男性アイドルに興味ない人間が男性アイドルサバイバルオーディション番組を観始めてスターを見つけた
近年アイドルサバイバルオーディション番組が乱発している。デビュー前の練習生と呼ばれる彼ら彼女らがしのぎを削ったり協力したりしながら、上位に入ってデビューすることを目指す番組だ。
何なら初期にデビューしたアイドルはもうベテランの領域に入っていたり、いったん解散して別のグループで再デビューして数年目というアイドルまでいる。
アイドルサバイバルオーディション番組出身で、日本で知名度が高いグループだとTWICEやNiziUだろうか。
私が初めて観たオーディション番組はProduce48だ。SNSでバズった動画がたまたま目に留まって、そこからちゃんと見始めた。
推しはクォン・ウンビ。彼女は無事IZ*ONEとしてデビューを果たし、解散後はソロ活動。最近日本映画「スマホを落としただけなのに」に出演したから、日本での知名度も上がってきているのではないだろうか。
しかも彼女は、今ではオーディションを受ける側から審査する側にまわっている。
彼女が審査する側として出演しているのが「スターライトボーイズ」だ。
スターライトボーイズとは
「スターライトボーイズ」とは、2024年10月下旬に始まった、中国の動画配信プラットフォーム爱奇艺/iQIYIが手掛ける、男性アイドルサバイバルオーディション番組だ。
中国のプラットフォームだが、インストラクターや番組での課題曲を見る限り、韓国の番組っぽい構成になっている。
練習生の国籍は問わないようで、アジアを中心に日本人を含めて様々な背景を持つ練習生が集っている。
現時点(2024年11月4日)時点で2話まで配信されているから、未視聴の人でもまだ追いつける。
私の推しクォン・ウンビはGuiderという肩書で2話から登場した。直訳するとガイドする人・案内人だが、普通に審査員っぽい。
男性アイドルに興味はなかったが王子を見つけた
私は今まで男性アイドルに興味を持ったことがなかった。ちなみに女性アイドルもJ-POPはからっきし。K-POPは多少わかる。IZ*ONE出身メンバーがいるところは把握したし、それとは別にaespaが結構好きだ。
なぜ男性アイドルに興味がないのか考えたが、おそらく私が聞きかじった曲での声質があまり好みではなかったからだろう。男性の場合太くて通る声が好きなのだが、たまたま私が聞いた男性アイドルの曲が、裏声を使わないと厳しかろうという音域を対象にしていたから興味を持ちにくかった。あとたぶん好みに刺さるビジュアルがたまたま見つからなかった。
で、「スターライトボーイズ」を観始めたのだが、ひとり気になる練習生を見つけてしまった。いや彼のことを練習生と呼んでいいのか?
彼の名は孙滢皓。以降インハオと呼ぶ。長めの金髪と大きな目が印象的な中国人だ。
インハオは別のオーディション番組で既にデビュー経験がある、プロのアイドルだ。
オーディション番組で生まれたアイドルグループは期間限定である場合が殆どで、彼がデビューしたグループIXFORMも1年半ほどの活動期間を経て2022年11月に解散した。
デビューしただけあって実力は折り紙付きで、特にダンスがとんでもなく上手い。彼の祖国中国を中心に、すでにある程度の認知を獲得している。
番組では彼の登場時、その美貌と経歴で皆の注目を集めていた。この動画の0分53秒のところとか、絵本から出て来た王子様か?みたいなビジュアルをしている。
バキバキに踊る王子様
初登場時は瞳がきゅるんきゅるんの王子様なのだが、実力アピールとして練習してきた曲をお披露目するときは豹変。バッキバキにキレのあるダンスで魅了してくる。
ちなみに彼含めてこの3人、全員元IXFORM。つまり全員デビュー済み。
それでもまたオーディション番組に出ないと活躍し続けられないという点に世知辛さを感じる。
金髪ロン毛は特徴的ですぐ見つけやすいね。
ちなみにアイドルオーディション番組あるあるで、シリーズものや同一プラットフォームで放送された前のオーディション番組のテーマソングが休憩中?合間?に流れる。これに合わせて練習生が踊って気分転換というか、楽しませる。
今回もそのコーナーがあり、IXFORMが誕生したオーディション番組である青春有你3のテーマソング『We Rock』が流れ、当然当時完璧に習得していたこの3人が踊って魅せてくれた。
このときもプロだなと思った。カメラが自分の傍に来るとちゃんと目線を合わせている。
自分の意思に忠実に動く
さて、今この「スターライトボーイズ」はちょっと炎上というか、炎上とまではいかないかもしれないが批判されているところがある。
それが2話での、練習生がテーマソングを踊って評価を受けるシーン。
間に30秒程度の休憩?を挟んで何度も何度も何度も何度も繰り返し繰り返し、結構激しいダンスを踊り続けさせられるのだ。新手の拷問?
