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公認会計士試験はここが辛い

自己紹介

はじめまして。
この度、令和6年公認会計士試験に合格しました、そらうみです。

公認会計士の勉強をしている最中、合格したらこの体験を文字で書いておきたいなーと考えていましたので、この度、筆を執ることにしました。

とはいえ、単なる体験記なんかを書いてもつまらないと思います。
そこで、この記事では

公認会計士という試験が
いかに難しく、
理不尽で、
心が折られるものなのか

を語ろうと思います。
ええ、要は愚痴です。

合格したんだから負け犬の遠吠えではないし、これくらいは言わせてくれって感じですね。
決して、俺SUGEEEEEEEEEEEをしたいわけではなく、同じ勉強を行った同士が「そうそう、そうなんだよ!」と思って頂ければ幸いです。


範囲が広い、広すぎる…!

公認会計士試験の試験は

  1. 短答式試験(マークシート式、年に2回、12月と5月に実施)

  2. 論文式試験(記述式、短答式試験合格者向け、年に1回、8月に実施)

の2つに合格することが求められます。
内容は被っていることも多いのですが、解答の仕方や勉強方法は大幅に異なります。

短答式試験の科目は以下の4つ

  1. 財務会計

  2. 管理会計

  3. 企業法(会社法、商法、金商法)

  4. 監査論

ちなみにテキストの量はこんな感じ

短答科目テキスト
財務会計理論テキストの1ページ
会社法テキストの1ページ

ほぼ全ページがこの密度です。
あ、問題集や演習などはこの画像とは別に存在します。

正気か???

もちろん、これに計算問題も加わります。

冗談ではなく、全てのページから出題可能性があります。
更に、これでもまだ掲載されていない内容が出題されることも普通にあります。

最初にテキストを全て手にしたときは、

「無理だろ…」

と呟いたものです。

そして、論文式試験になると、新たに

  • 経営学(選択科目)

  • 租税法(法人税、所得税、消費税)

が受験科目に追加されます。
論文試験用に加わるテキストがこちら

論文式試験追加テキスト
倍増してる…

経営学と租税法については、短答式試験対策では勉強しないため、また1から学び始めることになります。
もちろん、短答式で受験した4科目の勉強も欠かせません。
というより、理論問題については短答と論文では、難易度が桁違いです。

「短答さえ受かってしまえば、論文は意外と楽」

なんて文章を目にしたことがある方も多いかもしれませんが、
全くの出鱈目です。

短答式試験のボーダー

上述しましたが、短答式試験はマークシート方式です。
大学受験を経験された方は、大学入学共通テスト(センター試験)をイメージして頂くと良いでしょう。

それだけ聞くと、ちゃんと勉強すればまぁ行けると思われるかもしれません。
ですが、令和6年の短答式試験の合格ボーダーは

12月:75%
5月:78%

でした。

8割近い点数を叩き出さないと、合格しません

別の言い方をすれば、ちょっとしたミスも許されない試験と言っていいでしょう。

私は12月、自己採点で78%だったのですが、蓋を開けてみるとそこまで余裕のない結果に滅茶苦茶焦った記憶があります。
何故なら、論文式試験はこの高いボーダーをくぐり抜けた連中と競争することになるからです。

ネットを見てみると「国家資格試験難易度ランキング」なんてものが掲載されていたりしますが、意外と会計士試験はTOP3に入っていません。

ですが、断言できます。
受験層、ボーダーライン、試験範囲が全く比較にならんのだが???

管理会計という科目の厄介さ

上記した科目の中で、間違いなく一番厄介なのは管理会計という科目です。
管理会計を詳しく説明することは避けますが、要は

「会社(組織)が作ったモノやサービスに、どのくらいお金がかかったのかを計算するもの」

と捉えて下さい。

(例)
A材料を50kgつかって、Bさんが10時間かけて100個作り、今年はその内80個売れた。

このようなケースでは、Aの仕入れにいくらかかったのか、Bさんの人件費はいくらなのか、売れ残った商品をどのように評価するかなどを検討する必要があります。

実際の問題では、細かいデータが大量に与えられるのですが、会計士試験で用いることのできる道具は電卓のみです。
そして、Excelで計算しても、データ整理から関数作成までに15分はかかるでしょって問題を、2,3分で解くことが求められる問題設計にされています。

は?????

マジで訳が分かりません。
会計士って、暗算スピードが求められる職業なんでしょうか?

予備校の先生ですら、全問解き切ることは不可能とのこと

問題設計からして、この科目は破綻しています。

計算科目のふりをした法律科目

租税法という科目が、論文試験から追加されることは上記した通りです。
昨今、日本をにぎわせている103万円の壁も、この科目で勉強します。

この科目の特徴は3つ

  1. 論文からの追加科目なのに、ボリュームは財務会計並み

  2. 判定基準が多すぎ、細かすぎ

  3. 理論的裏付けが出来ない

厄介なのが3で、法律なので一応の理論はあるのですが、ハッキリと基準に示されているわけではありません
そのため、実際に計算に臨む際には丸暗記せざるを得ないのです。

また、管理会計ほどではありませんが、時間的猶予もありません。
というか、皆さん考えてみて下さい。

税金の計算なんて手計算でやろうとする方が無理がありませんか!?!?

