半円型モスポールを自作してみた
モスポールを自作したので備忘の意味も込めて。高さ55cm、水苔抜きで560円! 知らない方のために前置きも書きましたが、作り方を早く知りたい方は目次から該当の記事へ飛んでください。ちょっと変わった作りですが、よく見るものもメッシュ部分を短く、PPシートを長くして丸めればできると思います(次に作ったポトスのものはそうしています)。参考になれば嬉しいです。
はじめに:モスポールとは?
モスポール(英語で “moss pole”)という言葉を聞いたことがある方は少ないかもしれませんが、この記事に興味を持っている方々の中には、既にご存知の方も多いでしょう。直訳すると「苔の棒」です。
モスポールとは、蔦性植物や着生植物を支え、登らせるために鉢に取り付ける支柱のことです。小学生の頃に朝顔を育てた経験がある方や、ヘチマやトマトを育てたことがある方もいらっしゃるでしょう。朝顔やトマトでは緑色の支柱を使用し、ヘチマではネットを張って蔦を登らせた経験があるかもしれません。モスポールは、こういった支柱の一種で、主に観葉植物の成長を助けるために使用されます。
自然界では、蔦性植物や着生植物は木に張り付いたり絡みついたりして成長します。モスポールは、そのような自然な成長環境を再現するために作られています。植物の代表的な例としては、ポトス(エピプレムヌム)やアロカシアなどのサトイモ科の植物(アロイド)が挙げられます。自生地で木などに登って育つ植物は一般的に登らせると大きくなります。
モスポールは、その名の通り、苔(水苔)で作られたものが一般的です。金属やプラスチックの金網(メッシュ)の中に水苔を詰めて作ります。水苔以外でも、ココナッツファイバーで作られたものや、バーク、あるいは普通の土に近い素材を使用して作る方もいます。また、昔ながらのヘゴ棒を使用する方もいますが、ヘゴという木が入手困難で高価になっているため、モスポールが人気を集めています。
モスポールを使うメリット
自然では木に張り付く植物の成長環境を再現するためにモスポールを設置する、といいました。そこで、こう思う人もいると思います。「では、木の板でいいのでは?」「朝顔のようにプラスチックや金属の支柱でもいいのでは?」と。
着生植物は、気根と呼ばれる空中に出す根を使って木に張り付きます。これらは普通の根と同じように、水分や栄養分を吸収する機能も持っています。モスポールは苔などの水分を保持できる素材で作られており、植物はそこから気根を通じて水分と栄養を吸収することができます。その結果、植物はより大きく成長すると考えられています。
モスポールで植物を大きく育てている方の代表としてはオーストラリアの「Sydney Plant Guy」さんがいます。私もこの方に影響されてモスポール興味を持ちました。以下の動画は、この方のモスポールガイドです(英語)
半円型モスポールとは
半円型モスポールとは、その正式な名称は不明ですが、片面がメッシュで、もう片面がプラスチックなどで覆われているタイプのモスポールを指します(というか、ここではそう呼びます)。通常の円柱型モスポールは全面がメッシュで植物が全方向から気根を伸ばせるようになっていますが、半円型はその名の通り上から半分に切った形状をしており、平面がメッシュ、曲面がプラスチック板で覆われています。これにより、植物は内部の水苔に気根を伸ばせる方向が制限されます。
円柱型モスポールでは植物が全面に巻き付くため、螺旋状に成長します。しかし、室内で観葉植物を育てる際、多くの場合は壁際に置かれ、光は一方向からしか当たりません。わざわざ光が当たらない方に植物は伸びないので、円柱型で育てたとしても真っ直ぐ上に伸びるでしょう。この点を考慮し、植物が張り付く方向だけをメッシュにし、裏面はプラスチック板で覆うことで水苔の水分蒸発を抑えることを目的として半円型モスポールが考案されました。プラスチック製で、内部に水苔を詰めれば直ぐに使える状態で販売されている製品も存在します。
今回、半円型を選んだ理由は以下です。
基本的に室内で育てる。鑑賞する面は一方向から
鑑賞する面に植物が張り付く面積を大きくできる
円柱よりも使う水苔を減らせる(わずかですが)
今回作るモスポールについて
6号鉢(直径18cm)用
高さ55cm
これは購入したPPシートの長さに合わせました
鉢に入る部分も含めた高さです曲面をメッシュにしてみる
植物が張り付く面積を増やしてみる。ただし、その分、土の体積が減るのでどちらがいいかは考えどころです
今回は1ヶ月ほど前に見切り品として売られていたスキンダプサスのためのものを作ります。このスキンダプサスは茎伏せ(茎を切って新たに根を出させる方法)で増やされた6つの株がまとめて植わっていたもので、購入時はハイドロカルチャー(水耕栽培)用として販売されていましたが、長時間水に浸されていたため、根がほとんど腐っている状態でした。腐った根を取り除いて土に植え替えてから養生し、新しい葉も展開し始めたので、今回は植え替えを行うことに決めました。
植物が気根を張り付ける面積を増やすために、メッシュの面を少し曲げて曲面にし、プラスチック板の部分は平面になるように設計しました。また、植物がまだ小さいため、土が多すぎる状態になることを防ぐため、鉢底石で土の量を調整する予定です。
自作モスポールの材料
お待たせしました。それでは、実際に作成したモスポールについてご紹介します。
材料は以下のものです。可能な限り安く済ませたつもりです。水苔以外は計560円です!
