【SH考察:061】クロエの子は誰か
Sound Horizonの『黄昏の賢者』で賢者に相談している女性、クロエ。
彼女は後に母親になった可能性が高いが、生まれた子は誰だろうか。
絵馬に願ひを!までの既出の登場人物の中にクロエの子がいる可能性を検証した。
対象
5th Story Romanより『黄昏の賢者』
小説『Roman 冬の朝と聖なる夜を廻る君の物語』
※ネタバレ含む
考察
mademoiselleとmadame
『黄昏の賢者』では、クロエという女性が賢者に何らかの相談をしている様子が描かれている。
その際、賢者はクロエに対して二通りの呼び方をしている。
1つは直接名前を呼ぶ呼び方。これは1回だけだ。
そして2つ目はmademoiselleという呼び方だ。
こちらは3回使用している。
気になるのは3回目だ。具体的には、クロエの悩み事が出産に関することと知った上でなおmademoiselleと呼んでいる点が気になっている。
おそらく賢者は2回目と3回目の「mademoiselle」の間に、クロエの悩み事が出産に関することだと理解したはずだ。
彼が出産に関することを言及するのはここからだ。
「なるほど」と発言しているため、おそらくその前にクロエから悩み事を明かされたのだと思う。
それにもかかわらず、その後3回目もなお「mademoiselle」と呼んでいるということは、おそらくクロエの悩みは未婚の母になるか否かだ。
mademoiselleという呼び方は未婚の女性に対して使われるものだ。
既婚女性に対してはmadameと言う。
そして賢者とクロエがいる詳細な年代は不明だが、現実では2012年、少なくともフランスの公的文書では未婚か既婚かを問わずmadameに統一している。
妊娠したということは、当然子の生物学的父親がいるはずで、呼びかける際に気を遣ってmadameに切り替えてもおかしくない。
近年のポリティカルコネクトレス的思考を持っていたら、そもそも1回目からmadameと呼んでいたかもしれない。
だが実際は、賢者はクロエに対してずっと未婚女性を表すmademoiselleと呼び続けている。
そして、クロエは「産むべきか←→産まざるべきか」が問題となっている。
総合的に見て、未婚の母になるか否かを悩んでいると見て良いのではないだろうか。
クロエは母になったのか
クロエは明確に産むとも産まないとも言っていない。
ただ彼女なりの答えは決まったようで、それが賢者にも伝わっている。
雰囲気的には産んでいそうな気がするが、だとしてもRomanに登場する登場人物の母親ではないと思う。
なぜなら賢者が「君は君の地平線を目指して」と言っているからだ。彼女の進む先は、Romanではない別の地平線なのではないだろうか。
では、Roman以外の地平線でクロエやクロエの子は既に登場しているだろうか。
クロエの子候補
現時点で、Roman以外に登場する、家族関係が不明なフランス人の血を引く者は二人。
どちらも名前がノエルだからややこしい。
連作幻想戯曲『檻の中の花』を著した劇作家Noël Malebranche
VANISHING STARLIGHTのNoël
前者の劇作家ノエルは明らかにミシェルの親戚だが、父母の名は不明。
仮にクロエがこのノエルの母親だった場合、未婚かつミシェルの影響を何らか心配して産むのを躊躇うという可能性は否定できない。
後者のヴァニスタノエルは父親は他界、母親は蒸発しており、やはりどちらの名も不明だ。
名づけは父親らしいが、ノエルが生まれる前に死んでいる。
クロエと男が籍を入れる前に、男のほうが先立ってしまって不本意に未婚の母になってしまったという説だ。
ただこのノエルの母親は日本…に似た秋津国の人だから、クロエはフランス人の女性名Chloeなどではなく、黒江や黒枝などの姓ということになるが。
Romanを小説化した『Roman 冬の朝と聖なる夜を廻る君の物語』の下巻では、クロエは本当はクロエダという姓の女性で、夫は遠くの国に出稼ぎに行って事故死しており、自身は病気の体でノエルを産んだという設定だった。
これに近い説だ。
(小説内ではクロエ=クロエダ=11文字の伝言の母=ヴァニスタノエルの母になっていたが、私は『11文字の伝言』の母は『星屑の革紐』のエトワールの母だと思っているため、あくまでクロエがフランス人ではないという点と、ヴァニスタノエルの母という点で近いという話)
クロエの生きた時期
劇作家ノエルとヴァニスタノエル、どちらかが子である可能性を考えるにあたり、時系列的に違和感が無いかを確認する必要がある。
クロエと賢者はサンホラの中でもかなり現代よりの人物だ。
『黄昏の賢者』だけでは時代が特定しにくいが、賢者、本名クリストフが登場する『檻の中の花』で、彼の生きている時代がかなり限定できる。
この「彼女」はMichèle Malebrancheのこと。
そしてクリストフは彼女の死後一世紀を経過した"今"生きている。
ミシェルが死んだのは1903年2月4日。そこから一世紀つまり100年後は2003年。
(ちょうど『檻の中の花』が初めて収録されたPico Magic Reloadedの発売年が2003年)
つまり彼はおおよそ1900年代後半に生まれ、2003年を経て、何ならまだ存命かもしれない。
そしてそんなクリストフと同じ時代に生きているということは、クロエもまたざっくり1900年代後半に生まれたのだろう。クリストフよりは若そう。
クリストフ・クロエ・子の年齢を仮であてはめてみた。
劇作家ノエルの場合、2003年に戯曲を書きあげられるだけの年齢である必要がある。仮に25歳としよう。
となるとクロエが出産したのは25年前の1978年。
つまりクリストフはクロエと初対面のときに胡散臭さを出せる年齢で、かつ25年後も現役の年齢の必要がある。
クロエと出会ったときに35歳、戯曲のときに60歳とすれば成立するが、出会いの胡散臭さのためにはもう少し上の年齢のほうがしっくりくる気はする。
ヴァニスタノエルの場合、2014年のデビュー時のインタビューで酒に関する冗談を言える、つまり20歳以上になっているはず。
かつ、彼は先生(教師)をしていた時期があることが、「✝V-ROCK HEAVEN✝」のmarie*marieによるインタビューで判明している。
「辞める」という表現から、目指していただけではなく実際教職についてから辞していることがわかる。
つまり彼は最低でも23歳以上だ。教員になるには大学で教員免許を取り卒業しなければならず、就職は最低でも23歳になる年になる。
そこからミュージシャンとして奮闘する期間も必要になるため、こちらも暫定25歳としておこう。
となると25年前の1989年にクロエは出産。
その頃クリストフが35歳だとすると、戯曲の時の年齢に49歳。もう少し年齢を高めに設定しても問題ない。
どちらかというとヴァニスタノエル説のほうがクリストフの年齢が自然なように感じる。
結論
もしクロエの子が既存人物ならば、ヴァニスタノエルの場合さほど違和感がない。
ただ前提として、クロエが秋津人で、かつ出産後にノエルを置いて失踪したという点を受容する必要がある。
今後クロエの夫かノエルの両親の情報が出たら、より整合性を確認しやすくなるかもしれないが、現状これ以上を確かめるのは難しそうだ。
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
更新履歴
2023/10/04
初稿
2024/04/24
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記
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