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【SH考察:001】雪原と吹雪と樹氷のある曲の関連性
※2024/02/23 大幅に改定
Sound Horizonの楽曲の中には数曲、「雪原」「吹雪」「樹氷」など、寒そうな土地柄を想起させるものがある。
これらはバラバラの地平線にあるため一見無関係にも見えるが、つながりはないのだろうか?
今回はどれくらい関連性がありそうかを検証した。
対象
1st Concept Story chronicleより『樹氷の君〜凍てついた魔女〜』
2nd Story Thanatosより『銀色の馬車』
3rd Story Lostより『白の幻影 (White Illusion)』
4th Story Elysion 〜楽園幻想物語組曲〜より『エルの肖像』
考察
状況の整理
対象の4曲について、歌詞からわかる状況を並べて見比べてみよう。
『樹氷の君~凍てついた魔女~』
魔女と息子が迫害から逃げる。雪原の樹氷の森を抜けて氷の城に辿り着くが、吹雪の中魔女は死亡。息子が残って樹氷の王になる。
女は 男の子を庇う様にして 雪原をゆく
(中略)
追われるようにして 樹氷の森を抜け
辿りついたのは 氷の城
(中略)
激しい吹雪の中 佇む二つの影
凍ってしまった女の氷骸と 決して凍らない少年
『銀色の馬車』
吹雪の白夜、雪原で、銀色の馬車が幼子を抱えた母を追いかける。黒衣の男が蒼く燃える手を振りかざし、幼子が死亡。母親が雪原に幼子の亡骸を埋める。
吹雪の夜の情景 白夜に彩られた悲しい物語・・・
吹雪の雪原を 駈けて行く女
幼子を抱きかかえて
(中略)
女が雪原に埋めたのは...嗚呼
愛しき我が子の亡骸よ・・・
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
『白の幻影 (White Illusion)』
雪原、吹雪の中一人で氷の女王の城を目指す。ただその城は幻影。
Go ahead in snowstorm.
(吹雪の中進め)
Solitary in a snowy field.
(雪原の中孤独に)
Go ahead in snowstorm.
(吹雪の中進め)
Don't look back upon the past.
(過去は振り返るな)
(中略)
Icy Queen's castle is mere illusion.
(氷の女王の城はただの幻想)
Tenacity purpose of those who died in a snowy field.
(雪原で死んだ者達の執着心)
What's their thing left behind?
(彼らが遺したものは何か?)
And tale is in the White illusion...
(そして白の幻影の中にある物語とは…)
※和訳は筆者書き起こしのため誤差がある可能性あり
『エルの肖像』
樹氷の並木道を通って、黒い瞳孔の少年が森の廃墟につく。
白い結晶の宝石は 風を纏って踊る
樹氷の円舞曲 遠く朽ちた楽園
黒い瞳孔の少年は 風を掃って通る
樹氷の並木道 深い森の廃屋
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
これらの曲にはいくつか共通点が見つかる。
すべてに共通する要素は降雪くらいだが、2曲にまたがる要素は他にもある。
雪が降る(樹氷の君・銀色の馬車・白の幻影・エルの肖像)
樹氷がある(樹氷の君・エルの肖像)
氷の城がある(樹氷の君・白の幻影)
1. 雪が降る
ただパラパラと振るだけではなく、吹雪と呼べるレベルで、あたりが雪原と呼べるほど降り積もるのだから結構な降雪地帯だろう。
2. 樹氷がある
樹氷とは名前の通り、木々に氷がくっついたもの。気温が-5℃以下で著しく発達するものであるため、樹氷がある地帯はそれだけで非常に寒い場所であることがわかる。
日本では蔵王の樹氷が有名だろうか。もちろん海外でも見られる。
![](https://assets.st-note.com/img/1708653238939-nSF5bmEolx.png?width=1200)
出典:Richardfabi, Public domain, via Wikimedia Commons
『樹氷の君』では、城の手前に樹氷の森がある。
『エルの肖像』では樹氷の並木道を通って、森の中の廃墟に辿り着いている。
追われるようにして 樹氷の森を抜け
辿りついたのは 氷の城
樹氷の並木道 深い森の廃屋
これは『樹氷の君』から時間が経過して、主がいなくなり城が廃墟化したのではないだろうか。
3. 氷の城がある
某少ーしも寒くないわーなキャラが脳裏をよぎるが、つまりはフィクションっぽい要素を感じる。
氷の城が登場する曲は2つあるが、王の性別に差異があるようにみえる。
『樹氷の君~凍てついた魔女~』では遺された息子が王になるが、『白の幻影 (White Illusion)』では女王の城として知られている。
彼は 母の命と引き換えに
凍てつく樹氷の王となった・・・
「生きて欲しい・・・」
それは 愛という名の呪縛
その想いは今も彼を縛る
朧気な記憶の中 優しく微笑む人
その温もりに触れたくて 今日もまたひとり・・・
Sweethearts waiting for you.