トリカルネット (1m × 20cm、以下ネット)
メッシュの面に使用するプラスチック製のネット。近所のホームセンターで20cm分を購入(切り売り)。金網を使う人もいるようです。気根が入るため目が粗めのほうが良いです。
340円PP(ポリプロピレン)シート (39cm × 55cm 厚さ 0.75mm、以下シート)
ダイソーで購入
110円結束バンド
ネットとシートを繋げるために使用。こちらもダイソーで購入。10本使用。
110円乾燥水苔
家にあったもの。
値段不明(100均でも購入可能)
その他の用意したもの
はさみ、カッターナイフ
ネット、シートを切るために使用。穴あけパンチ
シートに穴を開けるために使用。100均でも購入可能鉢(6号スリット鉢=直径18cm)
モスポールも鉢の中にいれるので、大きめの鉢が必要。鉢底石
鉢の底にいれる石。スリット鉢の場合、水はけが良いので鉢底石はなくてもよいのですが、今回は植物がまだ小さいく、土が多すぎる状態になるかもと思い、下に鉢底石を入れて土の量を調整しようと考えました。また、モスポールの重さで鉢が倒れることを防ぐため、重くしようという考えもありました観葉植物の土
園芸店で購入したもの植物(スキンダプサス)
上記のものじょうろ
水やり用テグス(釣り糸)
植物をモスポールに押し付けるために使用。必要に応じて。100均でも購入可能
それでは実際に作っていきます。
モスポールの作り方と植え付け
水苔の準備
乾燥水苔を水で戻しておきます。前日から仕込んでおきます。
メモ:水苔1Lに対し水70mL
メモ2:Sydney Plant Guyさんは直径6cm, 高さ90cmのモスポールに90gの乾燥水苔を使っている
ネットとシートを切る
鉢に合わせてネットとシートを切ります。シートはカッターで切るときれい仕上がります。今回は高さをシートの長辺(55cm)に合わせました
シートに穴を開ける
ネットの目に合わせて穴あけパンチで開けます。今回はネットの目の5つごとに穴を開けましたが、もう少し間隔が狭くても良かったかもしれません。一般的な一度で2つ穴を開けるタイプのものを傾けながら1つずつ開けました。1つずつ穴を開けるタイプのものを持っているならそちらが良いと思います。
水苔を入れる位置を確認
土をいれる高さまではモスポールには水苔を入れずに土を入れます。これは水苔だと水分を保持しすぎるので、それを防ぐためです。一旦鉢に入れてみて、高さを確認します。
片側だけネットとシートを結束バンドで繋ぐ
少し緩めに止めます
水苔を入れる
先ほど確認した位置から上に水苔を入れていきます。曲面の方に入れると良いと思います。ネットを曲面にしてしまったために、ネットの目から水苔が落ちたりしてしまいました。時々、シートとネットで挟み、水苔の量が適当か確認します。
もう一方結束バンドで繋ぐ
シートとネットを完全に繋ぎます。先程緩めに止めたものしっかり止め、余った部分を切ります。水苔がちゃんと入っているか確認し、足りない場所があれば押し込んだりします。
モスポールに土をいれる
後から入れるのは大変なので倒した状態で先に入れてしまいます。写真では鉢底石を入れていますが、結局土の量が少なく感じたので、この後土に入れ替えています。
植物をモスポールに固定する(必要に応じて)
植物をモスポールの予定位置に軽く固定するすると作業が楽なようです。特に既に気根が出ているものはモスポールへくっつけた状態にしておくと、この後土をいれる時に良い位置に植え付けられます
モスポールを鉢にしっかり入れて立てる
土が多少鉢内にこぼれると思いますが、立てます
モスポールを鉢に固定する
鉢とモスポールをガッチリ固定する場合もあるようですが、私は固定しませんでした。倒れにくいように割り箸を渡す方法もあるようです
植物の位置を確認しながら土をいれる
