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疎外感は疎外されないとわからない

 マヂカルラブリーの野田さんが、地下芸人だった頃すべればすべるだけいいと思っていたみたいなことを言っていた

 私はネタをやったことなんぞ無いし、わりとわかりやすいライブに通い続けているしがないお笑いファンである。
 それでも15年くらい通っていると、お笑いのライブに行って「なにが面白いのか全くわからん」とか「これを面白がれないのは私が悪いのか、やってるほうが悪いのか」で悩むことなんてまあなくなった。
 まあめちゃめちゃ面白くねえなって思ったライブでも原因がある程度わかるし、私の感性が老いたのが悪いなと思うこともある。

 先日特定の映画の曲をたくさんかけるよ!というクラブイベントに行った。
 いつもはマス向けの音楽をやっているアーティストがDJをやる、というイベントでもあった。
 私はその映画が好きなので、その曲がたくさん聞けるなら一晩聞きたいなーと思い、22時〜4時30分のライブに行くことを決行した。
 イベントは楽しかった。全く後悔もしていない。
 んだけど、映画の曲は大してかからなかった。クラブでかけたら熱い曲がたくさんかかった。んだと思う。んだけど、自分の解像度が低すぎてどういう状態かがあまりわからなかった。知らん曲聞くのが辛い、とかではない。
 かける側は明確に、自分たちの客が沢山来てることを分かっている。
 Twitterでも以前自分たちの客が沢山きた現場でその人たちが興味ない音楽をたくさんかけてすべった、という話をしていたし、この映画の曲もたくさんかかってるだろうからかけないと明言していた。
 DJなんて好きな曲をかければいいし、芸人もすべっても好きなネタをやればいいと思っている。
 でもどちらに対しても「あ、この人たちにとって私は本当にどうでもいいんだな」という風に気づく瞬間があって、金を払ってなにやってるんだろう?と思う瞬間がたしかにある。
 これは演者に改めて欲しいと思っているnoteではなく、ただ私がさみしかったという話である。
 誰しも同業者から褒められたいだろうし、誰しも偉い人から認められ仕事に繋げたいんだと思う。
 女子供に喜ばれるものはダサく、男がたくさん集まるものがイケていると思っているのだろう。
 我々が少い給料から捻出した数千円にあまり意味はないのだろうとも思う。
 これは今回のイベントだけで思ったことじゃなくて15年くらいエンタメを見続けてきて頻繁に感じている疎外感だ。
 なんで好きなものでこんなに疎外感を覚えなきゃなんだろうなー。まあ、好きなものだからか。

 冒頭の野田さんの言葉を何度も思い出した。本来の文脈とはズレてしまうけど(動画はめちゃめちゃ面白い)、同業者だけにわかって、客に伝わらないことするのって気持ちがいいのかもな?とかも考える。追いつけない客が悪いんだろうなとも思う。己のための場所じゃないなと思えば行かなきゃいいしな。とも思う。
 ここ最近の若手の芸人さんたちのライブではそこまで疎外感を覚えずに済んでいたから久しぶりに食らってしまったという話。
 あとたぶん同じ感じのイベントにたくさん通わないと今回のことをちゃんと評価できないなとも思いました。
 感傷に付き合ってくれてありがとうございます。

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