君は希望を作っている #9

 家に帰った沙羽はまだ美味しそうな希望がないかInstagramを検索していた。変なポエムじゃわけわかんない、なんか、美味しそうじゃない。
 簡単に作れたらいいのに。たぶん難しいんだろうなぁ。そんなことを言いながら母に頼まれて麻婆豆腐を作る。それこそ麻婆豆腐みたいにさぁ。
 その日の夜、母に頭の包帯を取って貰って「もういいわね」と沙羽は言われた、水が引いたのだ、沙羽は安堵した。
 今日もきぼうだ。
 参加者の一人が、母親に連れられてきぼうに来ることもしぶしぶだったのだが、「あのキャラの同士がいる」とかでようやく出てきて、みんな拍手した。
 河合は沙羽に小さく「あのね、SNS見たら絵本でイベントでたの?あとで教えて」と耳打ちして逃げていった。自閉症の城田は、wordの画面にかかりきりだ、通る履歴書が書きたいらしい。
 皆も少しずつ前へ、沙羽はエディタを立ち上げた。
佐藤が沙羽にとりあえずアルバイトを薦めた。
「そりゃぁアルバイトだからって年金とか社会保険に入れないのだけじゃないけど……」
沙羽は躊躇する、そしてHP構築へ。
 自作のサイトには当然自作しか載せない、沙羽はもともとそんなに創作歴も長くはなくて、だから作風も純文学だったりなろう系だったりあっちやったりこっちやったり凸凹していたけれど、仕方ない、いろんな作家の先輩たちに行こうとした道の先を越されて、そのたびに違う路線を探すのも、作風が固まらないのも、それなりに勉強したつもりでも、Webに馴染めずPVが伸びないのも自分だから。
 これが自分のサイト。
 沙羽はテンプレートを作った後はそれをコピペでさくさくとサイトを作っていく、正直作業でつまんない。
 あぁ、でもなんかわかる、こんなにclassはいらない、っていうかこの順番だと優先順位が上位じゃないから先の命令が、あぁ、スペルミス。
 とりあえずバイトねぇ。
 沙羽は沙羽なりに悩んでいたのだ、収入はもちろん欲しい、腫れを抑える包帯は取れたけれど、まだくらくらするような「気がする」からいつも病院に行く街までだって仕事で行けるとは思えなかったようで、それを佐藤ではない、沙羽を担当している支援者にこぼした。
「っていうかまだ電車怖いんですけれど」
「うーん、ねぇ、リモートワークって知っている?」
「あ、はい」
プログラミングには自宅の仕事もあるということは、沙羽も聞いたことがあった。
「それと、これ」
クラウドソーシングのサイトをその支援者は見せてきた。
「あぁはい、やっています」
「こういうとこでね、そうかなんだやっているんだ、まぁ収入面ではアルバイトだけじゃないでしょ?」
「はい」
情のあまり入れない声で淡々と話すこの支援者は言った。
「でも沙羽さんってプログラミング始めたのなんで?」
「あ、はい、えっと、前書いた小説でプログラミングをする人を書いて興味持ったのと、自閉症に多いって聞いて、求人も多いし」
沙羽はたどたどしく答えた、彼はそうか、と言うと別の利用者に呼ばれて行った。

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