龍の声を想像してみたことで仲良しになれた話
エッセイ「私の中の龍」のその後~金龍「黄陽」のこと~
白龍の「弧龍」とは彼が小さいころから一緒だったこともあって、なんとなくキャラがわかって、存在がつかみやすい。だから彼のことは扱いやすい。話しかけたりするときのスタンスというか、そういった感覚が私の中でしっかりとある。
その一方で金龍の「黄陽」はどういう感じで話しかけたり、どんな話をしたりしたら良いのかがつかめないでいた。身体の色は金色で、私が生まれたときから一緒だった。でもそれを知ったのは最近だし、私としては紹介されて初めて会った人という感じがする。しかも、つかみどころのない人といった感じで、いまいちどんな人、もとい龍かわからない。馴染めない感じがずっとしている。
それでも性格とか様子をつかもうとするのだけれど、つかめない。ただ、時々まつ毛を長くしてパチパチさせて見せることが何回かあった。可愛らしい感じで、ちょっと女の子っぽい感じもした。弧龍に比べて、柔らかいとか優しい感じということだろうか。そのくらいの印象でしかなかった。
ある時、私の心の中に住んでいる飼い犬の「くぃ」と話をしていて気づいた。
「くぃとはよくおしゃべりするけれど、弧龍や黄陽とはあまりおしゃべりしないよね」
そう、犬のくぃとはよくしゃべる。といっても「今日はちょっと寒いね」とか「お腹空いたね」とかなんでもない話だけど、でもよくコミュニケーションをとっている。
弧龍と黄陽はしゃべる代わりに、動きとか顔の表情とかで伝えてくることが多い。だから何を言いたいのかそこから自分で考えるしかない。
その違いをこれまではあまり気にしていなかった。けれど、ふと先日そう思ったのだった。彼と彼らの私とのコミュニケーションの取り方が違うのだ。その原因は何なのだろう……。
それからしばらくしたある日、今までなぜ想像してみなかったのだろうということを想像してみることを思いついた。時々まつ毛を伸ばして目をパチパチさせてくる、あの「黄陽の声」ってどんな声なのだろう。思い返してみたら、くぃも生前は「ワンワン」としか言えなかったから、人間みたいにしゃべったとしたらどんな声でしゃべるんだろうと想像してみていたのだった。ちょっとしゃがれた感じの可愛い声。「へぇー。そんな声なんだ」って思って以来、くぃはその声でいつもおしゃべりしてくれている。
それで「黄陽」の声も想像してみることにした。
そしたらなんと、女性の声だった。アナウンサーとまではいかないけれど、キレイな声だった。高いキンキン声ではなく、程良い高さの落ち着いた声。でも話し方は、若くて明るい。
「あぁ、女の子だったの」
私がそう言った瞬間、黄陽の輪郭がはっきりしたような気がした。色もはっきりした。今まではなんだかぼんやりしていて、イメージの中ではっきり見えていなかった中から姿を現した感じだった。「ふふふ、そうなのよ」と黄楊はその声で言った。
龍に雄雌があるのかはわからない。あるという人もいれば、無いという人もいる。ただ龍もエネルギー体のひとつと考えると龍に限らず、なんとなく男性っぽい感じがする、女性っぽい感じがするといった感覚がある。
けれど、犬のくぃは生前はオスだったし、弧龍は見た感じが完全におじさんだ。だから勝手に黄楊も男の子だろうと思い込んでいた。そこがそもそも違っていると黄陽は伝えたかったようだ。初めて弧龍のお友達として紹介されたときから、勝手に男の子だと思っていた。それから黄陽が生まれたときから一緒にいる龍であることがわかって、それでも男の子だと思い続けていた。だからそれ以降、黄陽は時々目をパチパチさせて、気づいてアピールをしていたのだ。
それ以降、黄陽は目をパチパチさせてみせることはなくなった。以前よりも生き生きと、自分らしさを出している。そのおかげで黄陽がどんなコなのか少しずつキャラがつかめてきた。大きさもはっきりとして、ちょうど私の胸の前にいることが増えた。黄陽のほうが私よりも女性であることをよくわかっているようで、私に女性らしい感覚を時々伝えてくる。
くぃや弧龍は男性ということで、いつも頼りにしている感じでこれまでやってきた。黄陽とは女同士ということで、また違った形の仲良しになれそうだ。
ちなみに、私の「龍結び」は黄陽が手伝ってくれています。🐉
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