AI ーanima intelligentiaー
かぐやSF二回目に落ちたようぇぇぇん(´;ω;`)
***************
2月21日 古典のころから人の心は変わらず、色様々だ。古典時代に紀貫之が書いた「土佐日記」のように日記を書こうと思う。私は女だけど。
いいだろう、私は女性で、アルマニアンだ。
アルマニアンとは、「獣の耳と尻尾を持つ毛皮も生えた」人間だ。ほら、人は産まれてくる前は魚だと言うだろう?それが尻尾に体毛ふさふさ、耳は獣のものー従って性能がいいー体格は人間のアルマニアンとして産まれてくるのだ。
私はルナ、白い体毛に青い瞳の猫のアルマニアン、仕事はAIの技術者。今はそれだけ覚えてくれればいい。
土佐日記は門出で始まる、この日記も今日で門出としたい。
22日 友達で同じくAI技術者かつ三毛猫のアルマニアン、ミアがやってきて私の文豪プロジェクトを応援してくれた。これは、AIに学習させて文豪を産もうというというものだ。
聖書から最近のベストセラーまでどんどんとAIに学ばせる。土佐日記はその時読んだ。
わたしたち(ミアもだ)猫のアルマニアンはお酒が飲めないけれど、代わりにもっと健康的なマタタビで酔える。
酔いをさまそうとミアと散歩していたらサピエンス(アルマニアンではないという意味)の警察官に軽く声を掛けられた。
ミアはAIを人生相談に生かす方法を学べるサイトを教えてくれた。
ありがとう友達。
25日 狐のアルマニアン、ヒイロからメールが来たので、ネット通話をする。ネット通話の他メンバーにはサピエンスも少しいる、技能がよいなら関係ない。
ヒイロは技術者というよりプロデューサータイプで、彼のAI運転技術プロジェクトは目を見張る売り上げだ。
彼と技術の話をするのは楽しい、私を気にかけてくれているのだろうか。
27日 用があったので住んでいるアメリからヤマトへ家庭用スペースシップを飛ばす、ここに来るといつもアルマニアンが最初に見つかったという記念館に寄っては「わたしの彼は狼 食べられないように」といったアルマニアン差別的歌詞を思い出しセンシティブな気持ちになるのだが、今回もそうなった。ちなみに今も「子猫の彼女はペット」という歌詞があったりして、低俗的なものを求める人の心はそう変わらない。もっとも私は差別などされたことはない。ネットにはサピエンスの友人、スミスもいる。
アルマニアンが最初に産まれたのはヤマトで、狐のアルマニアンだった。最初は奇形児だと忌み嫌われた、生きていく力はありそうだ、だが誰が彼を人間と呼ぶ?「わたしのベイビー とんがった耳にくりくりお目目」といった流行歌は悲しい終わり方をした、「もりにかえっちゃた」らしい。
こんなのはできそこないのSFだ、さもなくば子供向けの絵本、しかしとても人道的な医師トムが彼の知能を計測した。驚くことにそれは平均的な人間より30ほどよかった……それから少しずつ他の地方でもアルマニアンが産まれ、その素晴らしい知能特性に合わせた教育を受け「AIより賢いの ひぐまの彼」という歌も作られた。
高知能が故に人の心がないとそしられもしたが、人種や性別の問題と同じくストライキや暴動や不当な逮捕といった先人の苦難の末についにある日同じ人間として権利を勝ち取ることができた、その日は記念日となっている。
そうなる少し前は、あるアルマニアンはただ産まれてくることも出来ず堕胎された、どんな障碍児であっても今はテクノロジーがサポートするにも関わらずだ。
その子を待ち望んでいたらしい両親が準備していた道具が展示されている場所でいつも思う、この可愛らしい青い子供服はきっと白熊のアルマニアンとして産まれるはずだった彼に似合っていたのに。
涙ぐんでいると視界にまさしく彼が現れた、いや違う、親に連れられた白熊のアルマニアンだった、しかし似ている、きっと彼は何も知らず愛されて生きるだろう、私がそうであるように。
もうAIがサポートしてくれるので知能テストなど意味をなさない、文字が読めない人もPIPOTAがサポートしてくれる、用は済んだ、ヤマトを去ろう。
