「ニベ」という魚
みなさん、ニベという魚をご存知ですか?
アジやマグロのようなメジャーな魚ではありませんが、それほど珍しい魚でもありません。釣り人が単に「石持(イシモチ)」と呼ぶのがニベ科の魚です。また釣られたらグーグー愚痴のように鳴くので関西では「グチ」と呼ばれることもあるようです。
ニベ科の魚は日本産で17種類もあり、正式和名の他、地方名や通称があったり、または混同があったりして、非常にややこしいことになっているので、ここでは触れません。
先日、正式和名ニベ(ニベ科ニベ属)の魚をスーパーで買ってきて、アニサキス調査を行いました。調査は魚体の内臓を取り出し、必要に応じて解剖しながら目視でアニサキスを見つけ記録するというものです。
その結果は本題の主旨から逸れるので割愛しますが、それがわたしにとって初めてのニベという魚の内部を見る経験だったのです。
そこで、いろいろと面白い発見をしました。
まずはこれ↓ 「浮袋」
いろいろな魚をさばいた経験がある人なら、浮袋は薄い膜のようなもの、との印象を持っているのではないでしょうか。わたし自身そうでした。
ところがこのニベの浮袋は、肉厚でごっつい(^_^;)
何か全く違う臓器のように感じました。
調べてみると、ニベ科の魚がグーグー鳴くのは、この浮袋を使ってるとのこと。たしかにこの臓器なら、低温で大きな音が出そうです。
またこの浮袋、煮詰めてニカワ(ゼラチンを主成分とする接着剤・分散剤)を作ることができるとか。
浮袋(鰾)のニカワ(膠)を「鰾膠」と書き、これも魚名同様「にべ」と呼びます。
よく知られている慣用句で「にべもない」というものがあります。
「鰾膠(にべ)」のそのべたべたした性質から愛想や世辞を表す言葉にも転じ、愛想がない/取り付く島もない、という意味で使われるようになりました。
浮袋だけで、鳴き音、ニカワそして慣用句の話がでてきました。
面白い魚ですね。
次回機会があれば、この浮袋を食べてみたいと思います。
そしてもう一つは、「腹身」↓
真っ白な外側の腹身があり、その上にピンクっぽい色の内側の腹身が貼り付いています。いずれも他の身部分とは違う色・食感なのです。
特に内側の腹身を刺身にしてみたのですが、プリプリした食感で大変美味でした。
半透明なのでアニ有無の判断がしやすく、アニサキスアレルギー持ちのわたしでも比較的安心して食べられました。
そして、外側の腹身も塩焼きにしてウマウマ。
腹身だけでもニベという魚を買う充分な理由になり得ます。
それだけ特別感があって美味しい。
機会があれば、是非ともお試しあれ。
最後に、肝心の身の部分について。
これもメチャウマでした(*^^*)
写真でわかりますように黒い筋のようなものが見栄えを少し悪くしています。ところが別に雑味や嫌味があるわけでなく、刺身にしても大変美味しい魚なのです。
では。
(追伸)
ニベ(イシモチ)の耳石については別の機会で書きたいと思います。
CFマスター
<参考文献・サイト>
・遊遊 さかな大図鑑(株式会社エンターブレイン)
・Wikipedia