(愛する人があなたを待っている)
Whisper of a wind.
(風の囁き)
They are in an icy castle.
(愛しい人は氷の城にいる)
Go to save early.
(早く助けに行かなければ)
『樹氷の君』では、遺された息子は明らかに、母親の温もりを求めて人を誘い込んでいる。
『白の幻影』では最愛の人に呼ばれた(と思い込んでいる)人が幻想に惑わされて城に迷い込んで死んでいると見られる。この2つの城は明らかに類似している。
気になるのは後者が女王の城として知られていることだ。
おそらく女性の幻想で男性を呼び込んでいるからだと思うのだが、樹氷の君は母親を求めているはずなので、これでは母親相応の女性はやってきてくれない。
しかし、男を呼び込む女の城と、母親相応の女性を呼び込む男の城で似たようなシチュエーションで別のものを題材として取り上げるか?という違和感もある。
『銀色の馬車』の違和感
仮にこの4曲が同じ地理や時間軸上にあり、関連性があるとしよう。
その場合、特定の曲にしかない要素を他の曲にも適用できるかを検証する必要がある。
だが先に言おう、『銀色の馬車』だけは曲単体として情景に違和感があるため、他の並列に考えることができない。
理由は、雪と白夜が同時に成立する条件がわからないからだ。
白夜とは緯度が高い特定の地域でのみ見られる現象で、夜になっても太陽が沈み切らず明るい状態になることだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1708653238059-tZ7fpVajni.png?width=1200)
夕方のようだが、撮影時間の通り日付が変わって間もない時間帯。
出典:Yan Zhang, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
白夜は高緯度でないと起こらない。北半球ならば北極圏(北欧やロシアなどの一部)だが、夏(夏至前後)に起こる現象だ。当然雪が降り積もるという情景と合わない。
国内がほぼ全域北極圏のグリーランドでさえ、夏は雪ではなく雨が降る。
南半球(南極圏)であれば冬至前後に起こるが、ほとんどが南極大陸だ。現代のごく一部の人を除き、普通は人が定住する環境ではない。当然馬車が奔っているわけがない。
つまり『銀色の馬車』の、白夜かつ降雪という状況は地球で考えるとおかしいのだ。
現実でもなく地球でもないと考えればいくらでも何とでもなると思うが、そう言いだすと何でもありになってしまう。
結論
4つの曲は似ている点もあるが、主に以下2つの理由から、すべてを同じ地理や時間軸の上にはおけない。
女が男を呼ぶ城と男が女を呼ぶ城で矛盾する
白夜と降雪が両立する地理環境が現実にない
一方で、『エルの肖像』の廃屋が氷の城の成れの果てである可能性は残される。
ただ前述の通り、そもそも氷の城がなぜか2種類あるように見えるため、結局よくわからない。
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
𝕏(旧twitter):@lizrhythmliz
更新履歴
2023/3/30
初稿
2023/4/22
微修正、サムネイル変更
2023/4/25
微修正
2024/02/23
大幅に改定
2024/04/25
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記