中国ドラマ『月光変奏曲』の復縁カップルの話をさせてくれ
中国のアイドルサバイバルオーディション番組「青春有你2」で虞书欣(虞書欣、Esther Yu)を知ってから、中国ドラマを観るようになった。
彼女は「青春有你2」以前から女優として活躍しており知名度があった。そして見事2位になりアイドルグループTHE9のメンバーとしてデビューした後も立て続けに出演作が公開されている。主演ばかりで、しかもヒット作ばかりという売れっ子だ。
THE9になってから初めてのドラマが「月光変奏曲」、次が「蒼蘭訣」。私は彼女をきっかけに両方見た。というか「月光変奏曲」で初めて中国ドラマを観た。どちらも恋愛ものだ。
2本見て気付いたのだが、なぜか私は主演のカップルよりもサブのカップルのほうが好きだった。そして唐突に良さを語りたくなったのでこの記事を書いている。
今日は「月光変奏曲」の、江与诚と顾白芷について語りたい。
月光変奏曲
主人公カップルは出版社の新人編集者初礼(演:虞書欣)とファンタジー小説を書く人気作家昼川(演:丁禹兮)。
初礼はもともと本が大好きで、新人が故に業界の慣習や先入観なしで作家のために奮闘する。真っ直ぐで喜怒哀楽がわかりやすい。
昼川は超負けず嫌いで見栄を張るところがあるが、才能はあり人気作家。いわゆるツンデレだと思う。彼の負けず嫌いさは、かつて同じく作家の父親に自分の処女作を非難されたことが根底にあるようだ。
この二人が職業柄もプライベートでもぶつかり合いながらも、成長して仲を深めていくさまが人気なのだと思う。
が、私が注目しているのはサブカップル、江与诚(演:杨仕泽)と顾白芷(演:马吟吟)のほうだ。
江与诚はミステリー小説を書く作家。昼川の親友。本屋も営んでおり、初礼に対しては途中まで作家としての顔を明かさずただの店長として振る舞っていた。
顾白芷は編集者。初礼とは異なる大手の出版社に所属している。
江与诚
彼は人気ジャンルではないところを得意としていたこと、そして顾白芷と別れてしまったこともあり、数年の間スランプに陥っていた。
ただそもそもそれ以前から彼は、特に人と接することに対してよく言えば慎重、悪く言えば臆病さを持っていた。最初に顾白芷と付き合うときもなかなか手を握ることができなかったことを回顧している。
作家として世間に顔を晒すことを避けていた。そのため初礼は彼の小説を読んだことがあるものの、直接名乗られるまで彼が作家江与诚であることに気づけなかった。
その臆病さに対して、自分の作品と信念については固い。顾白芷からの指摘であっても世間に媚びるような修正は一切拒み続けた。
子供っぽさのある昼川と比べると、江与诚は相対的に落ち着いて大人っぽく見える。
しかし親友同士根っこの部分は似ている。触発されて二人で殴り合いの喧嘩をしたり、昼川の言葉に思わず言い返したりと、同レベルの子供っぽさを持っていることを隠しきれていない。
彼のこの弱さと強さ、子供っぽさと大人っぽさのバランスがとても好きだ。固まりきっていないところが人間らしいと思う。
彼が顾白芷との関係修復に能動的になるきっかけはやはり小説だった。発売した小説がヒットし、見事返り咲いた。初礼の意見を聞いて顔を晒して人気を増やした。
無論その前から少しずつ距離を詰めてはいたが、それらは全て顾白芷が弱ったところを助けるためで、彼自身の変化を伴うものとは違う。
信念を貫く主義を続けて良かったと実感できたことで、作家として編集者顾白芷を助けることも、男として好きな女性顾白芷に近づく勇気も出来た。
あと言わずもがな容姿がカッコイイ。183cmの長身、さっぱりした髪型と鋭い目つき、でも笑顔はかわいい、筋肉質。
(というか中華ドラマで主演を務める男性は皆180cm超なような気がする。すごいな…)
顾白芷
彼女についてはドラマの前半と後半で随分印象が変わった。正直前半はとにかく気が強く利己的に見える女性であり、商業として利益さえ出れば作風と作家の心理は二の次に見えた。
彼女は両親が高校生の頃に亡くなったことで、親代わりの女性はいたものの早く自立しようという心理が働いたのだろう。また上司が嫌味な男性というのも影響しただろう。したたかな人間にならざるを得なかったと思う。
物語序盤は、「本当にこの二人より戻すんか?」と疑いたくなるほど顾白芷と江与诚はギクシャクしていた。
ただ明らかに顾白芷は歩み寄ろうとしていた。それがマーケティング上のメリット訴求とか、情より商業的な側面が強すぎて全然歩み寄りに見えていなかっただけで。
