
【SH考察:028】宮比と犬彦の《結末に至らない》ルートは同一時系列である説
Sound Horizonの『絵馬に願ひを!』にて、
天野 宮比の右ルート(八石 許理が好きと解釈された場合)
猿田 犬彦の右ルート(スズを安楽死させるべきと解釈された場合)
は、同じ時間軸で起きた出来事と考えられそうだ。今回はそう考察した理由を解説していく。
対象
7.5th or 8.5th Story 絵馬に願ひを!より以下6曲
『恋は果てまで止まらない』
『夜を滑る二人』
『夜を駆ける二人』
『西風のように駆け抜けろッ!』
『死を廻る刻の記憶』
『生という名の罪過』
『夜を駆ける二人』と『生という名の罪過』は左選択ルートだが、時系列的に絵馬を掛ける前の出来事が含まれているため触れる。
考察
これは以前このツイートで軽く触れた件。このnote記事でもう少し詳しく解説していく。
あってるか分からんけど、犬彦○○○○○○○○○と宮比○○○○○○○○○○○は、同一時系列で説明できそうかも。 https://t.co/xhaxySfrzn
— ニンニ リズ⛩ (@lizrhythmliz) June 17, 2023
同時進行している内容もあるため精緻ではないが、概ね時系列順に古い方から新しい方へ出来事を並べた。
【共通】:絵馬掛け及び巫女の解釈による改竄の影響を受けない出来事
【改竄】:絵馬掛け後、改竄の影響を受けた可能性が高い出来事
【共通】狭依が新生SAKURA HiMEの構想を練る
参照:『ある少女の記憶』宗像 狭依ver

まずは、今いるメンバーには辞めてもらいます。
どうやって辞めてもらうか、それは野暮になっちゃうから言わないけど。
さよを、絶対的なセンターとして引き立てる、キャラ被りしないけど、それぞれキャラ立ちする子を入れます。
そして、もっと世界観を追求します。
(中略)
実は、今度LEON MALL主催の大型イベントがあるんだけど、それがなかなかぶっ飛んでて良いのよ!
※書き起こしのため誤差がある可能性あり
今いるメンバーには辞めてもらう
もっと世界観を追求する
これから新制SAKURA🌸HiMEにするにあたり、宗像 狭依はこの2点を明言している。
さらに「今度LEON MALL主催の大型イベントがある」とも言っている。
【共通】夏、宮比・許理・狭依がレオンモールでライブ
参照:『死を廻る刻の記憶』

以下の歌詞で、直前で天野 宮比と八石 許理が「今度のステージ」と表現しているライブの前に既存メンバーが辞め、空いたポストに宮比と許理が収まる形でアイドルになったことがわかる。
つまり、前に触れた狭依の構想通りで、当初は狭依も含めて自分を引き立たせる脇役になると踏んでいたと思われる。
今度の《突然辞めたらしいメンバーの代わりに抜擢された地元の商工会がバックアップしてるアイドルグループが出演するレオンモール主催の大きなイベント》
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
画面下部に流れる用語集でも、2人は新参メンバーとして紹介されている。
【SAKURA🌸HiMe】用語集:(中略)みゃーぴ=新参メンバー【天野 宮比】の愛称、メンバーカラーは同じくピンク。(中略)こりりん=新参メンバー【八石 許理】の愛称、メンバーカラーは安定のピンク。
この時点では許理に異変が見られないことからも、狭依が許理を追い出そうとするのはこの後の話であることが推察できる。
【共通】狭依の差し金で許理が襲われる
参照:『夜を滑る二人』

《会長を務める地元の名士でもあ親の縁故で貸し切った葦原商工会館》に
《熱狂的応援者》を名乗った
《欲望に忠実で下劣な男達》を手引きしたのは誰?
掃除と施錠
《強制を意味する【お願いね♥】を残して》
消えたくせに・・・・・・
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
狭依は許理が気に入らなかったようで、ゲスい手で追い出しを謀る。
まぁ宮比曰く許理は、「《神様のステ振りがバグってる》美少女」だから、狭依が思っていた以上に許理に人気が出て嫉妬した可能性は十分にあり得るだろう。
その結果、宮比が補習で不在の日に《欲望に忠実で下劣な男達》に襲われてしまった。
【共通】許理が襲われた帰り道、犬彦と会う
参照:『夜を駆ける二人』

取り乱した
《傘も差さず酷い顔でふらつく女》を
強く抱きしめて
何も訊かず
《一夜を共にした3歳年上のもう一人の幼馴染み》は
優しい接吻をした・・・・・・
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
許理は婦女暴行被害の後、雨が降る帰り道で猿田 犬彦と遭遇。犬彦は許理に対して優しい接吻をする。
これは『夜を駆ける二人』(宮比の左選択ルート)で語られてはいるが、宮比が絵馬を掛ける前の出来事になるため、改竄の影響を受けない。
よって、許理が好きな相手はもとから犬彦であること、そして犬彦も(多少流された節もあるかもしれないが)気があることがわかる……。
【共通】許理がSAKURA🌸HiME脱退を考え始める
参照:『夜を滑る二人』

自分を襲った男が、狭依の手引きで現れたというのは明確だったため、許理は狭依を恐れ、SAKURA🌸HiMEを辞めようと考え始める。
宮比に対してはアイドル活動に飽きたからと嘘の説明していたようだが、これは宮比が正義感から狭依を問い詰めるなどして報復にあってしまうことを懸念したのだろう。
これ以上は
《常に自分が中心じゃないと気が済まない娘【宗像狭依】》
とは
関わりたくなかったんだ...
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
結果的には狭依の思惑通りの展開に進んでいることになる。
【共通】犬彦が許理のために、実行犯の特定を試みる⇒スズに構えずスズの病状悪化
参照:『死を廻る刻の記憶』『生という名の罪過』