先に合格をもらったメンバーはどんどん早抜けし、合格をもらえないメンバーは引き続きエンドレスダンスし続ける。
インハオはわりと早めに合格をもらって応援する側にまわったのだが、何度も何度も繰り返し踊らされる練習生仲間を見て、どんどん目が潤んでいく。
そして、へたり込んだり過呼吸気味だったり泣き出す練習生がいてもお構いなしに、何度目かわからない繰り返しが始まろうとしたとき、インハオは思わず「STOP!!!」と叫んで番組の進行を止めた。
この動画の2時間23分10秒あたりからが当該シーンだ。
何人もいるトレーナーたちの前で「私たちは人間であってマシーンではない」と言って訴える。
結局ガイダーの一人のイ・スンギに「コンサートでは30曲を大変そうなそぶりを見せずに演じる」と言われて言い返す言葉を失い、残っている練習生から「止めてくれてありがとう、でも1日中でも踊るよ」と決意を新たにする言葉を聞いて、インハオは「止めて悪かった」と謝罪する。
一応、番組としては感動話風になっているが…
イ・スンギ自身はアイドルではなく歌手・俳優で、ダンスを苦手と発言したことがあること
仮にコンサートで30曲やるにしても、そのすべてが激しいダンス曲とは限らないこと
仮にコンサートで30曲やるにしても、適宜休憩を挟んでしかるべきであること
仮にコンサートで30曲やるにしても、それは応援してくれるファンがいる状況であること
仮にコンサートで30曲やるにしても、このいつ終わるかわからない無限ダンステストとは異なり終わりは見えていること
仮にコンサートで30曲連続で激しく踊るにしても、それはそれでそもそもアイドルを守っていない事務所が悪いのではないか
少なくともこれらの点から番組が批判されている。
一応、頑張ってまだ続けられる練習生がいる中で、流れを止めてしまったという点でインハオも批判する声もあるにはあるものの、私が見た限りでは、上記番組に対する批判のほうが強めに聞こえる。
ここで誰が正しい間違っているという気はない。
(一度オーディション番組経験があり、デビュー経験もありプロの現場を知っている彼が言ったという点をふまえると、かなり異様な状況だったのだろうとは思うが)
ただインハオは、イ・スンギや練習生の言葉を受けて「踊っていられる練習生がいるのに止めて悪かった」とハッキリ謝罪した。内心はわからないが、それ以降強く言い返したり、怒りや悲しみの感情的な振る舞いを見せず応援に徹した。
私はこれでインハオがとても気になり始めた。
まずあの場で、インストラクターだけではなく進行を管理する番組スタッフが大量にいたであろう中で、言いたいことをハッキリ主張したこと。その内容自体というよりも、その勇気を持っていることを見せたこと。
そしてそれと同時に感情的な暴走はしなかったこと。
主張が強いことをマイナスにとらえる人もいるかもしれない。もしかするとインハオ自身、あの時止めなければ良かったと後悔しているのかもしれない。
それでも私は彼のことをとても好意的に見ている。
私は思ったことをちゃんと主張できる人が好きだ。もちろん言い方と言うタイミングは重要だが、そもそも言う勇気があってからその議論は始まる。
彼は勇気がある。彼は積み重ねた努力とそれによって築かれた実力がある。どうか彼がおかしいと思ったことをおかしいと言える勇気を持ったまま、その実力を輝かせまくって再デビューしてほしい。
最上位で輝きたい
番組の細かいシステムを説明するのは面倒なので適当に省くのだが、インハオは当初星3つ、つまり最上位クラスに選ばれた。
しかし星3つクラスは9人までという上限があり、彼は既に星3つ扱いを受けた人を押し出さねばならなかった。
システム上、彼は「こいつなら押し出せる」と思った相手を選び、他の練習生がどちらがより上か投票。インハオのほうが獲得票数が多ければ見事押し出し成功になる、ということになっていた。
このときインハオがチャレンジした相手が、1位の練習生。彼は迷うことなく1位を狙った。「1位が欲しい。そう言うなら狙いに行かねばならない」と。
そして見事に成功し、トップの席を奪ってその座に就く。有言実行してみせた。
しかしその後、今度は追われる側となったインハオは、別の練習生に席を奪われてしまった。
その結果彼は星2つになってしまう。しかしなんか知らんけど星3つの一番上よりも高い位置に置いてあった椅子に座って、物理的に一番上の席に座って微笑んで見せた。
これでへこたれる様子も見せずにポジティブに笑って見せる。彼の気概は間違いなく星3つだと思う。
星のように輝くというテーマは彼にふさわしいと思う。周りを惹きつけるし周りも輝かせる恒星のようになれる、というかもうなっていると思う。
これからも輝いてほしい
アイドル業界は、素人そしてファンには見えない・見せない辛く苦しく、もしかすると理不尽な面があるのかもしれない。私にはわからない。
個人的に感じたことはあるものの、インハオが訴えたことの正しさを議論する気はない。
ただインハオが望むアイドルの姿になれるように応援したい。
これを書いている最中、インハオが足を負傷したらしいと知った。
(足首?を固定するようなものをつけて、引きずって歩いている動画が出回っている)
大丈夫だろうか……とても心配だが、応援するしかない。課題曲をこなすことへの影響もだが、その後の彼の長くあってほしいアイドル人生にも支障が出ないよう、速やかに治ることを願う。