【SH考察:104】エレフとミーシャの身分は紫のせいでバレバレだった説
Sound HorizonのMoiraで数奇な運命を辿る双子、エレフセウスとアルテミシア。二人は幼い頃から紫色のマントのような布を身にまとっている。
彼らに紫を印象付けているキャラクターデザインには、彼らの持つ特殊能力のほかに、史実からわかる紫の価値観も影響しているかもしれない。
今回は古代ギリシャにおける紫色の価値観について、エレフとミーシャと照らし合わせながら考えてみた。
対象
6th Story Moira
考察
キャラクターデザインとしての「シ」
エレフセウスとアルテミシアは明らかに意図的に紫色を取り入れたキャラクターデザインがなされている。一時期パナップと言われていたあの髪色しかり、マント(ヒマティオン)の色しかり。
これは紫=「し」=死というSound Horizonの世界で浸透している価値観の踏襲だろう。特にエレフはその]瞳について「シヲ抱ク瞳」と意図的に「紫」とも「死」とも読めるような表現がなされている。
あの瞳は作中人物の価値観でも特徴的だったのだろう。
イサドラがエレフの瞳の色をわざわざ口に出していることから、彼が成長してもすぐに我が子と判別する手段としてわかりやすい特徴だったということが推測できる。
現実的に考えてしまうと、そもそもあのヘアカラーは染めない限りあり得ないだろうし、瞳の紫も非常に珍しい。キャラクターデザインとして設定されたものとして受け入れさえすればそれまでの話だ。
そのため、これ以上紫のデザインについて追及するのは非常に無粋な話かもしれない。
ただ少なくとも史実に照らし合わせると、紫色の衣服はまず間違いなく一般庶民が着られる代物ではなかった。
高貴な紫
古代では紫の染料や、紫に染められた布地は大変高価なもので、高貴な色とされた。
染料の材料である巻貝を大量に採取したり(僅か1gの染料を得るために9,000匹の貝を要したとされる)、絞ったりなどの手間がかかること、後年になると乱獲のために貝が減少し、そもそも採取の時点で難易度が上がり稀少性が高まったことが原因だ。
つまり、紫一色に染まった大判の布を身にまとっているエレフは、奴隷身分ながら身分の高い人を想起させる色を全面的に押し出して、異民族や奴隷を率いてギリシャに襲い掛かってきているということになる。
受けて立つ側とすれば余計に脅威に感じたかもしれない。
同じくミーシャも大変高貴で神秘的な巫女に見えただろう。
しかも、エレフもミーシャも幼少期から既に紫を身につけていたため、もしこの価値観を作中に持ち込むならば、山奥でひっそり生活しているが実は高貴な身分というのがバレバレになる。
(子を捨てざるを得なかったアルカディア王デメトリウスと王妃イサドラが、せめてもの親子の繋がりとして紫の衣服を贈ったとしたら、物語としてはアツい展開ではある)
結論
紫はSound Horizonの世界観では死と関連付けられやすく、死を影として視認できるエレフ、自身の死の運命すら啓示として受け取れるミーシャの色としては納得感がある。
また、染料の価値が史実通りだった場合、エレフとミーシャが身につけていた紫色の衣服は非常に高価で、彼らが本来高貴な身分であったことを表す。
二人は忌子とされひっそり育てられ、不運に見舞われ奴隷になってしまったが、本来はアルカディア王家の子。その出自の高貴さを示すアイコンとしても紫色は最適と考えることができる。
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マスコット画像:
「Sound Horizon」×「カラコレ」ミニフィギュア(筆者所有)
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
𝕏(旧twitter):@lizrhythmliz
更新履歴
2024/08/17 初稿
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