植物側とモスポールの裏側にも土をいれます。今回は転倒防止を考えて裏側には鉢底石を入れました。曲面がシートになるように作れば、鉢の縁とシートを合わせることもできると思います。
釣り糸での固定(必要に応じて)
植物の近くにあれば自然と張り付くようですが、密着するように釣り糸で縛りました
水やり
通常の植え替えと同じように水をやりました
鉢カバーに入れる(必要に応じて)
倒れるのを防ぐため、重めの鉢や鉢カバーに入れる人もいるそうです。今回は裏側に鉢底石を入れることで重さを稼ぐことで転倒防止を図りました。
密閉(必要に応じて)
植え替え後は葉からの蒸散が根からの吸収よりも多くなり、植物が弱ることがあります。葉を切って数を減らす方法もありますが、今回は植えた植物が小さいため、密閉して湿度を上げることで蒸散を抑えます。気根を出す系の植物は熱帯のものが多く、そもそも多湿を好むため密閉は効果的だと考えました。鉢だけを密閉する、通称鉢密閉という方法もあります。
モスポールの水苔を湿らせる
植物を張り付けるためには水苔を湿らせるのが良いそうです。水があるところに根を伸ばす性質を利用します。張り付くまではなるべく毎日確認します。
これで完了です。今は葉があっちこっち向いてますが、環境に合わせてこれから向きが変わっていくことでしょう。
注意点
当たり前ですが、モスポールを使おうが使うまいが、植物にとっては植え替えです。環境の変化や根が傷つくなどのストレスがかかるのでその植物の植え替え適期に行いましょう。
改善点、良かった点など
今回作ってみての反省点、良かった点など
反省点
パンチ穴の間隔
もう少し狭い間隔でも良かった曲面の膨らみ
想定よりも曲面が膨らんでしまい、植え付け面積が減った。水苔や結束時の影響と思われますモスポールの位置
モスポール裏側は鉢底石を入れたのですが、重さでモスポールが前に押され植え付け面積が減ってしまいましたモスポールの色味
最初はネットも結束バンドも黒で作ろうと思っていましたが、近場で手に入りませんでした。欲しい色が手に入るか確認が必要です作業場所
水苔が散らばるため清掃が必要でした。屋外または室内なら何かを敷くのが良いです
良かった点
予定に近い形で完成させることができた
安価で作ることができた
私の人件費は含みません笑
まとめと今後
まとめ
6号鉢用の高さ55cmの半円型モスポールを作った
水苔以外の材料は560円で用意できた
植物の張り付く面積を増やすため、曲面をメッシュにした
倒れることを防ぐため、モスポールの裏側には鉢底石を入れた
モスポールを作成、設置し、植物の植え付けを実施した
今後について
植物(スキンダプサス)が上手く張り付いて登るか
葉の向きや大きさ、生長具合
水やり(土、モスポール)、置き場所などの工夫
土が少ないことの影響があるか
引き続き観察を続けて、経過報告できればと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
あなたの園芸ライフが豊かになる参考になれば幸いです。
次の記事はこちら
まとめはこちら
参考:モスポールに関する動画
Sydney Plant Guy
上でも紹介したオーストラリア在住の方。動画は英語ですが魅力的な植物を見ることができます。半円型のモスポールを知ったのもこの方の動画でした。Youtubeの字幕翻訳機能なども使えます。
桐島かれん at Home
モデル、女優の桐島かれんさんも植物好きな方で、モスポールを使って植物を育てられています。
三上真史の趣味は園芸チャンネル
こちらではポトスの鉢にモスポールを設置しています。
熱帯植物栽培家の気まぐれ塾YouTube版
熱帯植物栽培家の杉山拓巳さんのチャンネルでもモスポールを作っています。こちらは塩ビ管に水苔を巻くという形。よりお手軽で安価に作れます。