ひらいてについて、急いで書いた

2021年11月23日 映画「ひらいて」

思量の余地があって、でも決して全てを紐解くことが重要ではない作品、やっぱりめちゃくちゃすきだなあと。

この映画も「わからない」がひとつの正解と言える作品だと思った。人間、まして高校生の感情や行動に一本の筋などあるはずがなく、誰しもアンバランスと矛盾に塗れているのが当たり前で、それは時に本人すら置いていくほどのものだから。

そういう意味で愛は1番人間的で、私はとても受け入れやすかった。彼女に抱いた感情は、言葉を選ばず言うなら親近感。

無気力で意欲のない態度を見せるのに文化祭実行委員に立候補し、真面目に準備に取り組んでいる。やんちゃな遊びもするけど家では真面目に勉強する。計算高く、何でも自分のものにできると思っている自信家なのに、縋るような態度を見せたりもする(これはたとえへの激情が愛を変えたとも取れるけど)。たとえの父親を殴るシーンにも、アンビバレンスが如実にあらわれていたように思う。そして極め付けに、嫌いなはずの美雪に執着する(この点はもう少しよく考えたいけど終始一貫して、愛の美雪に対する感情は彼女の中で醜い嫉妬にも好意的な羨望にも形を変え得るという印象を受けた)。

一方で、たとえや美雪も決して出来た人間というわけではなくて、美雪にだってエゴが見えたし、たとえも人や物事を鋭く見抜いているようで愛や美雪の全てを見てはいなかった。彼らにも未成熟な部分があり、誰もが矛盾した多面性を持ち合わせているからこそ正義と悪のような構図にならず成立している。理想でもデフォルメでもなく、リアルをみせられた。リアルが映し出せる脆さが、儚く魅力的だった。

原作を読んでからもう一度鑑賞したら、またきっと新たなものが見えてくるんだろうなと思う。
なので取り急ぎ原作を読みます。



最後に1番好きなシーンの話。
セリフはうろ覚えだけど、愛がたとえに勉強を教えてもらうとき、テストの最後から2問目を必ず引っ掛け問題にする先生を「性格悪い」と言った愛にたとえが「本当は悪くないように思う」的な言葉を返すシーン、とても印象的で、秀逸だった。2人の相容れない物の受け取り方が露わになった上に、相手の言ったことがイマイチわからなくて取り敢えず愛想笑いで誤魔化す感じが好きな人に対する態度として相当リアルで。私はこの愛想笑いで、2人が今後結ばれることが絶対的にないことを悟らされたんだよな。

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