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彼岸花と猫と

ウィキペディア(Wikipedia)によれば
彼岸花は
曼珠沙華
死人花
地獄花
幽霊花
蛇花
剃刀花
狐花
捨子花
はっかけばばあ
など様々な名を持つらしい

名前が多いのは恐らく
その不思議さにあるのだろうが
彼岸花の不思議さは
あの紅さと
あの茎に花がにょきっと立った姿と
一瞬の生命の燃焼のように
姿を消すことにある

ひとは地上に現れることを
「萌ゆ」と言い
地上から消えることを
「枯る」と言うが
そうではないような気が
何となく僕はしてならない


蝉は地中で何年もの間を過ごし
地上に出て来て数週間
その喜びを謳歌するように鳴くと言うが
蝉は死ぬために地上にやって来るのではないか

地上は蝉にとって死の世界であって
蝉の鳴き声は
死を目前にした悲しい叫びではないか

そう授業で言ったところ
生徒はきょとんとした顔をしていた


彼岸花が燃えるように咲く秋の朝
拾って17年一緒にいる猫と散歩しながら
生きるゆえに
命という死んでゆくまでの束の時間が
与えられていることの不思議について
考えてみたのである

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