犬彦は復讐のために、許理を襲った実行犯の男を探す。
ただその影響で忙しくなり、スズにロクに構うことができず、結果的に動物病院に連れていく頃にはスズの腎臓病は進行・悪化してしまう。
最近...
ロクに構ってやれてなかったもんな...
赦してくれ... 《最愛の🐈よ》
※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり
『生という名の罪過』は左ルートだが、動物病院に行ったのは絵馬を掛ける前のことなので、「最近ロクに構ったやれてなかった」のは改竄の影響を受ける前の事実なのだろう。
【共通】犬彦がスズを須久奈キャットクリニックへ連れていく
参照:『西風のように駆け抜けろッ!』『死を廻る刻の記憶』

スズの検査待ちの間、看護師の紹介で狼樂神社の話を聞く。
スズの病気平癒を願って絵馬を掛け、解釈による改竄が始まる。
【共通】許理が九重山に向かう
参照:『夜を滑る二人』

宮比に相談しようとするものの、宮比は絵馬を掛けに行くつもりだったため、用事があるからと断られてしまう。
宮比が絵馬を掛ける日、宮比の絵馬の解釈分岐にかかわらず、許理は九重山には行くようだ。
(『夜を駆ける二人』の方を選択した場合でも、許理が九重山にいて、そこで何かが起きている)
この同時刻、宮比が絵馬を掛けていることが2人のNeinの会話で分かる。
この時点で許理が襲われた日から数日?経過していそう。
だが当然ながら心の傷は癒えるわけがない。家にまだ帰りたくないからと、なんとなく九重山広場に来たようだ。
(夜道というか、夜遅くに女子高生が独りで山道にいるほうが危ない気もするが……)
【共通】宮比が許理からの誘いを断り用事を済ませる
参照:『恋は果てまで止まらない』『夜を滑る二人』

許理は宮比に相談しようとしたようだが、宮比は大事な用事のためにその誘いを断る。
Neinの会話から、その用事が絵馬掛けだったことがわかる。そのためここから改竄が始まる。
ここまでが絵馬を掛けるまで、改竄の影響を受ける前までに起きたことだ。
ここからが改竄の影響を受けた、宮比・犬彦の右側ルート特有の出来事になっていく。
【改竄】宮比も九重山に登り、許理に告白
参照:『夜を滑る二人』

許理が九重山広場にいると聞いて、宮比も追いかけて向かう。
そこでローラー滑り台で遊んだあと、宮比は許理に告白する。
ただ、前述の通り許理はもともと犬彦が好きだったはず。
もし改竄の影響が許理自身の恋愛観には及んでいない場合、宮比の恋愛は成就しないことになる……。
また、スワタケはそんなこと関係なく『夜を駆ける二人』のときと同様にバイクをかっ飛ばしているとすると、この頃九重山に向かった可能性がある。
そうすると宮比達と鉢合わせしそうだが、そのあたりの出来事は一切不明。
【改竄】犬彦が実行犯を見つけ、葦原海岸でボコる
参照:『死を廻る刻の記憶』

許理の復讐を果すため、犬彦は葦原海岸で実行犯を《肉体言語を用いた会話によって》情報入手を試みる。つまり傷害事件を起こしてしまう。
ここで終わるかと思ったが、実行犯がスワタケにより派遣されたと吐いたことで、犬彦はBar Elysionにいるスワタケのもとに向かうこととなる。
犬彦が許理自身から聞ける情報としてはおそらく以下の2点のはずで、もともとスワタケの関与は考えていなかったはずだ。
実行犯の男の風貌
狭依が首謀者であること
そのため、実行犯をボコって終わりのはずが、スワタケの情報が出てきたことで、予定外にスワタケに喧嘩を売ることになったと推測している。
【改竄】犬彦がスワタケと喧嘩
参照:『死を廻る刻の記憶』

Bar Elysionにて、犬彦からスワタケに喧嘩を吹っ掛ける。
しかしスワタケの様子から、スワタケは許理の件に関与していなさそうであることを察する。
つまり実行犯はガセネタを吐いたことになる。
【改竄】スズの死
参照:『死を廻る刻の記憶』

どうも記憶の分裂が起きているのか、描写に違和感がある。
病院で注射を打たれ死亡したのか、はたまた縁側で静かに息を引き取ったのか……、ともかく、スズは亡くなってしまった。
結論
ここまでの流れをまとめると、結末としては以下のようになる。
宮比の恋愛は成就しない
それにより宮比と許理はギクシャクしそう
犬彦によるスズの病気平癒祈願は叶わない
犬彦は傷害事件の影響で凪丘を去る
それにより犬彦と許理・宮比は離れ離れになる
そしてそもそも絵馬に関係なく許理は男性から被害を受けてしまう
と、幼馴染三人組は誰も幸せになっていない……。
宮比と犬彦の右側選択肢が同一時系列でも違和感がないが、どちらも《結末に至る》選択肢ではないことから、幸せになるエンディングを迎えられないことを示唆していたのかもしれない。
にしても救いがなさすぎる……。
―――
キャラクターアイコン:
さざれ様(𝕏アカウント @sazozo0)
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
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更新履歴
2023/06/17
初稿
2023/06/28
微修正
2024/04/24
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記