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この未来がずっと会いたかった未来だと思えるよう。

「失礼します!今、お時間よろしいでしょうか!」

14時過ぎ、スーツを着た若い男性が勢いよく店の中に入ってきた。
"THE 営業職" な立ち振る舞い。こちらは気が引ける。

聞けば、今年入社したばかりの新卒一年目。
保険会社に勤める彼は、研修期間が終わり、昨日から一人きりで営業に回っているらしい。まずはとにかく顔を覚えてもらおうという魂胆だろうか、自作の自己紹介リーフレットを手渡しては、「今日は、これを100枚配りきってきます!と言って、会社を飛び出してきたんです!」と、これまた勢いよく訴えかけてくる。今はまだ25枚ほどしか配れていないみたい。
ここだったら弱音を吐けると思ったのだろうか、入社して約1か月半の弱音がポロポロと溢れる彼。
程よい距離を保ちつつ、ただ傾聴する。
今の自分だから感じる、お節介のようなアドバイスなんてものはグッと自分の心に留めて。

この新たな世界に産声を上げた彼らを見て

誰が見ているかも分からないその世界で、たった一人きり、自分自身の力でなんとか独り立ちしようとする彼が現れた、まさに同じ日。

また別の誰かは、計り知れないほど多くの祝福を受け、誰もが認めるほどキラキラした姿で、この新たな世界に産声をあげた。

そこだけ切り取れば、なんて残酷な世界だと思えるだろう。

だけど後者もまた、長い長い「下積み期間」があったに違いない。才能たるもの、パッと花開くものも居れば、少しずつ少しずつ過程を経て花咲かすものも居るに違いない。それが「個性」と呼ばれるものだ。
ここ最近の私は、少なからずそう信じている。

だから、悔しかった。
だからこそ、その存在が眩しかった。

もともと少しばかり知っていたその存在が、私自身の少しの心の余裕が出来たその隙に、スッと入り込み、ズルズルと深い沼へと引きずり込んでいった。

初めは、その理由が分からなかった。
だけど、今日この日を迎えた彼らの姿を見て、ハッキリ分かったような気がした。日々の忙しさを言い訳に、本当にやりたいことから目を逸らし続けた今日までの自分を酷く後悔した。

私は、誰かの夢に乗っかるのではなく、自分自身で創り上げたその夢を自分自身の手で実現させたい。誰もが「アッ」と驚くような、そんな選択をしていたい。
泥臭くとも、何かを成し遂げたその先に、誰からも「おめでとう」と言ってもらえるようなそんな結果を残し続けたい。

ここ最近ごちゃごちゃに絡まり合っていた感情が、ふわっと解けたような気がした。

私もまた、この未来がずっと会いたかった未来 だと思えるよう。
諦めきれない夢に向かって歩き出します。

今日出会った新卒の彼もまた、自分らしく生きられる道を見つけることを願って。

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