【SH考察:116】地名・国名から現実との乖離度合を測れそう
Sound Horizonの楽曲にはさまざまな地名が登場する。現実と全く同じ地名の場合もあれば、よく似ているが架空の場合もある。
中には一つの国の中で実在の地名と架空の地名が混在している場合もある。
この地名はどのように決まっているのだろうか?法則性を確かめたい。
対象
Sound Horizonの楽曲すべて
考察
国名が異なる場合の傾向
曲中に登場する国名の中にはいくつか現実と同じものと異なるものがある。
中には同じような国を指しているにもかかわらず、地平線によって呼び名が異なって見える場合もある。
イギリスを例にとるとわかりやすい。
Chronicle 2ndではイギリス(イングランド王国)と思しき国が「ブリタニア王国」と呼ばれていた。また絵馬に願ひを!でも「ブリタニア連合王国」という国が登場した。
一方で、ハロウィンと夜の物語のナレーションでは「Britannia」ではなく「Britain」、それからMoiraの隠しページでも「英国」という、いずれも現実と同じ呼び方が使われている。
前者、つまり現実と異なる国名を使っている方を見ると、国の成立過程からして現実とは異なっていることが特徴に見える。
クロセカはわかりやすいだろう。中世ヨーロッパでは現ドイツも現イタリアもまだ一つの国家ではなかったが、クロセカの世界ではそれぞれプロイツェンとイターニアという一つの国になっている。
絵馬に願ひを!では神だったはずの存在が人間であるあたりからして、大昔から歴史が変わっていそうだ。
地名が異なる場合の傾向
地名には3つのパターンが確認できる。
国名は現実と異なるが、地名は現実と同じ
国名も地名も現実と同じ
国名も地名も現実と異なる
1. 国名は現実と異なるが、地名は現実と同じ
これまたわかりやすいため、国名の時に例を挙げたイギリスを再び例に挙げよう。
クロセカのブリタニア王国は、国名こそ現実と異なるが、登場するブリタニア国内の地名はすべてイギリス国内の地名と一致する。
ここに登場するカンタベリー、ドーヴァー、グラスミア、ホワイトヘブン、ランカスターはすべて実在する地名だ。地理関係からしても違和感がない。
2. 国名も地名も現実と同じ
国名も地名も一致するパターンは、ハロウィンと夜の物語がわかりやすい。「アメリカ」と「サンフランシスコ」がはっきり登場する。
ハロウィンと夜の物語は、全体的に現実のアメリカの歴史と非常に近似していることがわかっている。
このことから、地理関係や都市の成り立ちレベルでは現実と照らし合わせても違和感がない場合、地名はそのまま使っているように見える。
3. 国名も地名も現実と異なる
これもクロセカと絵馬に願ひを!を例に挙げやすい。
クロセカではフランドルのの都市ヴェルセーヌとイターニアの各都市名、絵馬に願ひを!は登場する全ての地名が架空だ。
(絵馬に願ひを!は登場する地名が多すぎるため別記事参照)
クロセカの場合、ヴェルセーヌは現実のヴェルサイユだろう。
これまた以前別記事にまとめたが、時系列を考えると中世当時ヴェルサイユには宮殿がない。都市レベルで見ても現実との乖離が大きいため、架空の地名にしたのではないだろうか。
イターニアも同様で、現実では聖地ではない場所が聖都扱いだったりと乖離が大きい。
これらのことから、やはり現実と乖離すると地名も現実とは異なる傾向にあるとみて良いだろう。
ノアとルキアはいつ生きた?
ここでふと気になったことがある。
ここまでの地名の傾向から、現実に近い歴史を持つ場合は地名も同じ地名になりやすく、乖離が進むほど地名も異なるものになりやすいと見て取れる。
つまり全ての地平線は同じ世界観ではなく、並行世界として存在するいわゆるマルチバースであるとみなした方が良さそうだ。
問題は、ナンバリングは異なる地平線であっても繋がっている地平線があるのかどうかだ。
より具体的に言うと、クロセカと絵馬に願ひを!は繋がっているのだろうか?
現実のかつてのイングランド王国が現代ではイギリス(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)の一部であるように、ブリタニア王国がブリタニア連合王国になったのだろうか。
その場合、ノアが言う「終焉の洪水」はまだ起きていないのではないだろうか?
もしChronicle 2ndと絵馬に願ひを!が地続きなのであれば、ノアとルキアはまだ生きている、もしくは未来に存在する人物の可能性が出てくる。
結論
国でも都市でも、地名が現実と同じなのであれば、現実と近い成立過程を経ているのだろう。逆に架空の国や都市名の場合は、現実との乖離が大きいと考えられる。
マーベルが好きでマルチバースの概念に理解がある人であればイメージを掴みやすいかもしれない。
ピーター・パーカーがスパイダーマンをやっている世界だけでも複数存在し(映画もピーター役がトビー・マグワイア版、アンドリュー・ガーフィールド版、トム・ホランド版で少なくとも3つの世界が存在している)、ピーターではない人間がスパイダーマンの世界すら存在する。
これと同じで、イギリスが我々の現実世界の極めて近い世界もあれば、ブリタニアと呼ばれる世界もどこかにあるのかもしれない。
ところで、直近一番の話題といえばハロウィンと朝の物語だろう。先行配信として『Halloween ジャパネスク '24』が配信されたが、歌詞からしてどう考えても現代日本に限りなく近い。
これまであった地平線のなかで、現代を生きる我々の日常とここまで重なる地平線はなかった。
この記事を書いている2024/11/8時点ではまだハロウィンと朝の物語の全容は明らかにされていない。
この地平線はどのような物語が繰り広げられるのだろうか?
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
𝕏(旧twitter):@lizrhythmliz
更新履歴
2024/11/09 初稿
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