モミの木の下で

蒼太(そうた)♂
茜(あかね)♀

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蒼「あれからもう4年かぁ…懐かしいなぁ…」

俺たちの街には大きなもみの木がある。
毎年クリスマスの時期になると飾り付けられ、恋人達の待ち合わせやデートスポットになったりしていた。

蒼「一応あの時俺たちもここ、来れるはず…だったんだよな…」

当時好きだった子と俺は幸いにもここに来るチャンスを得た。
俺はそこでビシッと告白してキメる予定だったのに…

蒼「まさかあそこで引越しが早まるなんてなぁ…」

彼女は年が明けて引っ越す予定だった。
それがいきなり早まり、約束の日にはもう引っ越してしまっていた。

蒼「もしあの時告白出来てたら…何か変わってたのかなぁ…?」

あれから俺はずっと彼女の事を忘れられずにいた。
伝えられなかった言葉…届かなかった想い…
それは色褪せる事なく俺の中に居座り続けた。

蒼「…って、本当何やってんだろ…俺…」

モミの木を見上げながらため息交じりに呟いた。

茜「蒼太…?」

蒼「…!??茜!???え!??な、な、な、なんでここに!??」

茜「…久しぶり…だね…」

蒼「あ、ああ…久しぶり…だな…」

茜「…4年ぶり…くらいかな?…元気だった?」

蒼「あ、ああ…茜は?」

茜「うん…まぁ…そうだね…」

蒼「そうだねってなんだよ?…何か病気でもしたのか?」

茜「ううん!そうじゃないの!…そうじゃ…なくて…」

蒼「…?」

茜「病気とかはしてないよ。うん…ただ…」

蒼「…ただ?」

茜「ただ………あの時の事…ずっと…気になってて…」

蒼「…あの時?」

茜「うん…4年前…約束してたのにさ…ここ、来れなくて…本当ごめんね…」

蒼「いやでもあれはしょうがないじゃん!?茜の意思じゃなかったって言うかさ?いや実は来たくなかったって言うなら話は別だけど…」

茜「そんな事っ…そんな事ある訳…っ」

蒼「いいんだよ。俺も茜の立場だったら来れなかっただろうし…茜がどうこう出来る事じゃなかったんだしさ?」

茜「それはそう…だけど…あの時の私にはどうにも出来なかったけど…でも本当はここに来たかった!蒼太と一緒にここに来たかった!!…ずっと心残りだったの…ずっとずっと…」

蒼「…茜……」

茜「後悔しかなかった…クリスマスが来る度『どうしてあの時親に歯向かってでも行かなかったのか』って…ずっとずっと苦しかったの…」

蒼「…。」

茜「結局そんな想いを断ち切れないまま大学を卒業して、あの時の想いを伝えるために親の反対を押し切ってこの街に帰ってきたの。今こうしてあなたにもう一度会うために…。」

蒼「…茜…そう…だったのか………実は、さ…俺毎年来てたんだ…ここ…」

茜「…え?」

蒼「俺もさ、あの日茜に会えなかった事ずっと忘れられなくてさ…もしかしたら茜に会えるんじゃないかって…気づいたら足を運んでた。」

茜「…蒼太」

蒼「もし茜に会えたら、あの日言えなかった事ちゃんと伝えようと思って…」

茜「…?」

蒼「…俺はあの時から…いや、もっとずっと前から茜の事が好きだ。好きで好きでずっと忘れられなかった。」

茜「…っ」

蒼「…大分遅くなっちゃったけど、あの時に言えなかった事、言わせてください。」

茜「…。」

蒼「茜…好きです。俺の彼女になってください。」

茜「…っはい!」

茜「実はさ…蒼太が毎年ここに来てる事は知ってたんだよね…」

蒼「ええ!??な、なんで!??」

茜「みゆきって覚えてる?この近くに住んでる同じクラスだった子…今でもたまにやり取りしてるんだけど…で、みゆきがさ、毎年クリスマスに蒼太をここで見かけるって言っててさ…」

蒼「…。」

茜「だからきっとここに来たら蒼太に会えるって思ってた…」

蒼「…そっか…」

茜「でも本当会えて良かった。」

蒼「ああ、そうだな。みゆきに感謝しなきゃだな。」

茜「ふふ、きっとみゆきだったらフランス料理のフルコースご馳走しなさいとか言いそう…」

蒼「ああ…確かに…(笑いながら)」

茜「ね。(笑いながら)あ、そういやみゆき超綺麗になったらしいよ?」

蒼「マジ!?」

茜「…あ…なんか今目輝いてなかった?…浮気したら許さないからね…」

蒼「は!?何言ってんの!?茜様のが輝いてますよ!」

茜「ぷ…何それ。」

蒼「俺は、世界中の誰よりも茜の事愛していますから」

茜「…ば、バカ…」


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ラジオのクリスマス企画で使用する為に書いた台本です。声劇、掛け合い(録音公開)等、ご自由の使って頂いて構いませんが、営利目的での使用は禁止させて頂きます。アドリブ、語尾改変等内容が激変してしまわない程度にならご自由にどうぞ。

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