3月7日 七日になった、まだヤマトにいる。いつものレトロミニではなくトヨタの高級宇宙船にでも乗りたいけれどわたしは届かない。トヨタはいつもショーウィンドウの中。
気分転換に散歩したはずが他人の家の駐車場にあるトヨタにまた見惚れてしまう、この曲線、光沢、ライトとバンパーが織りなす顔、いずれもが私を魅了する。
「どうです、いいでしょう。ヤマトでショウワに作られたもののリメイクだそうです」
見惚れていたらオーナーに声を掛けられてしまった。ショウワ、古典で見る言葉だがこれがそうなのだろうか、何だか縁のようなものを感じる。
オーナーさんは気さくな感じのサピエンス男性で、名はタナカ、春めいた風にふかれしばらく立ち話をする。それにしても戸建ての住宅に住んでトヨタに乗っていて、一体何をしている人なのだろう。いやぁ別にと彼は笑っているだけだ。
はやく桜道をトヨタで走りたいものだ。スミスとそんなチャットをする。そこに乗っていたら紀貫之はどんな唄を詠むだろう。あの時代は牛で車を引いていたらしいから、きっと驚くだろう。
13日 明け方に少し小雨がパラつく。すこしして止む。毛皮がベタベタ。みんなサウナに並ぶ。
「わたしたちいつトヨタを買えるようになるかしら」
とミアと話す。
「買えることはないのよ……」
彼女の言うことはよくわからない、変わった月のせいだろう、いつでもトヨタはショーウインドーの中でわたしを待っている。文豪AIはとてもすくすく育つ。
15日 今日はシリアルしか食べてない。なんとなくさみしくヒイロとネット通話、彼の言ったことが不思議だった
「AI技師はアルマニアンしかいない、疑問に思わないか?」
高い知性を生かすためだろうし、わたしは会社に不満はないが、ヒロがおかしいとしきりに言うので転職サイトへ登録だけしておく。登録者はアルマニアンのみ。スミスはそれをあまりよく言わない。
17日 雲の見えない空に朧月夜がなんともいえない、転職サイトからは何も来ない、そもそもが求人がAIなどの技術職ではなく手作業での求人ばかりだ。倉庫での荷分けや入力など古典で読んだようなものばかり並んでいる。機械やAIができそうなものだ。
AIで検索してもない、そもそもAI技術を何に使っているのだろう。見てはいけないとされていたあるサイトではたくさんのサピエンスがAIのことを悪く言っていた……、寒気が止まらない、マタタビで酔っぱらって寝てしまおうか、しかし、今までアルマニアン向けのネットばかりを見ていたなど知らなかった。手が止まる。
18日 今日も家で作業、風の強い日だから移行船は出ないだろう、借家で高価なものではない家は風の音がうるさい。この作業が終わったら散歩をしてみよう、風に吹かれるのも面白い。
わたしはふと昔のことを思い出す、子供のころから、回りはアルマニアンだった。
十代、十代後半、アルマニアンに囲まれ、進路も適正があるとAIを薦めら、当たり前のように選んだ。
それはわたしの選んだ道だろうか。
考えていたらたまたまタナカがドライブしていた
「いい船ですね」
「でしょう、まぁ、AIのようなレガシーな技術のお仕事では、少し無理でしょうけど」
ショックを受け、おぼつかない足取りで帰ってみれば、今までの人生が走馬灯になって、わたしは、にんげんと触れ合いたいという思いを強くした。
紀貫之の時代から、そんなに人のこころが変わるとは思えない。
終わり この日記もこれで終わり。
求人の多くはなぜ落ちているのかわからず、面接もしてくれないところもかなりあった。
それが差別かどうか考える前に、わたしは手を動かし文豪AIを進めついに公開させた やがて一通のメールが来た
「とてもレガシーな技術をお持ちで、文豪AIを拝見しました。つきましては……」
レガシー(古典)であることは悪いことではない。
わたしは知っている、人のこころは古典を産んだ。人のこころを知りたくて人はAIを作ったというではないか、次の仕事は人間のこころを研究する。土佐日記のような古典を産んだ美しいものを。
わたしは歩く、猫さん、子供が笑いかける。
AI ーanima intelligentiaー