しかしその強さは、まず恩師の体調悪化で大きく脅かされた。恩師は明らかに認知機能に問題が出てきており、肉親代わりの人物の先が短いかもしれない、しかも生き続けても近いうちに自分を忘れてしまうかもしれないということが顾白芷の足元をぐらつかせた。
それから彼女自身の体調不良。一時的な胃腸炎だが入院するレベル。この立て続けの出来事で、自然と江与诚を頼ることになった。
彼女自身頼り方、弱みの見せ方がわかっていなかったが、意図せずとはいえその機会が訪れたように見える。
恩師は最終的に顾白芷のことを忘れてしまった。そしてそのまま亡くなってしまった。その虚無を埋めたのは江与诚。彼に寄りかかって涙を流すことで恩師の死を受け入れ、そして自分を受け入れてくれる江与诚の存在にも頼れるようになった。強くてカッコよくて人情味のある美しい女性になった。
他のキャラクターと比べて、ファッションなど容姿での変化と心理の変化が連動してわかりやすいキャラクターだと思う。
江与诚と初めて出会ったときはニット帽と大きなメガネ、カジュアルな服。付き合い始めもまだそうだった。
しかし編集と作家としての側面が強くなり意見がぶつかるようになる頃は、メガネはかけているがカジュアルさが抜けてコンサバになっている。
そして彼と別れる時は、メガネはなく髪型も整いつつある。
そして現代。コンサバからさらに少し個性をだしたファッショナブルな要素をもち、赤いはっきりしたリップ、髪型も綺麗に整えてあり、頭からつま先まで強く美しい女性の演出をして見せている。
最終話、イチョウの美しい場所での顾白芷は本当に美しかった。髪型やアクセサリーはファッショナブルさを残しているが、服装は少しシンプルで柔らかさを感じるオフホワイト。リップも落ち着いたコーラルピンクで、強さよりも優しさを感じる姿をしていた。
恩師が亡くなった後仕事マシーンになっていたときも同じ服装だったが、その時は顔色が悪く表情も虚ろだった。暖かく優しい表情になって美しさに拍車がかかった。
個人的に好きなシーン
私が好きなシーンを挙げよう。
20話で、退院した顾白芷を自宅に連れ帰った江与诚が、彼女をベッドで寝かせて自分はソファで寝ようとしたところ。
顾白芷は遠慮して自分がソファで寝ると言ったとき、江与诚が「俺のベッドで寝るの初めてじゃないんだから照れることないだろ」という主旨のことを口走る。
そのときの顾白芷の照れる反応がめちゃくちゃかわいい。体調不良で弱っているのもあるだろうが、いつもの強気な彼女にしてはすごくもじもじして、顔を伏せて手で顔を少し隠す感じがとてもかわいい。
江与诚も彼は彼で、彼女が寝室に行った後に、あー俺なに口走ってんだみたいな焦りを誰もいないのに表情と仕草であからさまに見せる。なんか酸っぱい梅干し食べた後みたいな顔だった。
余談だが中国ドラマはこのように、配信元が公式で名場面?の切り抜き動画をYoutubeに上げてくれる風習があるようだ。
酒に飲まれるな
余談。このドラマの登場人物はもう少し酒に飲まれないようにしたほうが良いと思う。主要4人全員が酒でやらかしているシーンがある。
初礼は酔いつぶれて昼川とキス未遂したときと、本当にキスしたときがある。特に後者は公共のベンチで飲みまくっていたので、昼川が迎えに来なかったら凍死までありえる。あの日雪だし。
昼川も何回か酔いつぶれているが、初礼の父親と飲んだ時も飲みすぎて、翌朝何をしゃべったか覚えていなかった。初めて彼女の親と会ったときの対応としては結構きわどい。
というか彼が一番酔いつぶれシーンが多い。たぶん酒に弱いのに自分の限界をわかっていないタイプ。20代後半ならいい加減限度を知るべき。
江与诚は4人の中では比較的マシだが、顾白芷との仲がこじれたときは自宅でひとりで飲んで酔いつぶれ、来訪した昼川に頬をぶっ叩かれた。
ちなみにこの時の江与诚の様子は、日本語公式サイトで「生ける屍となる」と表現されている(27話)。
顾白芷は仕事の付き合いで飲まざるを得ないときもあるようだが、しばしば酔いつぶれている。
一回目覚めたら自宅に若手作家の男云飞がいてびっくりしていた。彼は顾白芷が編集担当している作家で、彼女を慕っている(明らかに恋愛的な意味で)だがこのときは紳士な対応だった。とはいえ女性としてもう少し自衛してほしい。
ちなみに、顾白芷を演じる马吟吟はもともと歌手として有名な方。
CORSAKという男性歌手とのコラボシングル『Reverse』は、「青春有你2」でも題材になったことがある。
ジャズスタイルでハスキーで、優しく沁みる声だと思った。
このドラマのメイン4人中3人中が被っているドラマ「永夜星河」が、来年?放送されるらしい。そんなキャスト被ることある?
虞书欣、丁禹兮、杨仕泽が出演予定。気になる~。