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フランセシーニャではじめよう <夫婦世界一周紀58日目>
びくびくしながらライアンエアに乗ったのは夜8時を過ぎた頃だった。
格安航空の中でもとびきりルールが厳しいライアンエアは、チケットの印刷が出来ていないだけで50ユーロ徴収されるという。しかもルールがちょくちょく変わるので恐ろしい。
2ヶ月近く旅を続けてきたけれど、トゥヴァのNord starで肝っ玉が冷えたくらいで大きな問題に遭遇したことはなかった。今回も拍子抜けするほど簡単にチェックインを済ませ、離陸したと思ったらもう着陸態勢に入っている。距離はだいたい東京から沖縄ぐらい。2時間のフライトは朝飯前だ。
スペインとポルトガルは隣国同士だし、大きな一つの国を分割しているように見える。きっと文化に大差ないんだろうと思いながら空港を降りると、顔は同じ感じだけれど空気は違った。スペインにある陽気な感じが抑えられて、少し真面目な感じ。あとバルセロナよりずっと寒い。
airbnbの宿まで連れていってくれたお兄さんは若白髪混じりの華奢な体格で、真っ黒なタイトスーツを着こなしていた。もうその感じがヨーロッパ過ぎて、急にスリランカが思い出された。もう3年ぐらい前のことのようだ。実質は10日だけど。
すっかり同じ国のような気持ちでポルトガルに来てしまったので、下準備を全くしてこなかった。宿の周りにスーパーはあったが、時計は11時を回っていて閉まっているという。
マドリードのパブ以降外食はしていなかったけれど、そうも言っていられない。宿から歩いて数分のところに深夜も営業しているレストランがあると知って調べてみると、みんな一様にこんな写真を載せている。
みんなスパイシーだとかクレイジーだとか書き込んでいるのだが、いったいこれがどんなものなのか分からない。かろうじて翻訳できたのが、「Francesinha」という単語だった。
ううむ、味は分からないがこれしか食べるものはないのだ。思い切って店に入るも、店員は英語もスペイン語も分からない。かろうじてオラーだけは通じて、フランシーニャの文字を指差した。店員さんが「バタータ?バタータ?」と言ってくるので、よく分からず頷いてしまう。
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ものづくり夫婦世界一周紀
2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…
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