唯一の救いは、理論問題がそれほど難解ではないという点でしょうか。
まぁ、やはり法律科目なので、全く知らないドマイナー論点が持ち出されると、お手上げになるんですけどね!!

論文式試験の採点方法

論文式試験の採点方法は、短答式試験と大きく異なります。
合格するには、偏差値で52前後以上を取る必要があります。

論文式試験では、全ての問題が記述式となっております。
そのため、計算問題ではただ1つの正解が存在するのですが、理論問題については絶対的な正解というものが存在しません。

なので、日ごろの理論の勉強をしていても、暗記した文章を解答して満点がもらえる保証はどこにもありません。

一方で、予備校などで演習や模擬試験の模範解答は、テキストに記載された表現から外れれば外れるほど、点数が低くなるように採点されます。

演習と同じ問題が本試験で出ても、点数が大幅に変わることはザラです

じゃあどうすりゃええねん!!!!

ちなみに私は、演習後によく講師と討論していました。

私「ここの問題、この解答ではダメなんですか?」

先生「ダメじゃない…けど、基準だとこうなってるからなぁ」

私「え、でも別の基準の考え方だと、こういう風になってませんか?」

先生「そうなんだよなぁ…俺も、予備校の模範解答好きじゃないんだよなぁ」

私「えぇ…

求められる長時間学習

上述の通り、会計士試験では求められる知識量が半端でないだけではありません。
大量のデータを与えられ、それらを瞬時に整理し、手計算で複雑な計算を実施し、最後に求めた数値を集計する必要があります。

暗記だけでも、計算だけでも点数を取ることは出来ません。
日々の勉強では、大量のインプット共に、質の高いアウトプットが求められるのです。

…そこまでの暗記と計算能力要る???

こうした背景から、会計士試験合格までの平均勉強時間は約3000時間と言われます。
ですが、余りあてにしない方が良いでしょう。

勉強時間を計測する暇があるなら、勉強した方が良いです。
そのくらい、時間は全く足りません。

もちろん、1年弱で論文合格まで辿り着く方も中にはいらっしゃいます。
ですが一方で、大学4年間勉強してて、まだ合格しない方も沢山いらっしゃるのです。

凄まじい結果を叩き出す人がいる裏には、その何倍もの人数が挫折を味わっています

特段、その方たちもさぼっているわけではありません。
ですが、令和6年の論文合格率は7.4%(最終合格者数/願書提出者数)です。

何度も言いますが、会計士試験は受験層のレベルは相当です。
医者や弁護士に比べると…なんて言われることもありますが、これら2つはそもそも受験資格が要求されているため、少し事情が異なります。

法令、基準等は日本語として意味不明

理論問題については、多くの場合が各種法令、基準等から出題されます。

例を挙げましょう。

会社法についてです。
現行の日本では、取締役の報酬は原則として株主総会にて決定されますが、この決定を取締役会へ委任することが可能とされています(判例)。
この知識を前提に、

「取締役の報酬は株主総会にて定める、○か×か」

という問題を、皆様ならどう答えるでしょうか?






…正解は○です。

「取締役会へ委任することが可能では!?!?」
と、私は叫びたくなりました。

ですが、「取締役の報酬は株主総会にて定める」という文章が会社法361条1項として規定されているため、この問題は○となります。

頭おかしいんか???

未だに私はこの考え方に馴染めません。

解答時間だけはたっぷりありますが、英語と同じく、日本語とは別の言語として勉強する必要があります。

もう一度言いますが、頭おかしいんか???

また、監査基準等については、海外基準をそのまま直訳したものが多く、またその内容も非常に抽象的です。

原文のちょっとした用語を少し変化させ、間違いを指摘させる問題もありますが、原文を丸暗記できるわけないんですよ。
というか、原文丸暗記が必要とされる状況ってなんなんですかね???

これら法文や基準等は、可読性をひたすら無視されたもので、なんか問題が発生した時に

「ほら、ここに(一応)書いてあるでしょ?」

と責任を問われる場面で活用されます。

要は、理解・実施・活用することは二の次の設計ですね。

これを暗記しろと???
本気で言ってます???

最後に

愚痴については以上になります。
私は理系出身・社会人経験持ちであり、紆余曲折あって、簿記のボの字も知らない状態から勉強を始めました。

合格までに3年かかりましたが、勉強をするにあたって協力・応援して頂いた家族や友人、知人には本当に感謝しています。

今まさに公認会計士試験に挑むべく勉強されている方については、その難易度の高さと理不尽さ、辛さは十分に理解できるつもりです。

結局、最後まで暗記・計算・運ゲーと、ストレスマッハな時間を過ごすことになると思います。
この記事も、当時の憤怒を思い返しながら書き殴り、その怨をここで成仏させようと思って筆を執った次第です。

皆さま、なにとぞくじけることなく、試験勉強に励んで下さい。
今抱えられている鬱憤やストレス、理不尽などは、将来私のようにこうした形で晴らすことをモチベーションにしてみるのも良いと思います。

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