君は希望を作っている #25

 さて、そうすると、箒を持ったメイドの『kibou』は作れない。
 こないだネットで、誰か大学の受験生が塾に通えなくて悲しんでいたっけ。
 じゃあそれだ、簡単な三択ならなんとかなるから、選択肢を選ぶだけの、入試に向かって勉強できる希望を作ろう。
 まずは、テストの問題を用意しよう。
 大学の試験問題なんかどこでもらえるのかわからないけれど、っていうかそれは私が正解をわからないから、小学生の問題どこかにないかな。
 あった。
 とりあえずこれでいいや、後で問題を変えられるし。
 じゃあそれをダウンロードして、画像にして、選択肢や答えも画像にしよう、色々楽だ。
 出来れば正解不正解を記憶していて点数計算したりしたいなぁ、DBが必要かも。
 沙羽は過集中なのか、誰が話しかけても気づかないのではないかというほどパソコンのエディタにかじりついていた。
 黒崎は、そんな沙羽をつまらなそうに不貞腐れて見つめていた……わけでもなかった。
 黒崎は黒崎で、歩く練習で近くの公園まで支援者に付き合ってもらうとかしてて、人に構っている場合でもなかったのだ。
「はやくミニスカートをはいてみんなに見せたい」
きっとお似合いになりますよ、支援者は優しく言った。
「そしたら鈴木さんだって……」
黒崎には頑張る理由があった。
 だから支えてもらうのがかっこ悪くても、少しずつ歩くのだった。
 でもま、初心者が作った物が収益化していきなりがっぽがっぽは難しい、あんまり希望のない話だけど。
 沙羽はとりあえずの三択問題は作り上げた、作ったのは「猫のフリー写真」があって、「鳴き声は?」という問いからの「ワン」「ニャー」「メェー」の三択。
 でも、動いている。
 沙羽は職業訓練校で習ったことを懸命に思い出してDBも作る、もうちょっと沢山問題を用意して点数を配分すればテストっぽくなる。
「がんばるねぇ」
海老原がきぼうで沙羽に声を掛けた、沙羽は今日プログラミングを休んで簡単なクイズ問題をノートに書いていた。
「あ、海老原くん、なんか問題ある」
「僕ね、気になる人が二人いるんだ」
沙羽はなぞなぞでも出してもらおうと思って気軽に聞いたらしいのに、その海老原の淡々と言った言葉に驚いたようだ、
「え、それ、問題じゃない」
「だよね、二人とも頑張り屋で、一人はどっちかっていったら物語のヒロインタイプかもしれない、もう一人は、まぁ、ライバル役かなぁ。でも最近、そのヒロインに意地悪ばかりしているライバル役の、寂しさ、必死さが、可愛くて、もしかしたら、彼女も変わるんじゃないかって……」
海老原は照れながら話す、沙羽は誰と誰のことかわからないようで屈託なく言った。
「いいんじゃないの、性格悪くてもいいって、黒崎さんも言っていた」
海老原は少し怒って、はっきり言った
「彼女は、傷つくのが怖くて攻撃的になっているか、今まで優しくしてもらったことが少ないからどう優しくしていいかわからないだけだよ、本当はきっと優しい人だと思う」
海老原に怒られて沙羽はしまったという顔をする。
「いや、まぁ……でも好きな人いるみたいだし、僕なんか」
海老原は俯いてしまった、沙羽は笑った。
「海老原くん、優しいから大丈夫だよ、応援するよ」
沙羽の笑顔に、海老原はちょっとだけ苦しそうな顔をしたが、やがて、そうだといいな、と残して去って行った。

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