【SH考察:013】プロイツェンはドイツに近いがプロイセンからは遠い
Sound Horizonの作中には、ドイツっぽい地名がいくつか登場する。
そしてドイツそのものを指していそうな「プロイツェン」はかつて存在した国「プロイセン」を連想させる。
しかし実はプロイセンそのものは、現ドイツと支配領域が異なる。
その矛盾を皮切りに、「プロイツェン」が単一の王を仰ぐ国なのか、各地名を整理しながら「プロイツェン」の支配領域と、国家形態を検証する。
対象
1st Story Renewal Chronicle2nd より『聖戦と死神 第1部「銀色の死神」~戦場を駈ける者~』
Prologue Maxi イドへ至る森へ至るイド より『彼女が魔女になった理由』
7th Story Märchen より『磔刑の聖女』
考察
ドイツっぽい地名
サンホラの世界に登場する、現実のドイツやドイツ国内の地名に相当する地名は下記。
プロイツェン
オッフェンブルク
テューリンゲン
ザクセン
ライン
このうち、プロイツェンとオッフェンブルグは「プロイツェン領オッフェンブルグ」と使われていることから、オッフェンブルグは地名、プロイツェンはオッフェンブルグを内包するより大きい単位(州や国など)を指していることがわかる。
現実との比較
プロイツェン(Preuzehn)
現実でのプロイセン(Preußen)を連想させるが、実はプロイセンそのものととらえると違和感がある。
というのも、現実のプロイセンは現ドイツの北側(というかほぼポーランド)で、海に面しているが、サンホラの世界で「Preuzehn領Offenburg」とされるオッフェンブルクは、現ドイツの南にあるのだ。
そのため、プロイセン王国そのものというよりも、現ドイツの範囲全体を「プロイツェン」に置き換えているととらえたほうが良さそうだ。
テューリンゲン
テレーゼやメルツが移住した森のある地名。現実でも実際に「テューリンゲンの森」がある。
現ドイツの中央に位置し、ザクセン州が東隣にある。
テューリンゲン方伯(テューリンゲン地域を治める称号)は、ルードウィング家断絶後ヴェッティン家が継承。
ヴェッティン家はザクセン公になり、選帝侯になる。要するにテューリンゲンはザクセン公ヴェッティン家の支配領域下にあるため、エリーザベトとメルツが出会うのは位置関係的に違和感がない。
ザクセン
エリーザベトを生み出したヴェッティン家はザクセン公。要するにザクセンという地を収めている貴族諸侯だ。
「ザクセン」という地名が指していた範囲は、実は時代によってかなり変遷している。
現在ではドイツ東側だが、1200年頃までの「ザクセン公国」はもっと北側、海に面していた。
それが崩壊したのち「ザクセン選帝侯領」が成立。これがドイツの東側、今に近い範囲だ。(この後ザクセン王国となり、ドイツ連邦に含まれ、今のザクセン州に落ち着く)
そのため、Märchenに出てくる、ヴェッティン家が治めるザクセン領は、今のザクセン州とほぼ同じ領域ととらえて相違ないだろう。
ライン
エリーザベトに求婚してきたラインプファルツ(ライン宮中伯)。
これはライン(ラインラント)という、ドイツの西側ライン川に沿った地域を治めていた貴族諸侯という意味だ。
ザクセンが東側だから、もじライン宮中伯とザクセン公ヴェッティン家が婚姻関係を結んでいた場合、東西にまたがる一大勢力なった可能性がある。
プロイツェンは単一国家か
本題である。
サンホラの世界の「プロイツェン」は単一国家、つまり主権が単一なのか。
ちなみに対極にある国家形態は帝国や連邦である。
簡単に言うと、帝国とは小国の集まり。連邦は州の集まりで、主権をもつ小さい単位の集まりということだ。
「プロイツェン」がどちらなのかというと、明らかに帝国だろう。
例えば、ザクセン選帝侯妃ゾフィ、エリーザベトの母親が口走ったセリフ。
明確に「帝国」と口走っている。
これはザクセンが帝国の一部であることを意味していると思われる。
また、「ザクセン公」「ライン宮中伯」がおり、現実の史実における神聖ローマ帝国の形態に近いととらえることができる。
結論
これまでの話から「プロイツェン」はおおよそ現ドイツの範囲全体を指す言葉であること、そしてその国家形態は、現実の神聖ローマ帝国のような小国が集まった帝国を指すのだろうと推測できる。
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
更新履歴
2023/04/22
初稿
2023/05/02
歌詞引用元表記修正
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