き世界一周アジア編176日目
なんであの時渋ったんだろう
って後悔した思い出がある。
大学4年生最後の夏休みに、カンボジアに来た時のこと。
その時は本当にお金もなくて、ゲストハウスから
アンコールワットまで10キロ離れていたが、節約
のために歩いて向かった。
アンコールワットを堪能した後、またゲストハウス
まで歩いて帰ってる道中、クソ暑いなか何時間も外に
いたので軽い熱中症になった。
クーラーの効いた場所に入りたい。
ゾンビ状態で歩いてると、日本の文字が書かれた
看板を見つけた。
お土産屋さん??
とにかくゾンビ状態だった私は一時避難のために
そのお土産屋さんに入った。
あぁ、涼しい。
お店に入るとすぐ左手に飴を作ってる職人さんがいた。
なんだろうここは?
と思って店内を散策していると、店の奥から
「こんにちは」と女性が話しかけてきた。
その女性が当時シェムリアップでお土産屋さんを
経営されてる西さんだった。
え、カンボジアでお土産屋さん!?
ゾンビ状態から西さんの話の好奇心で復活
した佐原青年は質問攻めをした。
西さんは今から25年前にシェムリアップに来て、
それから日本人観光客向けにお土産屋さんを始めた。
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経営されてしばらく経った頃、ブログで
飴職人のやよいさんの存在を知った。
やよいさんの活動に感動した西さんは
「カンボジアでアメちゃんを作りましょう」と
アプローチをした。
それが魔法のアメちゃん、「アンコールキャンディ」
の始まりだった。
やよいさんの技術はカンボジアのスタッフにも
伝授されていき、メディアでも取り上げられるよう
になりお店の看板商品になっていた。
私はシュムリアップに滞在していた当時、
2回ほどそのお土産屋さんに通って西さんと
やよいさんとお話をしにいった。
私は西さんとやよいさんにお別れの挨拶をしに行くと、西さんは「じゃあお土産にキャンディ持って
行って」と言って、お店の商品であるアンコール
キャンディをプレゼントしてくれた。
実は何度もアンコールキャンディを買おうとしたの
だが、私はお金を節約するために買うのを控えた。
「キャンディなら日本でも食べれるし、わざわざ
ここで買わなくててもなぁ」なんて思っていたのだ。
だから正直その時に西さんがキャンディをくれた時、
「ラッキー」って思った。
そしてゲストハウスに帰ってから食べようと思って
いたキャンディは、その時仲良くなった旅人達とお話
していたらすっかり忘れてしまい、ポケットの中に
置いてけぼりになったのである。
次の日、カンボジア最終日ということもあり
朝からゲストハウスで仲良くなった旅人達と
プレアビヒアという秘境のツアーに行った。
すっごく楽しいツアーで、「カンボジア良かったなぁ」
なんて言ってると最後に事件が起きた。
私達が乗ってたバンがパンクしたのである。
え、こんな田舎道でパンク??
一度バンから降りることを指示されて、
バンの修理を見守る。
なかなか治らない。
どんどん不安になってくる。
大丈夫かな。
その時、ポケットの中に何か入ってるのを感じた。
アンコールキャンディだ!!
私はそのキャンディの袋を開けて、一つ口の中に入れた。
美味い!!
その辺に売ってるキャンディとレベルが違う。
そのキャンディを食べた時、車が直るのか不安
だった気持ちはどこかへ行った。
「ねぇねぇ、キャンディあげる」と私は他の旅人
にお裾分けをした。
旅人A
「なんでキャンディ持ってんねん!?」
総将
「まぁええから食ってみ」
旅人A
「うんま!!」
きっとあのバンがパンクした時、不安を感じたのは
私だけでなかったはず。
他の旅人も少なからず「こんな田舎でパンクして
今日帰れるのかなぁ」って思っていたはずだ。
でも、みんなでアンコールキャンディを食べて、
気持ちが軽くなった。
あの時、私は幸せだなぁって感じた。
それと同時に、「なんで俺はキャンディ買うのに
渋ったんだろう」て罪悪感もあった。
次行くときはいっぱい買おうってその時誓った。
それから6年が経ち、今日西さんとやよいさんに再会した。
お土産屋さんはコロナの時に手放したけど、
今もオンラインをメインにアンコールキャンディを
作っている。
念願のアンコールキャンディを10個買うことができた。
自分用と、お土産用に。
やよいさんが言ってた。
『「このキャンディを作る時に、ありがとう。
これを食べた人が幸せになってね」って言いながら
カンボジアの職人と一緒に作ってる』って。
今日買ったキャンディを今滞在してるホテルの
スタッフさん達と一緒に食べて、みんな幸せそう
な顔をしていた。
心を込めて作られたキャンディってこんなに
人を幸せにするんだね。
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